神アプリ 221
そして今、その任務を遂行している真っ最中。今にも腰砕けになりそうなのを手すりを握って踏ん張りながら、尻を撫でられる快感に耐えているところ。
もちろん、声を上げるようなことはしない。痴漢という憎むべき性犯罪行為は、彼からされるとなると180度捉え方が変わる。彼が愉しむためのオモチャにされることは、彼女にとって光栄なこと。
それに同意の上で行っていることなので、痴漢ゴッコとでもいうべき遊びに近い。OL風に扮してはいるが、ブラの内側で乳首にワイヤレスローターがテープ付けされていて、ストッキングも赤いガーターベルトで吊っている。手提げ鞄の中身は規定のネクタイと正真正銘の手錠、そして警察手帳が入っている。
鉄道警察に捕まることもない。その現場を発見しても、痴漢に及んでいるのが翔真なら逮捕など無礼なことができるわけがなかった。仮に誰かに取り押さえられるようなことがあれば、駅近辺の交番まで連れていき、即釈放となる。
「っ……んんっ……」
小振りな尻を鷲掴みにされ、彼女は微かに顎を浮かせる。ダークブラウンのショートカットの髪が僅かに跳ね、シャンプーの香りを小さく拡散させる。
その香りを翔真は吸う。それが鼻に届くほどの位置につけ、彼女の尻を弄んでいる。その距離感が不思議に思えないほど車内に人が溢れている。
(あああ……)
スルリ、スカートの中に手が滑り込み、染みの広がるショーツの底に指が這う。綻んだ溝にTバックの細い生地を沈み込ませるように、ズリズリと縦筋を圧迫する。
彼女は嬲りやすいようにヒップを差し出して、少し股を開き、長い脚をプルプルと震え上がらせる。痴漢プレイを楽しむ翔真に服従している状況に酔いつつ、彼の面子を保つために自然に振る舞う努力をする。そのスリルがまた堪らず気分が昂るのだが、ご褒美が欲しいので必死に快感を耐えている。
「っく……っはぁぁぁ……っ……」
尖ろうと乳頭を押さえ付けているローターが微動して、彼女は喉を絞り上げる。吐息が弾むにとどめることはできたけれど、胸の先からビリビリと走り続ける甘美な電流に脳髄がじわじわと白く濁り、今にも爆ぜそうだった。
「んっ! っ……ぁ……くっ……」
そんな彼女を面白がるように指先は陰核を転がして、彼女にアクメを味わわせた。その都度彼女はガクガクと脚腰を戦慄かせ、声を堪える。
翔真はそれ以上の責めはしない。あまり強いアクメをくれてやると瞬く間に淫水が溢れて脚を伝い落ちてしまい、折角の疑似痴漢が興醒めになってしまうから。
あくまでワイヤレスローターの一番弱い強度で乳首を刺激しながら、ショーツの上から秘部を嬲るだけ。悶絶させたいときはショーツの上からカリカリと肉豆を引っ掻き、反応を最小限にとどめる彼女の姿をニヤニヤしながら眺める。
「ぁぁっ、ふうううっ……」
それだけで彼女は甘美な電流を手足の先まで走らせ、声を殺しながら身悶える。悩ましげに眉を曲げ、惚けたように瞳を微睡ませている。頭の中に生温い靄を広げ、半開きの口の中で物欲しそうに赤い舌をチロチロと踊らせている。
肉欲を満たすどころか煽りたてる絶妙なアクメに耐え、なんとか理性を繋ぎ止めようと踏ん張っている彼女。そればかりに気を張っているので、翔真に密着する3人の小綺麗な女性が股間の膨らみを絶妙な加減でさすっていることに気付かない。
快速急行の電車が減速する。車掌の間延びしたアナウンスが流れ始める。
「降りるぞ」
「はい……ぁぁぁ……」
ヒソヒソと声を交わす最中、股間の隆起に求愛していた白魚のような15本の指が離れていった。
天井から吊るされたいくつものシャンデリアが、その空間をきらびやかに彩っていた。細かく区分けするように配置されたシートとテーブル、調度品まで、見ただけで高級な代物と分かるものばかりが詰め込まれていた。
しかし驚くのはそこから。
VIPルームという6畳くらいの狭い個室には、だいたい天井の一面を占めるほど大きなシャンデリアが吊られていて、煌々と明かりを落としている。L字のベージュのソファもシンプルなのに高級感があり、脚の低い白いテーブルも鏡のように磨き抜かれている。
彼女が驚いたのは、繁華街から程近い歓楽街にある高級クラブのその部屋に大学生の青年が通されたということ。ソファに浅く腰掛けて背もたれに肘を掛けている彼にしなだれ掛かっているのだが、場所と空間に圧倒されて甘えることに集中できないでいた。