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神アプリ
官能リレー小説 - ハーレム

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神アプリ 80

「ただいまー」

 彼が玄関の引き戸を開けると、奥から母親が面食らったような顔をして出てきた。

「翔真!? お帰り。どうやって帰ってきたの?」
「タクシー」
「もう。連絡をくれたら迎えに行ったのに」
「うん」
「うん、じゃなの。無駄遣いばっかりしてるんじゃない?」
「そんなことないって」

 うるせー、と態度で伝えながら彼は中に上がった。

「俺の部屋どうなってんの?」
「まんま。泊まっていくんでしょう? 布団敷いてあるから」
「うん……で、兄さんは?」
「まだ」
「ふうん……じゃあ部屋にいるわ」

 と、彼は階段に足を掛けた。

 襖を開くと、母親が言っていた通り、あまり様変わりしていない部屋が彼を出迎える。8畳の空間に本棚やテレビが置いてあり、勉強机もそのままだ。ベッドは学生アパートに持っていたのでここにはないが、代わりに、敷き布団の一式が半分折られた状態で置かれている。

 彼は荷物を適当に置くと、敷き布団を枕にして寝そべった。
 下宿する際に地デジ対応のテレビを購入したので、ここにあるテレビは地デジに対応しておらず、何も映らない。本棚にある漫画も、懐かしくはあるが読む気にはならない。要するにやることがなく、取り敢えず……とスマホを手にしている。

 いつもであれば、こうして寝転んでいるだけで美女や美少女が群がり、肉欲を刺激する声や言葉を洩らしながら恭しく服を脱がせていく。そして頭の天辺から足の指の先まで甘い涎を舐め広げつつ淫らな涎でクレバスを濡らし、部屋に淫臭を充満させる。

 しかし今は一人だ。何処からも甘い声は聞こえず、当然、快感を得る行為など何もされていない。

「結婚か……」

 一人ごちた彼は徐に身を起こしていた。性欲処理用のスレイブたちが頭に浮かんでくるのだが、結婚の対象となると首を捻らざるを得ない。
 そもそも結婚というものに魅力を感じなかった。法律上の夫婦より事実上の一夫多妻の方が何十倍も楽しいに決まっている。収入さえ確保出来れば、今すぐにでも孕ませて母体プレイや母乳プレイを堪能できるのだが……。

「しょーまーっ。降りてらっしゃーい」

 母親に呼び声に、彼はのっそりと立ち上がる。

 客間として使われている和室には机が一つあるだけだった。床の間があるその部屋で釣竿の手入れをするのが翔真の父親の休日の潰し方である。
 しかし今日はきちんと客間として機能している。机を囲むように座布団が5つ敷かれ、4つには既に人が座っている。翔真も遅ればせながら空いている1つに足を畳んだ。
 彼の右斜め前に渋い顔をした父親がいる。その隣には母親。父親の前には兄がいて、そして兄の隣に、初見の女性が座っていた。
 漆黒を溶かし込んだような艶やかな黒髪のその女性は、改まった雰囲気におどおどしながらも会釈のような仕草を見せ、翔真も同じように首を傾けた。

「よーし、全員揃ったところで──」

 と兄が背筋を正す。

「彼女は岩本彩月(いわもとさつき)さん。俺、この人と結婚するから」
「岩本彩月です。よろしくお願いします」

 兄の紹介に続き、彩月がペコリと頭を下げた。セミロングの髪が肩からほつれ落ち、緊張で赤らんでいる彼女の横顔を隠していった。

「まあまあ。こちらこそ、よろしくお願いします」

 母親が包容力のある笑顔を見せ、おっとり口調で返している。重苦しい空気に対抗しているかのようだ。
 その、空気を張り詰めさせている張本人の父親は、口をヘの字にしたまま腕組みを解こうとしない。彩月の方も一瞥しただけで、蛇がカエルを睨むように兄を注視していた。

(空気読めよ……)

 翔真は頭を抱えそうになっていた。娘が恋人を紹介するならまだしも、今は息子が紹介している場面であり、父親が気を張ることなどないだろうに。

「な、なんだろ……今5月だし、すごい偶然だな……運命を感じるよ、うん」

 ハハハ、と乾いた笑いを誘う翔真だったが、兄に肘で小突かれた。

「バカ。『五月』でサツキじゃなくて、『彩り』に『月』って書くんだよ」
「何だって……」

 翔真は赤面した。その様子はクスクスと笑い呼び、結果的に場は和んだ。多少、ではあるが。

「ま、まあ……て言うか、何してる人?」
「看護師」
「兄貴に訊いてねー……って、看護師? ナースってこと?」
「そう言ったつもりなんだが」
「建設会社の人間とナースって……どうやって知り合ったんだよ?」
「ほら、去年入院した時に」
「へぇ……看護師ならもっといい男がいただろうに……」
「テメェな」

 正月ぶりの兄弟の絡みを彩月はぱっちりした目を細くして微笑ましく見ていた。健康的な桃色の唇も両端が微かに上がっており、子ども見るていような、母性が見られる微笑だった。

 腕組みをそのままに、口のヘの字を解いた父親が漸く声を発した。

「そうだな」

 何に対する肯定か分からず、は? と兄弟は顔を見合わせる。

「収入はいくらなんだ?」
「おい、親父。やっと口を開いたと思ったら何訊いてんだよ。失礼だろ」
「彩月さんに訊いてるんじゃない。お前に訊いてるんだ、和彦(かずひこ)」

 父親が兄を見ている。兄はその目に睥睨を返しながら居直った。

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