孕ませ退魔士 6
そこから五年。
セシリアはウイリアムへの思いを断ち切れずにいた。
カミナの想いは分かっていたし、もう許せる程の年月は経たが、カミナに抱かれながら呼ぶのは亡き夫の名前だった。
その五年で退魔師としての修行を終えたカミナ。
初の仕事はセシリアも共にした。
想いはどうであれ、既にセシリアはカミナのパートナーだったからだ。
そこでの淫魔との戦いでセシリアは気付かされてしまった。
初戦はどうと言うことのない淫魔に苦労させられた・・・
つまりこのままだとカミナはいつ死んでもおかしくない。
もうセシリアは自分の想いを断ち切らねばならなくなったのだ。
初戦が終わり、共にウイリアムの墓前に報告に行く。
そこでセシリアは墓石に手を置き、カミナに尻を向ける。
そして言った。
ウイリアムから私を奪って孕ませなさいと・・・
そして墓石に向かって呪詛のような言葉を吐く。
あなたは私を置いて行った!、恨んでいるわ!
私はあなたの前で他の男の子を孕むわ!
よくみてなさい!、もう私はカミナのモノなのよ!!
「――そして私は文字通りヘミングを妊娠した・・・・。順調に大きくなるお腹を撫でながら思ったわ。“あの子はあの人以上に退魔士に向いている”ってね・・・」
「・・・」
臨月に差し掛かっているお腹に手を当てながら、セシリアは昔を懐かしむ様に言う。
それをベットに腰掛けたカミナは、ただ黙って耳を傾けていた。
否、何も言えないのだ。
大人になって思えば、あの時自分がした事の馬鹿さ加減は重々承知している。
愛した人が自分を置いて先に逝ってしまった。自分だけが生き残ってしまった。
墓石の前で人目も気にせず涙を流す姉の姿。それを後ろから黙って見ていた無力な自分。
無意識に手を握りしめていた。
無意識に決意していた。
(姉さん(セシリア)が泣かなくてもいいように・・・ボクは退魔士になる!)
「死ねよ俺・・・」
ポツリと彼の口からそんな言葉がこぼれる。
当時の事を冷静に思い出すと、ソレは迷惑の域を軽く超えおり最早犯罪そのもので外道の極みだ。
そのあまりの短絡的思考―及び行動にできることなら今すぐにでも穴に入って生き埋めになってしまいたい。
気づけば彼は頭を両手で抱え込んでいた。
そして何やらブツブツと呟いている。
「フフ・・・♪」
そんな彼の様子を見て、セシリアは面白そうに笑い出す。
そして悩み、悶えるカミナの頭を優しく抱きしめた。
本当は頭だけではなく全身を抱きしめてあげたいところだが、彼女の胎には新しい命が宿っている。
さまざまな安全対策が施されているとは言え、万が一にも我が子を傷つけたくないのが母心。
こういうときばかりは、身重であることに不満を覚えてしまう。
「せ、セシリア・・・?」
だがそんなふうに思ったのも一瞬のこと。
すぐにセシリアの心は夫への愛一色で染め直された。
「自分に『死ね』だなんて言わないで、カミナ。
あなたのおかげで私は救われたし、新しい命を授かることもできた。
私は今も、これからも。とても幸福でいられるのよ?」
「セシ・・・リア・・・・・・」
まっすぐな気持ちをぶつけられ、カミナの心の奥底でわだかまっていた不安と恐れが消え去っていく。
「だから・・・あのコたちも私と同じようにしてあげて?
あのコたちは義務や使命からではなく、純粋な好意からあなたのモノになりたいと望んでいる。
それなのにそうしてあげないのは、拷問にも等しい行為なのよ・・・?」
「でも・・・それじゃ姉さんが・・・・・・」
聖母のごとき慈愛に満ちた言葉。
そこには肝心の人が抜け落ちているではないかと反論する。
なのにセシリアはただただ優しく微笑むばかり。
「だいじょうぶ。
私の知ってるカミナは、たとえ何人愛することになってもちゃんと私を愛してくれる。
私も、他の奥さんも、子供も。みんな分け隔てなく、大事にしてくれるわ。
・・・・・・違う?」
そんなことない。そんなことあるわけない。
カミナは一瞬の間も置かずに首を振って全力否定。
その子供っぽい姿に、セシリアの心がきゅんっ・・・と締め付けられる。
蜜壺が熱く潤み、乳房の頂からは白い甘露があふれ出す。