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神アプリ
官能リレー小説 - ハーレム

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神アプリ 328

 次の日は朝からだった。1限の頭に1人呼ばれ、その生徒は2限の終わりまで戻って来なかった。その次の生徒は3限の始めに呼ばれ、4限の終わる間際まで、その次は5限の始めから6限の終わりまで。1人あたり約2時間かかるらしい。
 1人あたりという表現は正しくないかもしれない。生活指導を受けた生徒の話によれば、3年生の各クラスから1人ずつ呼ばれるとのことだったので、4人で約2時間ということになる。
 しかし、それ以外のことは不透明なままだった。つまり、一番知りたい生活指導の詳細な内容に関しては、誰ひとり教えてくれなかった。
 逆に分かったこともある。それは、いずれ順番が回ってくるということ。そしてその順番は、名簿順だということ。
 けれども、1人飛ばされたクラスがあったという。何故飛ばされたのか分からないが、少なくとも、必ず順番が回ってくるというわけではないらしい。それが分かってからは、まだ生活指導を受けていない生徒は生活指導を熱望するようになり、生活指導で呼び出された生徒は声を上げて喜ぶようになっていた。中には感激のあまり涙する者まで出る事態だった。



 それから、生活指導7日目にあたる日の、3限の始め。遂に、結衣の順番が回ってきたのだった。

 名前を呼ばれた時、それはもう飛び上がりたいほど嬉しかった。実際、思わず声をあげてしまった。
 教室を出ると、ほぼ同時に、他のクラスから1人ずつ廊下に出てきた。各クラスから1人ずつ、というのは間違いないようだ。
 他のクラスから出てきた生徒がどんな人なのか、4人が4人ともそれぞれを見回している。その中で一番取っ付きやすいオーラでも出ていたのか、結衣のところに隣のクラスの生徒が近寄ってきた。

「生活指導……ですよね? ね?」

 その生徒は同志を見つけて安堵したかのように訊く。実際結衣も名前を呼ばれてからは不思議な不安というか、緊張感のようなものを抱いていたので、彼女の問いかけは温かく感じられた。
 それを皮切りにあとの2人も近寄って来て、肩の力が抜けたように自然な笑みを溢している。

「ああ良かったぁ。1人だったら緊張しすぎてまともに話せる自信がなかったけど、他にも人がいるなら若干マシになるハズっ」

 初めに結衣に話しかけてきたA組の生徒はそう言って、よしっ、と気合いを入れ直している。それは、もう1つの不安を生み出す切っ掛けにもなった。
 話せなくなるほど緊張する、それはおそらく生活指導に対してではなく、彼と対面することに対して、だろう。つまり彼女は、いや、彼女も、彼を特別な存在として見ているということ。
 先ほどまでとは違った緊張感が広がっていく。A組の女の子はノー天気なのかマイペースに安心感を口にしているけれど、他の3人はぎこちない接し方になってしまっている。

「まあ、とりあえず行こ? 五十嵐先生が待ってるしさ」
「あ、そうだね」

 D組の女の子がA組の女の子を宥め、こうしていよいよ、理事長室へ向かうこととなった。
 歩を進めている間、どんどんと口数が減っていった。理事長室へ近付くにつれて緊張感が膨らんでいる。彼と対面することに対して、そして、自分という存在の印象を残せるかどうかということに対して。
 理事長室に着く頃には全くの無言で、それぞれが緊張感に呑まれていた。張り詰めた空気感の中で、

「い、いきますね……」

 と言った1人が、震える握り拳で、コンコン、とドアを叩いた。

「どうぞ」

 中から返ってきたのは着任式の時に聞いた声、教育実習生、五十嵐翔真のもの。緊張感が極限まで高まる中、

「し、失礼しますっ」

 彼女たちは、そのドアを開けたのだった。

 横長のソファが入り口に背もたれを向けるように置かれていた。その向かい側に一人掛けのソファが置かれていて、奥に執務机という配置。彼は一人掛けのソファに座っていて、入室してきた結衣らを眺め見ていた。

「まずはそこに、横1列に並んでくれるかな」

 彼は前のソファを差して言う。それに対して上擦った声で返事をした4人は横長のソファの前に回り込み、整列する。

「アンケートの内容、覚えてる?」 

 カッコいいと持て囃されるような二枚目でもなく、かといって関わりあいたくないようなブサメンでもない。特徴を挙げろといわれると、特徴がないことがそれに値するような、線が細い容姿。 
 そんな五十嵐翔真を前にして、4人は心臓が飛び出しそうなほど胸を高鳴らせている。鼓動の一つ一つが全身に響いているような気さえするほどに。 

「実は、生活指導とあのアンケートはあまり関係ないんだ」 

 4人の強張った返事の後、彼はそう言って、ソファに浅く掛け直す。 

「してしまったことは仕方がないし、それに対してどうこう言うつもりはない。大事なのはこれから。あのアンケートでいうと、もしあなたが僕(五十嵐翔真)からご褒美をもらえるなら、今より色んなことを頑張るようになると思いますか?≠フところだね。あとの質問は、まあ、みんなのことを知るためのものだよ」 

 早い鼓動に追い付けず脳への酸素が少なくなっているのか、頭がクラクラしている。彼を目の当たりにしてから相変わらず胸はキュンキュンしていて、時が止まっているような錯覚も治らない。 

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