神アプリ 206
「あと30分でイかせろ」
そう言われて横目に時計を見る。そして初めて、時を尿管清掃に没頭していたことを知った。実際は、尿道の掃除は残液を搾り上げた時点で終わっているので、それから今まで、時を忘れて陰部を舐め回していたということになる。
(あと30分……)
口内粘膜を張り付けてヌプヌプと茎胴を出し入れさせながら、焦燥感に襲われていた。
(あと30分しかない……)
男性器を口腔で摩擦させ脳をトロトロにしながら、別れを前に咽び泣いているかのような子宮の疼きに苛まれ、床の水溜まりに淫水をドロリドロリと注いでいる。
そして、けれども。
「あの──」
彼女は我慢できずに上目遣いを向ける。その昏く光る瞳に、何故か一瞬、恋人の顔が浮かび上がった。
(あああ……)
押し寄せる後ろめたさ。胸が潰れそうな罪悪感。消えてしまいたいほどの背徳感。それを抱くということは、やはり心が求めているのは彼……好きでもない人と肌を合わせるなんて、とても────
「うん?」
「あ、あの……立って、ください……」
男は表情一つ変えずに椅子から腰を上げた。
足の間で跪いていた彼女は、首輪に繋がっている鎖をカラカラと床の上に滑らせながら這って、男の後ろに回り込む。それから臀部に両手を添え、指に力を込めて強引に開き、その溝へ口を埋めていく。
菊門をぬるぬるの舌が擦る。肉幹に白い指が巻き付いて、恭しく扱きたてる。肉袋は小さな掌に乗せられて、ほどよい加減で揉まれる。男は鎖を手に巻き付けて短くしてからグッと前に引っ張って、従順に直腸へ舌が差し込まれるの感じながら口角の一端を歪めていた。
* * *
芸能プロダクションのチェリーブロッサムは都心に事務所を構えた総合人材派遣会社。人材派遣といっても芸能プロダクションなので、各種メディアに向けて人材という商品を提供することが主な仕事となる。
提供する人材は役者やモデルがメイン。有名なレコードレーベルが手掛けるアイドルグループにも、このプロダクションに所属しているメンバーがいたりする。日本ではトップクラスに位置付けられている芸能プロダクションだった。
9時。こじんまりとした会議室でそれは開かれた。年配の、清潔感溢れる男性が、他4人の社員に目配せした。
「SSレーベルから、夏本氏がプロデュースする新しいアイドルグループを結成するため、オーディションの準備を進めているのは知ってるね?」
問われ、室内の紅一点が「そうなの?」と言わんばかりにキョロキョロと狼狽える。
「まあ、君はみゆのマネージメントで大変だろうから知らないかもしれないが、今回はかなり大規模なプロジェクトらしい。50人近くを採用するという話がある」
「50人!?」
「どう運営するか細かい話まできていないが、チェリーブロッサムからもオーディションに応募しようと思っている。私はSSレーベルからの情報収集にあたる。君と君は街頭でのスカウト、君は我が社の中に適当な人材がいないか探してくれ」
キビキビと指示を出す年配の彼は、一呼吸置いてから、
「そして倉田くん。君にはみゆの営業先で光る卵を見付けて欲しい。彼女に憧れる女の子は多いだろうから、近くに来るとなれば一目見ようと来てくれるかもしれない。そういう中から探して欲しいんだ。あちこちで活動するみゆに付いている君だからこそ、広範囲かつピンポイントに狙っていける。だから期待はしている。が、あくまでメインはみゆのマネージメントだ。無理をして、大事なうちの看板モデルに泥を塗らないよう注意してくれ」
「は、はいっ」
多忙と言えど、麻里子が大変なのはスケジュール管理、美優が収録や撮影に入っている間は周りに注意を向ける余裕がある。
「よし。では来週の同じ時間、同じ場所で意見交換しよう。それまでに何か動きがあれば召集する。倉田くんはみゆのスケジュールを優先して、参加できないようなら前日までに経過を報告するように。話し合った内容はタイミングを見て伝えよう。何か訊きたいことはあるか?」
5秒ほど沈黙が流れる。
「では、今日はこれで解散」
窓の外は猛暑の地獄。けれど窓の内側は涼しいだけにとどまらず、目移りする美女たちが1人の青年を愉しませている楽園。朝早くから10畳の空間には淫臭が充満していて、昼時になっても女たちの艶かしい声がやまない。