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まおーに任命されました。
官能リレー小説 - ハーレム

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まおーに任命されました。 61

 猛スピードで男の子に迫っていた車が、何故か急激に減速していたのだ。
 いや、その車のみならず、周りの車も……良く見れば、周囲の人の動きも遅くなっている。
 俺はちょっと素早く右足を踏み出しただけなのに……。
 いやいや、そんなことよりも今は男の子だ。
 男の子の動きも遅くなっているため、このままではひかれてしまう。
 俺は急いで男の子に駆け寄った。
 が……触れようとして思い出した。
 ちょっともたれかかっただけで粉々になってしまった洋子の家の塀のことを。
 もし仮に今の状態が紋章に触れたことによる効果の一つだとしたら……。
 どうする?
 どうする、俺?
 そう考えている間にも、迫ってくる車を始め、周囲の動きが徐々に早くなっていた。
 不味い……どうしたらいいのか判らない!
 俺が男の子を庇うように車との間へ身を投げ出した数秒後、全ての早さが元に戻った。
 瞬間、急ブレーキを踏む音が聞こえ、背中に痒みを覚えると同時に何かが大破した大きな音が轟いた。

「え?」

 背中をポリポリやりながら音の方へ振り返ると……何と、ボンネットがひしゃげた車があるではありませんか。

「まっ、まま、ま……魔王様だ!」

 周囲にいた誰かがそう叫ぶ。

「え?」

 何んでバレたんだ?
 ちゃんと服、着てるよな……。

「魔王様だ!」

「うぉー! 魔王様!」

「「まおー様っ! まおー様っ!」」

 何この魔王様コール……逆に引くわ。
 車を運転していた男までも、エアバッグに挟まれながら右手を突き上げて魔王コールをしている。
 周囲はにいた人達は勿論、男の子までもがその唱和に参加していた。

「何で俺が魔王って判ったんだ?」

 男の子に聞いてみる。

「だってさ、魔王様の体はどんなものよりものよりも固いってお母さんが言ってたもん。ぶつかった車の方があんな風になるなんて、お兄ちゃんが魔王様って証拠だよ」

 子供の方が魔王事情に詳しいらしい。
 俺は思わず苦笑した。

「助けてくれてありがとう、魔王様。僕も魔王様みたいにカッコ良くなる!」

 憧れ、か。
 抱かれて悪い気はしない。
 でも

「その前にちゃんと信号を守ろうか、少年よ」

 俺は右手を差し出し、慌てて左腕を撫でてから、男の子の頭に右手を置いた。
 男の子は

「うんっ」

 と頷き、憧れの視線を向けてくる。
 周りからは未だに魔王コールが絶えない。
 何だか恥ずかしくなってきて

「じゃ、じゃあな。気を付けろよ」

 俺は早足にその場を後にした。



 というわけで、どうやら力が強くなるだけでなく、動きが早くなり、体が固くなるということが判った。
 これが魔王の能力……いよいよ真実味を帯びてきた。
 他にも何かあるかもしれない。
 魔法とか使えんじゃね?
 そんな馬鹿なことを考えながら自宅の玄関を開けると、今日は友梨も姉さんもいなかった。
 一安心一安心。

「ただいまー」

 言いつつ靴を脱いでいると、リビングの方から家族勢揃いで玄関へ出てくる。

「遅かったのね」

「あまり待たせちゃ悪いから、健人はそのまま来い」

 友芽と父さんに畳み掛けられ

「何処に?」

 俺は当然の疑問を口にする。

「お隣なりよ? 健人は知ってるって聞いてるけど?」

「え? 皆で行くのか?」

 家族で、とは聞いてませんけど。

「ええ、洋子さんが家族ぐるみのお付き合いをって……」

「聞いたわよ?」

 友芽の言葉を遮って姉さんが入ってくる。

「お隣の奥さんと随分親しいそうね? 健ちゃん?」

「無駄打ちすんなっての!」

 姉さんに続いて友梨が身を乗り出してくる。

「無駄打ちっていうか、朝にたった一発だけ……」

 あ、墓穴掘った……と思ったのも束の間、姉さんと友梨の手に股間をムギュッと握り締められた。

「その話っ」

「後で、詳しく聞かせてもらおうかしら?」

「う゛っ……」

 という呻きを漏らしたが最後、さっさと用事を済ませようと言わんばかりに外へ引っ立てられ、父さんがお隣さんのインターホンを鳴らし

「こんばんは、皆さん。お待ちしてました」

 と旦那さんが出て来ると、あれよあれよという間にダイニングへ押し込まれた。
 いつも洋子を突き上げているときに視界の端に入るドア……その向こうはこうなっているのか、とか思いながら勧められた席に座ってみると

「ああん、魔王様……お待ちしてましたぁ。今夜は全身全霊でおもてなし致しますぅ……」

 キッチンから出て来た洋子が即座に正座し、三つ指を付いて深く頭を下げた。

「あ、ああ……よろしく」

 俺がそう返すと、洋子は立ち上がって

「今、お食事の用意をしますね」

 と、またキッチンへ戻っていった。
 隣には当然といった様子で友梨が掛け、俺の前には姉さんが陣取る。
 姉さんの隣に友芽、父さんと続き、そこで父さんの右斜め前に洋子の旦那さんといった具合だ。
 残りの空席……洋子の席は旦那さんの向かい側、つまり俺の右斜め前にある。
 何とも不思議な構図だな。

「いやぁ、魔王様のご家族と夕食を一緒にできるなんて光栄だなぁ」

 旦那さんは感慨深く言い、父さんは

「こちらこそお招きいただいて恐縮ですよ」

 と、社交辞令のようなことを言っていた。

「それにしても立派なお家ですなぁ。まだ若いのに……失礼ですが、どちらにお勤めなんですか?」

 父さんの言うことは大袈裟なことではない。
 豪邸とまではいかないが、確かに立派な一軒家だ。
 多分、後に旦那さんか洋子の両親を招くことを視野に入れているんだろう。

「あっ、私は……」

 旦那さんが名刺ケースを取り出すのを見て、父さんも慌ただしく名刺を探しだした。
 大人ってのは大変だな……。
 そんな中、洋子はテキパキと料理を並べていく。
 ビーフシチューやサラダ、お茶、ジュース、ワイン等々……そして、ロールパン!?
 米じゃねーのかよっ。

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