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神アプリ
官能リレー小説 - ハーレム

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神アプリ 159

 電車に揺られている間、梨沙は翔真の腕にしがみついていた。そうしているだけで死ぬほど嬉しく、逆上せあがりそうだった。実際頭の中がトロトロになって何も考えられず、会話のネタを探そうともしていない。
 落ち合った時に比べると愛欲は抑制されていて、その代わりに恋情が溢れている。要するに、健全な蕩け方だった。ぐしょ濡れになったショーツをトイレで確認したときは自分の淫乱さに泣きそうになったが、それ以降は淫欲も落ち着いていた。

「俺、ネズミーランドって、結局初めてなんだよなあ」
「そうなんですか。一緒ですね。私も彩菜のノロケ話で聞いたくらいにしか知りません」
「ハハ。あいつは数えきれないくらい連れていかせたんだろうな。あの顔とあの身体でせがまれたんじゃあ、男としては仕方ない」
「……私も、あんな可愛らしい顔と、その……な身体の方が……良かったですか?」

 翔真は左腕に絡む梨沙の腕に、ムギュ、と力が入るのを感じた。小動物のようなつぶらな瞳の上目遣いに差され、ようやく自分の無神経さに気付いた。

「それじゃあ彩菜になっちゃうね。こういう可愛いところがある梨沙とのデートを楽しみにしてたのに」
「はう……」

 梨沙は赤面し、俯いた。嬉しさと恥ずかしさが交錯して卒倒しそうになり、その骨抜きになった身体を預けた。

「次で乗り換えか」

 ドアの上部にある電工掲示板に次の駅名が流れていく。梨沙は今の時点で感無量の思いだったので、ずっとこのままでいたい、とさえ思っていた。それほどの幸せを感じているせいで、

 ────『結局初めてなんだよなあ』

 彼の言葉の全てを消化しきれていない。



 翔真は青ざめていた。胃から何か登ってくるような心地がようやく落ち着いたところだったが、顔色の快復にはもう少し時間を要しそうだった。

(これ、どの設定で治るんだ!?)

 『スレイブ・メイキング』のマスター″目を開いてみるものの、絶叫系のアトラクションに耐性が付きそうなものが見付けられない。

(高所恐怖症? バランス感覚? 乗り物酔い? 分かんねーっ!)

「しょ、う、ま、さんっ。お待たせです」

 結局何が原因でこんな目に遭っているか突き止める前に、トイレから梨沙が戻ってきた。ベンチでげんなりしている彼を、首を傾げるようにして覗き込んでいる。その姿勢のせいで左の肩の前を、スッ、と黒髪が下りていた。
 翔真は電車に乗る前、トイレで梨沙の発情≠OFF≠ノした。その甲斐あって、電車の中では梨沙の初々しくもベタ惚れニャンニャン状態に男心を健全に刺激されることができた。
 が、ネズミーランドに着いてからは、童心に返ったように瞳をキラキラさせる梨沙にあっちやこっちへ振り回され、夢の国の恐ろしさを痛感することとなった。

「次はあれだっけ?」

 翔真はスマホを仕舞い、向かう先に目を向けた。この春から導入されたニューアトラクションだ。

「そうなんですけど、さっきチラッ、と見たら待ち時間が2時間くらいだったんですよ」
「2時間!?」
「そうなんです。だから……もう1回、アレ乗りません?」
「アレって……」

 梨沙の指差す先を見て翔真の顔が引き攣る。宙に敷かれたレールの上をコースターがぐるんぐるん回っており、それに乗っている人たち、特に女性の耳をつんざく悲鳴が飛び交っている。

「ま、また、アレ……?」
「すっごく楽しくなかったですか? ねーえー翔真さぁん、もう1回だけぇ……いいでしょう?」

 梨沙は彼の横に掛けるなり腕に腕を絡め、ググッと寄り添い、クネクネと身を捩りながら甘く駄々をこねた。いつも一歩引いているところがある梨沙にこう強請られては、流石の翔真も堪ったものではない。
 それにやはり、プラトニックな時間を過ごすというのは新鮮さがあった。彼としても、302号室に出入りしている異性たちに特別な感情を持っていないわけではないので、今この甘い瞬間をそれなりに楽しんでいる。

「じゃあ、もう1回、な」
「やった! じゃあ、ねえ、早く早くぅっ……」

 梨沙に急き立てられ、翔真は重い腰を上げた。



 窓の向こうに広がる夜の闇とネオンの輝きは、オトナの時間の訪れを報せていた。温かい明かりが溢れる室内でもムードはいい方へ染まっており、美少女の女子高生が堪えきれないという様子で愛しい人の唇を強請っている。

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