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神アプリ
官能リレー小説 - ハーレム

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神アプリ 12

 翔真が住む学生アパートからケータイショップに行くまで10分掛かる。今日の美幸の通勤に掛かる時間はそれだ。だが、破れたパンストの代替物を用意する必要があり、それを購入するためにコンビニに寄らなければならなかったので、通勤時間は余裕を加味してやはり30分だった。
 素っぴんでも十分なのに、シャワーを浴びてメイクを整えハッとするほどの美女にレベルアップした美幸を見送る際、名残惜しむ彼女と数分以上に及ぶ濃密なキスを交わした。その時も美幸は発情していたようで、新たな染みが広がるショーツの底を押しながら擦っただけで簡単に達するほどだった。
 それでも彼女が仕事に行くのは、翔真といたいから仕事を休むのは翔真を利用しているようで嫌だという理由からだった。一般常識であっても美幸の思考基盤には翔真がいて、それを知った彼は改めて彼女を隷属させていることを実感した。

 命令を下さずともマスターを主体に物事を考え、迷惑を掛けない行動を選ぶ。それが服従とは異なる忠誠というやつだろうか。翔真はそんなことを考えながら煙草を叩いて灰を落とし、左手でスマホを取っていた。 
 スマホでやることと言えばスレイブ・メイキングだ。他のどんなアプリよりも面白くて、実用性はありすぎた。
 スレイブ帳には三人の女性の名前がある。三人ともマスターである自分にベタ惚れ状態でありながら機嫌を窺うような態度を取り、マスターの意に反することはしようとしない。逆に自分が望むことは何でも喜んでしてくれそうだった。

(ん?)

 ならば、適当な女社長なんかをスレイブ登録すれば就職先は決まったも同然なのではないだろうか? むしろ、働かずとも勝手に貢いでくれるのでは? そもそも女性にしか使えないのだろうか? まあ男に発情されて「ウホッ」とか言われても気持ち悪いだけなのだが、愛情と発情をOFFにすれば済む話だろう。
 それ以前に女社長の知り合いなどいない。スレイブ状態の三人も、たまたまフルネームを見る機会があって登録できたに過ぎない。というか、名前を知ることはスレイブをメイキングする必須条件だ。
 では、名前さえ知っていれば誰でもスレイブにできるのだろうか? 同姓同名の存在だっているだろう。漢字で登録すれば分けられるのかもしれないし、そういう理由で漢字入力も可なのかもしれないが、同じ漢字の同姓同名だって少なからずいるはずだ。
 それに、一方的に名前を知るなんて簡単にできる。企業のホームページなどに代表取締役の名前を載せているということは珍しいことではない。
 仮に一方的に知ることでもスレイブにできるなら、テレビの向こうで原稿を読んでいる美人キャスターだって意のままだ。本名で活躍している芸能人も然りである。
 纏めればつまり、スレイブ・メイキングは謎だらけなのだった。他人を都合のいい存在に変えられる神がかったアプリだが、それを使いこなすだけの知識がない。

(もっとこのアプリのことを知らないと……)

 新たな煙草に火を点けてスマホを睨む翔真。最早就活のことなど頭の片隅にもない。



 大学構内にあるパソコンルームで適当なサイトを回っていた猪瀬千夏(いのせちなつ)は、キーボードの側にあるスマホを見てパソコンの電源を落とした。
 一限が休講で暇を潰していたのだが、二限はそういうわけでもない。しかも月曜の二限は彼女にとって特別な講義と言えた。
 早速荷物を纏めてパソコンルームを後にし、その部屋がある建物からも出る。

 日が高くなってきていた。時刻で言えば10時25分頃で、後5分もすれば一限が終わる。
 陽気を含んだ微風が吹き、彼女の金色の髪を揺らす。一陣過ぎればその髪は背中の上部まで落ち、綺麗なストレートに戻った。

 朝に比べれば穏やかな気温に落ち着いているためか、千夏はキャラメルカラーのダッフルコートを左腕に掛けたまま大学構内を進んでいく。白いニットの長袖の服に陽光を弾いていた。下は緑のチェック柄の赤いミニスカートで、黒いニーハイソックスに茶色いブーツを合わせていた。

 千夏が向かっているのは構内にある自販機群の一つだ。パソコンルームは飲食厳禁なので、飲まず食わずで90分を潰していた。大学から歩いて10分のところにあるアパートで下宿しているのだが、戻ってもまた来なければならないので帰宅を避けたのだった。
 それに一限が早く終われば、それだけ早く恋人に会える。結局恋人が受けている講義は早く終わることはなく90分間一人だったが、後十数分もすれば恋人と合流して、二限の90分や昼休みの60分を一緒に過ごせる。
 そう思うと千夏の足取りは軽かった。何しろ一回生の夏から今まで、ずっとラブラブで過ごしてきたのだ。恋人への想いは今も変わらず、むしろ日を重ねるごとに強くなっている気がする。

 しかし恋人への想いは、今日、一瞬で消える────

 ミニサイズペットボトルのホットレモンティーのボタンを押した瞬間、強く胸が高鳴った。その一打ちがあっという間に血を巡らせ、身体を火照らせる。

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