神アプリ 172
「で、ポンッ、と……」
「あっ……」
翔真が四角い方の右に尖っている三角ボタンを押すと、楕円形の物体が振動し始めた。更に同じボタンを押すたびに、振動が激しくなっていく。
逆に左に尖っている三角のボタンを押すと、振動は弱くなった。中央の四角いボタンは停止を示しているらしく、それを押すと、振動の激しさに関わらず楕円形の物体が止まる。
それらの操作確認が済むと、翔真は楕円形の物体だけを早苗に渡した。
「あそこにトイレがあるから、それを入れてくるんだ」
「入れて──」
早苗はまたも頬の朱を色濃くし、楕円形の物体と翔真の顔に忙しなく目を往き来させる。
「どこに、かまで言わないと分からない?」
そう問われると顔を伏せ、微かに首を横に振った。膝丈ワンピースに隠れている腿をモジモジと擦り合わせていた。
「だよね。早苗は“俺の女”なんだから」
「はああ……早苗は……翔真様の……」
嬉しそうに目を細めてその言葉を反芻した早苗は、手渡された青い楕円形の物体、いわゆるワイヤレスローターをバッグに仕舞う。そして徐に立ち上がると、蕩けた視線をたっぷりと絡めてから、重そうな足取りでトイレへ向かっていた。
(これを……)
トイレに入った早苗は、洋式便器の蓋にバックを置いて例の物を取り出した。掌に納まる程度の大きさのそれにはスイッチらしき物は付いていなかった。
(入れて……)
つまりこれの操作如何は翔真が持っている四角い物体の方。あれがリモコンということだろう。翔真が好きに操作して、肉の隙間に埋もれたローターが振動する。それを考えただけで早苗は、不思議な高揚感に身を灼かれた。
「あぁぁっ……すごく濡れてるぅぅ……」
ショーツを下ろすと、その底がグッショリと濡れていることが目で分かる。シルク素材のそれは真っ白なのに、広がっている染みは自分が淫らな色に染まっている事実を如実に示している。恥ずかしい半面、翔真に対してはこうなってしまうということに嬉しくもあった。
「くふぅぅぅっ……」
膣孔に押し当てると、ニュルン、と簡単に入ってしまった。微かに感じた摩擦に腰の熱が背筋を駆け登っていた。膣の入り口がキュッ、と窄まってローターをすっかり飲み込むと、そこから輪状の紐だけ垂れている状態になった。
(あああ……震える……)
まだ何も起こっていない。けれどもこれから起こることを考えると、早苗の顔は淫蕩していた。その淫らな期待に身体を火照らせながらショーツを上げ、トイレを後にした。
「入れてきた?」
頬杖を付いて紫煙を燻らせている翔真に訊かれると、そろりと席に着いた早苗は恥ずかしそうに頷いた。切なげに歪む目から被虐に満ちる乞うような視線が向けられているものの、その瞳の奥は昏い悦びで溢れている。
「どれどれ……」
「ふはぁぁぁっ……」
煙草を灰皿に持たせ掛けた翔真がテーブルの上のリモコンに手を伸ばしただけで、早苗は縋るようなか細い吐息を漏らす。無意識に身を強張らせて、胎内の異物を締め付けている。
「なに期待してるの?」
「やぁぁ……期待だなんて……」
翔真から見て右に尖っている三角形のボタン。彼はそこに人差し指をあて、トントン、と軽く叩く。ボタンを押してしまわない程度の弱々しい力加減なのだが、人差し指がボタンに触れるたびに早苗は腰をヒクヒクと大袈裟に弾ませる。
「ああ、そうそう。今日は勝手にイッちゃダメだからね」
「ええっ?」
「イきたい時はちゃんとお願いするんだ。イイって言ってないのにイクってことが5回に達したら、今日のデートは終了。もちろん、夜のお楽しみもなし。もう3回はイッてると思うけど、それはノーカンにしておくよ」
早苗は一方的に提示されることをただ頷いて受け入れる。しかしその間にも人差し指はボタンを叩き、早苗の腰は過敏に反応している。
「いい子だね」
「あっ! んんんっ……」
ボタンが押され、ローターが震える。フェイクの指使いに収縮を強いられていた胎内からビリビリと甘美な電流が駆け巡り、いちいち跳ねていた腰はビクビクと震え上がった。
「じゃあ行こうか」
翔真は煙草を揉み消して、立ち上がった。早苗は甘い吐息を詰まらせながら「は、はい……」と答え、彼に続く。
早苗の生まれて初めてのデート。それは想像以上に刺激的なものだった。
「あら、美咲さん、今日は一段と若いわ」
黒いギンガムチェックのワンピースにピンク色のジャケットを合わせている美咲がその輪に入ると、口々に羨むような声が上がった。
「そ、そうですか?」
「ええ、とても。肌の張りなんか、以前よりピチピチしているような……私も見習いたいわ」
「いえ、そんな。私は親としてはまだまだですし、みなさんのしっかりしているところを学ばせていただきたいです」
「そう言うのは勝手に身に付くわよ。あまり気を張らない方がいいわ」
美咲は小学校6年生の奈保が第一子。対して奈保の同級生の美苗、優子、玲奈はそれぞれ上に兄弟がおり、彼女たちの母親は美咲よりも親歴が長いということになる。
「立ち話もなんですから、そろそろ入りましょう?」
玲奈の母親が提案する。