神アプリ 114
デスクの下の狭いスペースで身を寄せ合う2人の女子大生が猫撫で声で強請り、甘い唾液を紡いで肉幹を舐めずる。一方が唇を被せればもう一方は根元や陰嚢を湿らせたりと、複数がかりでのオーラルセックスもすっかりお手のものだ。
「彼氏にもそうやってお強請りしてるの?」
とからかい、
「やぁん……私の子宮は翔真様の中出し専用だもん……彼氏はゴム必須にさせてます……」
「私の口なんて、翔真様のオチンチン以外受け付けないんだからぁ……」
と恥じらいながら返す彼女らの反応を楽しみつつ、他方で彼は料金収納票を見ながら紫煙を吐いていた。
「あ、これ」
彼が差し出せば、首筋を湿らせている彼女がスキャンする。彼は時刻を確認し、防犯カメラの操作に取り掛かる。
しかし時間を合わせる直前、画面を見て口の一端を歪めた。
「やぁん……もっとぉぉ……」
彼が徐に立ち上がり、身形を整え始めると、机の下から半裸の2人が這い出てきて腰元に縋り付いた。つぶらな瞳で見上げながら尻を振る姿は、捨てられた犬の姿と重なって見える。
「アイツを戻すからちゃんと服来とけよ。襲われても知らないよ」
彼が聞く耳を持たないと知った彼女たちはお預けを受け入れ、名残惜しそうにしつつ服装を正しにかかる。彼の言葉に含まれる命令意思を悟ったのだ。因みにアイツとは、売り場に出ているもう1人の夜勤バイトのことだ。防犯上、夜勤シフトは男性2人体制なのである。
「ねぇん、戻ってきたらまたしゃぶらせてくださいね……?」
「次は出すまでやらせるよ」
それを聞いて早くも恍惚を広げてく彼女らを尻目に、彼は事務所から出た。
彼女は悪夢を見ていた。その姿を視認してしまった瞬間身体に戦慄が走り抜け、薄ら寒いものを感じた。
「ん? 他に何か欲しいもんあんの?」
と恋人が振り返る。自分が彼の腕を引いて足止めさせたことに気付くまでしばらく時間を要した。
「なんか顔色悪くない? 寒い?」
“恋人には”優しい彼が彼女の異変を敏感に察知し、顔を覗き込む。しかし彼女が見ているのは彼の向こうにいる、コンビニの店員だった。
(ど、どうして……)
彼女とその店員は面識があった。彼女は週に一度その男を嫌々家に招き入れ、嫌々ながらも1時間みっちりと口を使って牡の樹液を誘い出している、そういう仲なのだ。
(あ、あっちのレジ……)
残念ながら、その男が待ち構えているレジとは別にあるレジは、休止中の札が立っている。
(な、何で……?)
入店時は別の店員が対応していたはずなのに、今いる店員はあの男しかいない。
(そ、そうだ……買い物せずに帰れば……)
早速恋人に提案しようとした彼女は、再び悪夢を見た。恋人の背後に見えるあの男が、人差し指をクイクイと扇いでいるのだ。
(あああああ……)
指1本に込められた来い≠ニいうモーション。つまりあの男は自分を呼んでいる。来いと命令を下している。そう理解でき、嫌だと思いながらもあの男に逆らう意思が湧いてこない。
彼女たちはそういう、絶対的な主従の関係であった。
「あれ? いいの? 買ってあげるよ?」
レジへ向かう彼女を、恋人が不思議に思いながら気遣いを見せる。
「ううん、大丈夫……」
「そう? ならいいけど」
本当は大丈夫なはずがなかった。知り合いを装って声を掛けるような真似をせず、指1本でサイレントに呼び寄せたのは、恋人の前では赤の他人でいろということなのだろう。そこまであの男の考えを汲めてしまう自分が一番怖い。
(んあああっ……)
レジに着くか否かという辺りで腰の奥が痺れ、歩調が乱れた。痺れた辺りがジンジンと熱を持ち、それが忽ちのうちに身体中に広がっていく。頭の徐々に灼かれ、ボーと意識が浮いていくような感覚に囚われていた。
(い、いやあああ……)
腰の奥が疼き、絞り出されるように体液が溢れ、ショーツが湿る。湿ったショーツは秘部に張り付く。自宅ではなくコンビニという場所、しかも隣に恋人がいるというのに、この男の側に至った途端に襲ってきたこの現象がまるで如何わしいことを期待しているかのように思え、後ろめたさに打ちひしがれる。
男は何ら気にする様子もなく店員をこなしている。恋人がレジに置いたカゴの中の商品を、次から次へとスキャンしているだけだった。
「おい、ホントに大丈夫か? 顔が赤いぞ? さっきは青かったのに……」
「あ、アハハハ……風邪、かな……」
「あり得る。夏風邪はバカしかひかないからな」
恋人がからかいながら頬をつつく。その隙を見たのか、あの男が加虐に満ちた笑みを浮かべ、彼女を目で笑った。
(んううう……)