神アプリ 41
(いつまでもこうしててもなあ……)
彼は足元を眺め、白い煙を吐く。
綾子が濡れ光る勃起に頬擦りをして上の口への挿入を強請っていた。景子は足裏を舐め、麻友は音を立てて小指をしゃぶっている。
彼は煙草を口に運び、今度はベッドに目をやった。
起床時の戯れでシーツが愛液まみれになっているものの、そのベッドは今までの物と変わらないシングルベッドだ。
実物化機能の削除機能で消せる物は実物化機能で出現させた物のみ。今まで使ってきたシングルベッドは削除機能で消すことができないので、キングサイズのベッドを実物化させようものなら部屋の中がギュウギュウになってしまうのだ。
テレビも然り。炬燵も然り。冷蔵庫も然り。粗大ゴミとして処分するにも金がかかる。やはり、結局金が必要なのだった。
「んふぅ……あんぅ、あんぅ……」
綾子がお強請りをやめ、肉竿の根元を唇で挟んだ。そのままジュルジュルと音を立てて唇を上下に滑らせ、ハーモニカを吹く。それを屹立の両サイドは当然のこと、顔を動かして裏側や表側にも施していく。
両足は景子や麻友が紡いだ唾液にまみれている。しかし彼女らはそこに口を寄せることをやめず、また指を一本一本舐め上げていったり、足の裏に唇や舌を擦り付けたりして、嬉しそうに尻を振っている。
(……そろそろ面接結果が届いてもいい頃だよな?)
いかにして会社に潜入するかを考えていた翔真は、自分で稼ぐという選択肢がなくなっていたためか、今頃になって、ふと、自分の就活事情のことを思い出した。
面接を受けたのは1週間以上も前のこと。『縁がなかった』というような内容の通達があってもおかしくない。仮に通過していたとしてもスマホを紛失している間に連絡があった可能性が高く、紛失している間は使用不可状態だったので、「この電話番号は現在──」というような機械音声が流れただろう。
(くそ……堂々と出入りできるチャンスだったのに……)
荒々しく煙草を揉み消した翔真は、その手を綾子の頭に乗せた。両足は浮かせていく。
頭を撫でられた犬のように目を細めた綾子は、ツヤツヤと光っている唇をパックリ開いて剛直に被せていった。景子と麻友は彼の足を捧げ持ち、舐めたりしゃぶったりを続けながら乳房にも擦り付ける。
(そうだ……美幸がいるな……)
美幸は社会人だ。まずは美幸が勤めるケータイショップの店員を囲い、それから各支社、最後に本社と繋いで──
(──ダメだ。規模がでかすぎてビジョンが見えない)
翔真は宙に視線をさ迷わせた。視界の下の方に、上下に揺れる綾子の頭が入り込んでいる。陰茎には生温かな口内粘膜に包まれている感触があり、その下にはさするように往復している感触もある。それらの感触はスローに肉幹を刺激し、じっくりと快感を紡ぎだしている。
片足の裏には、柔らかくスベスベしたものが擦り付けられている。その感触の中にはコリコリした小さな突起がある。もう一方の足の裏にはレロンレロンと舌が這い回っている。
(取り敢えず美幸を使って、いけるところまでいってみるか……)
快感と愉悦に、綾子の口内で逸物が跳ねる。
「んぅぅん……んふ、ん、ん、んふう……」
綾子は甘い声を喉から上げ、腰を捩りながら小休止すると、鼻息を荒らげて頭を揺らした。頬の紅潮がさらに広がり、瞳は惚れ惚れと蕩けている。
綾子の口から鳴るジュブジュブという音をはじめ、女のすすり泣く声や水音といった淫靡な音が絡まり合い、室内に広がる。
その甘く爛れた空間に、場を冷やすドアチャイムの音が響いた。
「ん?」
翔真は煙草に伸ばした手を止めた。女子大生の3人は翔真の顔色を窺いつつも、各々がやるべきことを続けている。
またドアチャイムが鳴り、その後、声が聞こえた。
「すみません。警察ですー」
(警察?)
翔真は緊張を走らせた。しかし性欲処理スレイブの3人は、翔真がやめろというまで各々の行為をやめない。
「先日の、駅ビルの近くであった事件に関してお話を伺いたいのですがー。五十嵐さーんっ」
ノックまで響いてきた。
(お隣さん、俺のこと喋ったな……?)
肩を落とした彼は奉仕中の3人に風呂場にいるよう伝えると、適当に服を着て外に出て、ドアを閉めた。
302号室の前に白髪混じりの中年のオッサンと、キリッとした顔の青年が立っている。2人ともスーツの上からトレンチコートを纏っていた。
「どうも。五十嵐翔真さんですね?」
中年の方が内ポケットから手帳を出した。
その手帳の一端がぺラリと垂れ、縦に開かれた。