僕は決して強くはないから 4
二人ともしゅんとしながらも、顔が赤くなっていた。
お屋敷は広くて、僕は明日香に抱かれながら長い廊下を進んでいた。
「凄く広いよね、この家」
「はい、昔は柳瀬家の居城で本丸部分を住居にしています」
彼女は事も無げにそう言うけど、僕は驚いてしまった。
「お城っ?!」
「はい、柳瀬家はこの辺り一帯を治める大名で、私達は家臣の家柄です」
それであんなにも紗枝さんは凄い事ができるんだ・・・
全く僕はこの家が何だったのか分かってなかった。
「奥の離れが若様のお部屋になります・・・私達の母達が奥を取り仕切っております」
そう紫乃から説明されるけど、その奥までが割と距離がある。
「まるで大奥みたいだね」
「はい、離れがある辺りは奥御殿と呼ばれ、大奥みたいな場所ですから、あながち間違いではありません」
ああ、やっぱりそうなんだ・・・
何だかタイムスリップしたような気分だ。
「でも、城下町って無かったよね?」
「若様がバスで来る時に大きな湖がありましたよね?・・・あそこがかつての城下町で今はダムになっています・・・町そのものは二つ向こうの駅辺りに移転して、ここは柳瀬一族と家臣だけが住んでいるのです。」
二つ向こうのって事は、降りた駅の二つ前の海岸添いの町がそうなんだろう。
ここが何か田舎の限界集落に見えたのはダムで町が移転したからと言う事みたい。
「さあ、つきましたよ・・・ここが若様のお部屋です」
「お部屋って・・・家一軒?・・・」
僕の目の前には本宅より小さいけど、普通の基準でお屋敷レベルの建物があった。
「当然です・・・若様は、柳瀬家の次期ご当主なのですから」
「むしろ、狭いと言うのであれば、直ぐに増築しろとお屋形さまから申し受けております」
「・・・いえ、十分です」
これで狭かったら感覚が狂っている。
でも僕一人ならまだしも、紫乃と明日香、それに2人の母親が一緒ならばそうでもないのか。
「えーと、明日香、まだ下ろしてくれない…」
「中に入るまではこれで」
「では、参りましょうか」
明日香に抱えられたまま僕の『部屋』だというお屋敷の中へ。
「お母さん、戻ってきたよ」
「若様もご一緒であります」
玄関的な所で割烹着姿の女の人が三つ指ついて御辞儀をしていた。
「紫乃の母、斎藤美雪です」
「明日香の母、緒方慶子です・・・これより若様のお世話を勤めさせて頂きますのでお見知りおきを・・・」
顔を上げたらかなりの美女。
大人の色気みたいのがあって、ドキドキしてしまった。
「あ、う・・・よろしく・・・」
しどろもどろで僕は答える。
このお屋敷にいた人はお手伝いさんでも綺麗な人ばかりだった。
そしておばさんこと紗枝さんは物凄い美女だった。
それだけでびっくりだけど、紫乃と明日香は抜群の美少女だわ、そのお母さん達も美女だわで、何か凄く僕の運命が変わったような気がした。
「まずは旅の疲れをお風呂で癒して下さいませ・・・紫乃、明日香、若様のお世話をなさい」
「「かしこまりました!」」
えっ?、なにっ?!、それなんてエロゲ・・・
とか言う間もなく、僕は明日香に抱かれたまま、屋敷の中へ連れていかれる。
「あ、明日香、もうお屋敷の中なんだけど…」
「若様は何もなさらなくても、私どもが動きますゆえ」
「い、いやそういうことでは…」
彼女たちにとっては母親も目上の人なのだろう。
その人たちからの命令ならば絶対。
僕はしばらく反論すべきではない…と感じた。
「こちらが浴室でございます」
「うん…なんか、銭湯みたいな感じがするね」
「若様、服を脱がさせていただきますね」
「あ、あの、それくらい一人で…」