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神アプリ
官能リレー小説 - ハーレム

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神アプリ 327

 昨日の出来事が全ての始まり。着任式の段階では経験のない恋情を抱くだけでとどまったかもしれないのに、放課後の淫行を目の当たりにしてしまったが故に、奥底で眠っていた愛欲までもが一気に燃え盛ってしまったのだろう。 
 けれども、彼の行為を責める気にはなれない。あの時恵梨香は確かに悦んでいたし、道徳的にはどうかと思うが、望んでいたことをしてあげただけのこと。その場に居合わせたからこそ、禁断で幻想なはずの想いが現実味を帯びた。自分にもチャンスがあるかもしれない────その希望が、淫らな願望とともに湧いてくるのだ。 

 生活指導のため呼びされた彼女は、遂に3限で戻ってくることはなかった。休み時間の間、教室には妙な緊張感が漂っていて、ヒソヒソと談笑こそすれど、意識はドアに向かっていただろう。

 しかし、休み時間の間にも彼女は戻って来ない。どのようなことを訊かれるのか、何か特別なペナルティがあるのか、アンケートのことはどこまで突っ込まれるのか……誰もが彼女を質問攻めにしようと目論んでいたであろう。その期待を裏切る形にはなったけれど、長時間に及ぶということが裏切られた以上の期待をもたらしていた。もちろん指導内容は不透明なままだが、長時間彼と同じ空間にいられるというだけで羨む理由として十分だったから。

 結局彼女が戻って来たのは昼休みが始まる寸前。約2時間こってりと絞られたであろうはずなのに、頬を紅潮させたその面持ちは夢現といった具合だ。席に着いてもポーっとしていて……まるで昨日の朝の桜子のようだった。
 昼休みが始まるや否や、当然のように皆に囲まれ、特に仲のいい友人たちに質問攻めにされている。結衣はそれほど親しくしていなかったので、遠巻きの一人として彼女の返答に耳を傾けていた。

「生活指導ってどんなだった!?」
「んー……どうって言われると……ふふっ、思ってたのとは全然違ってた」

 ド直球の問いに対して、彼女はどこかしら嬉しそうにそう答えた。

「どどど、どう違ったの!?」

 ズイ、と身を乗り出す聴衆。惚けた様子の彼女のその理由を聞きたくて仕様がない。

「どうって……どういうの想像してる?」
「そりゃあテレビでよくあるような、校則違反とか非道徳的な行いに対してこんこんと説教されるようなやつ、かな」
「それだったら、全っ然違う」

 彼女は薄く笑む。その瞳が蕩けているように見える。

「もったいぶらないで教えてよっ」
「無理だって。恥ずかしいもん」

 そう言って頬に朱を差した彼女の様子からすると、やはりアンケートの内容に対してより詳細なことを訊かれるのだろう。周囲にいる全員が同じように頬を赤らめ押し黙ってしまった。結衣自身も顔が熱くなるのを感じていて、顔が赤くなっているという自覚が持てる。

 しかし恵梨香はどうだろう。アンケートの内容どころか、公衆の面前でそれよりも恥ずかしいと思える行為に及んでいた。アンケートの内容を深く訊かれることも恥ずかしいことであるだろうけれど、押し黙るに至るほどだろうか。

 そう思って辺りを見回した結衣は、そこで始めて恵梨香と桜子の姿がないことに気付く。



 昼休みも終わろうかという頃、恵梨香と桜子が戻ってきた。2人とも上気した面持ちで、軽く運動でもしてきたかのようだった。
 仲間外れにされているような感覚が宿り、結衣は、何をしていたのか聞こうと席を立った。しかしタイミング悪くチャイムがなってしまい、運悪く教師もやってきて、諦める他なかった。

「五十嵐先生が、生活指導のため理事長室に来てください、とのことです」

 それは起立、礼という始業の儀式を終え、1人の生徒を呼んだ教師が、その後に続けた言葉。呼ばれた生徒を始め、大半の生徒が目を点にしている。

「どうかした?」
「あ、いえ」

 彼女はそう言ってから、徐々に状況を呑み込んだのか、パァァっと表情を明るくさせて教室を出ていく。残っている生徒たちもざわめき始めていた。

「生活指導って、内容に関係なく全員にやるんじゃない?」
「あーなるほどねっ。私も五十嵐先生に叱られちゃうのかぁ」
「何で嬉しそうなの……?」

 興奮を抑えたそんな会話がそこかしこから漏れ聞こえる。このままでは埒があかないと、教師は手を叩いて収拾をはかった。

「ハイハイっ、授業を始めますよっ。原さん、彼女の分のノートをとっといてあげて」
「はーい」

 こうして無理くり授業が始まったのだが、授業に集中している生徒は何人いるだろう。自分にもチャンスがあるかもしれないと思い始めると、頭の中は知らず知らずのうちに彼のことで一杯になってしまう。
 そう、生活指導という、本来ならされたくないはずのことを望んでいる異常な状態だということに、誰ひとり気付いていない。

 そして、生活指導のため出ていった彼女は、6限が終わる間近まで戻って来なかった。



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