神アプリ 71
「いやらしい目で見てたって?」
人影は2つある。1つは大樹の側にあり、もう1つはその正面に立っていた。
「え……ええ……」
大樹の側にある人影はやや腰が引けており、足が震えている。
「それってどんな目?」
男の声とともに人影の1つが詰め寄ると、もう1つの人影は追い込まれたように大樹に背を付けた。足の震えが全身に広がっている。
「森本先生だっけ? いやらしい目付きっていうのがイマイチピンとこないからさぁ、いやらしい目付きにさせてみてよ」
(あああああ……そんなこと……)
誘えというニュアンスの言葉に森本朝子(もりもとあさこ)は顔を赤らめた。30歳にもなって、目の前にいる青年を一目見た瞬間に青春時代に戻ったかのように乙女心をキュンキュンさせており、彼に色仕掛けすることには何の抵抗もない。
しかし今は、青年の背後に見える更衣室の向こうで教え子がテニスの練習に励んでいるのだ。そのような状況で若い男を誘惑することに後ろめたさを感じ、何より教師という立場故に非道徳的だという思いが強くある。
「早く」
(んぅぅぅっ……)
上から物を言う青年に朝子の身体はゾクゾクと反応した。視界に入った時は魂が惹き付けるようなトキメキを抱き、声を掛けた時は身体が火照り、今は逆巻く肉欲に油が注がれた。
頭がボーとさせながら、ポロシャツのボタンをそろりそろり外していく。黄緑色の中から雪のように白い肌や谷間の一部が徐に露出されていく。
「んっ……はあああ……」
83センチの胸をグイと寄せると、感覚を研ぎ澄ました乳頭がブラジャーの裏地に擦れ、全身に甘い快感が散る。
(やだ……あああ……)
谷間を強調させつつ乳房を擦り合わせ、乳頭からの刺激を貪っていた。ピリリと走る甘美な電流に身体がビクビクと跳ね、スコートはヒラヒラと躍る。朝子が穿いているのはフラップ付きのショートパンツ(ショートパンツにスリット入りのミニスカートを縫い付けたようなスコート)のなので、ショートパンツのような代物がチラチラと見える程度のことだが、そこから伸びる生足がプルプルと震えてる様子は獣欲を煽るに足りる艶かしい光景である。
「成る程ねぇ……」
わざとらしくこぼした翔真はスマホを出し、背面を朝子に向ける。朝子は彼が何をしようとしているのか直ぐに察しがついたが、彼の行為を止めようとしなかった。
朝子が予想した通り、彼のスマホからシャッター音と分かる音が響いた。
「これがいやらしい目付き……と言うか、顔か」
翔真は感心した様子で言い、クルリとスマホを反転させる。
スマホに写っているのは朝子の顔。柳眉をハの字に曲げ、切れ長の目を濡らし、ぽってりした唇を半開きにして、頬を上気させている朝子の顔が画面一杯に表示されている。
「ああ……なんて顔してるの……」
誰が見ても、男を誘惑するどころかすっかり参りきって発情しているオンナの顔だ。目の前の青年をいやらしい目付きにさせるつもりが、自分の方が求め媚びている事実を知らしめる1枚だと認めざるを得ない。
「で、森本先生はどうしてこんな顔してんの?」
「やあ……苛めないでぇ……」
朝子は背筋ゾクゾクと震えわせ、熟れた身体をくねらせる。うなじに触れる毛先にさえ過敏に反応してしまうほど全身の感覚が敏感になっていた。
「言えよ」
「ああんっ……向こうに、生徒がいるのに……」
テニスボールを叩くラケットの音が複数、更衣室の向こうから反響してくる。そんな状況で朝子は肉壷がトロトロになるほど牝の体液を吐き出し、ショーツが張り付くほど染みを広げている。それほどの愛欲は消える気配がなく、朝子の子宮は疼きっぱなしだった。
それ以前に、
「ハメて欲しくて……あああ、あなたのオチンチンでオマンコズポズポして欲しいの……」
そもそも朝子は彼を見た瞬間から彼に対する反抗心を捨てている。
「ねぇねぇ、梨沙はユニフォームみたいなの着ないの?」
休憩に入ったのを見計らい梨沙が彩菜たちの方に近付くと、先に彩菜に声を掛けられた。
「あ、うん……先輩たちが終わってから、時間が余ってたら2年生も実践形式の練習をするらしくて……一応ウェアは持ってきてるんだけど……」
そう言うと、梨沙は空を仰いだ。太陽が稜線にかかるまで後3時間くらいだろうか。このペースでは梨沙がテニスウェアに着替える機会はなさそうだ。
「翔真様に見せるために?」
「あん、違うもん……どのみち着れそうにないし、時間的に」
茶化す千歳に梨沙は口を尖らせる。図星なのだが。
「今着れなくても夜着たらいいじゃん。絶対翔真様気に入るって」
「だよね。あ〜あ……私も部活やってたら翔真様にコスプレ楽しんでもらえたのになぁ……」
「コスプレって言うなぁっ」
むっと頬を膨らませる梨沙に彩菜も千歳も「ごめん」などと言いながら苦笑する。