神アプリ 93
7階建てのそのマンションのセキュリティは万全だった。エントランスに入るための自動ドアがオートロックなので、住人がエントランスを出入りする際に注意を払っていれば、部外者がこっそりと侵入することはない。そのセキュリティ面をかってこのマンションを選んだというのに、彼女はその男から逃れられなかった。
その男がピッキングのプロだった、というわけではない。彼は堂々と608号室のインターホンを鳴らし、608号室の住人にオートロックを解錠させている。ただ問題なのは、608号室の住人である彼女が快く受け入れていないということだ。
もっと言えば、受け入れる理由もなかった。それどころか、来て欲しくないとさえ思っている。しかし、彼女は彼を受け入れてしまう。彼女自身もその理由が分からないのだった。
ただし、1つだけ分かっていることがある。それは、その男には抗えない、ということだ。男の言うことに全神経が飛び付いて、実行しなければならないという思いが魂から湧いてくるのだった。その内容に対して彼女がどのように感じようとも、身体は聞き入れてくれず、思考だけが巡りめぐって、諦念に辿り着くのだった。
今も、結局、仁王立ちの男の背後で身を屈め臀部に顔を埋めている。濡れた唇の隙間から小さな舌を一杯に伸ばして、菊門の表面を解しているのだ。
これで3回目だが、当然慣れるはずもない。眉を顰めている表情には明らかに嫌悪が表れていた。恋人に要求されても声を大にして拒否するに違いないのだから、好きでもない男の一番汚いであろう器官を舐めるなど耐え難い屈辱に違いなかった。
それでも彼女は行っている。嫌々行っていることに変わりはないのだが、しなかった場合のペナルティを聞いているわけでもなく、やらなければならないという諦念の基実行している。
着ぐるみも自分で脱いだ。一糸纏わぬ裸体に一際冴える赤い首輪は男に施された物だが、填めて欲しいと言わんばかりに差し出したのは彼女だ。
(いつまで……こんなこと……)
眉間の皺を深くしているのに、会陰の方から尾てい骨の方までねっとりと舌を滑らせている行為はとても丁寧な舌使いに見え、何とも不思議な光景だった。彼女の両腕が男の腰を抱き締めるように回っているので、行為だけで見れば情熱的でさえある。
実際は腰を抱いているわけではなかった。彼女の右手の細い指は雄々しく反り返った逸物に巻き付き、ベタベタに濡れた表面をスローに往復している。左手の方はヌメヌメと光る肉袋を小さな掌で包んでおり、やわやわとマッサージを施していた。
「んんぅっ」
男が右手を前に振ると、赤い首輪に繋がっている鎖が張り詰め、彼女は艶かしい苦悶を喉から絞り出していた。次の命令が下ったのだ。
臀部の溝に舌を滑らせて菊門を探り当てた彼女は、しっかりと舐め解しておいたそこへ、尖らせた舌を突き立てた。
「ふぁはあああ……」
眉間の縦皺が深くなっている。この屈辱的な行為を以前の2回は下着を着用したまま行い、頭や身体を揺らすたびに胸の先から淡い快感が走って現状を認める理性をボヤかしてくれたのだが、今日は全裸なので嫌悪感が一層大きく感じられるのだった。しかしながら眉尻は垂れており、表情は悩ましげなものに見える。
(こんなにビクビクしてる……きっと、私を辱しめる為に溜め込んでるだ……気持ち悪い……)
恋人のモノに比べ遥かに長大な肉幹。彼女はソレが起こす不気味な脈動を手で感じ、五指を絡めてさすっている。顔に上気が広がっていた。
(ここもこんなに大きいし、オナニーとかも我慢してるはず……気持ち悪い妄想ばっかりして、私をその捌け口に──)
肉茎への愛撫もさることながら、陰嚢を揉む手付きも纏わり付くようにねちっこい。露出している、スレンダーな肢体に見られる83センチのバストの先はコチコチに尖っていた。
「んはぁ、ハア……んぅぅっ……」
一瞬だけ顔を離し、酸素をできるだけ吸って、また舌を突き立てる。深々と埋めた舌を蠢かしている間、息が上手くできないのだ。逆に言えば、それほど熱心に直腸内を掻き回しているということになる。
彼女の腰は震えていた。息苦しいせいでもあるが、他にも要因がある。ジクジクと疼く秘部からしとどに垂れている涎が、それを物語っている。
男が後ろ手に彼女の額を押し、振り返った。
(やだ……)
堂々と裏側を見せ付けている剛直から彼女は視線を逸らした。そして一瞬の後、再びソレに焦点をあてていた。
(あああ……)
彼女は背筋を起こし、濡れた唇を開きながら引き寄せられるように顔を近付けていく。
(お願いだから、今日も口で満足して……)
今のところ男はこれまでの通り、30分かけて逸物や陰嚢を隅々まで舐めさせた後、10分のアナル舐め玉揉み手コキをさせた。今まで通りなら、これからさせられる20分のオーラルセックスで口内射精し、残液まできっちり啜らせれば帰るはずだ。
(こんなの、もし中に入れられちゃったら……私……──)
「んふうううううっ……」
桃色の唇を被せた彼女は、途端に甘美な電撃を浴び、想像してしまった未来に霧をかける。
そして、金色の豪奢にうねるロングの髪がゆっくりと躍り始める。
☆ ☆ ☆