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まおーに任命されました。
官能リレー小説 - ハーレム

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まおーに任命されました。 1

 魔王は平和の象徴と言われている球体――クリスコアを前にし、今までの長い旅路を思い返していた。
 全ては女神が魔物の蔓延った世界を秩序という抑制力と制裁という武力を用いて平和をもたらしたのがそもそもの始まりだ。
 女神は魔物の力を奪い、沈静化させていった。
 その結果、魔物は今やひっそりと身を隠し、無力なただの生き物がのさばるような世の中になってしまった。
 それだならまだしも、魔物を奴隷のように扱う始末。
 耐えかねた魔王は、魔物の力を奪って沈静化させる球体――クリスコアを破壊すべく神殿へ兵を引き、とうとうここまでやってきたのだ。
 しかし女神がそれを見過ごすわけもなく、最後の要として自身の体を張り魔王の前に立ちはだかったのだった。
 一人で魔物を鎮圧した女神の腕は確かだったが、魔王は最期の一人になっても決して諦めなかった。
 たとえ命が尽きようとも、クリスコアさえ破壊できれば再び魔物の時代がやってくるのだ。
 その想いの一撃がクリスコアにヒットして、球体にヒビを入れさせる。
 女神の方も思いの外苦戦を強いられ、命も危ない状態だ。
 しかしながら、クリスコアだけでも何とか死守しなければならない。
 クリスコアさえあれば、魔物の力を封印させることができるのだ。
 これ以上破損されては、再生させることは難しい。
 逆にある程度の大きさを保った破片なら、集めることで再生させることができる。
 従って女神は時空を切り裂く剣で空間を斬り、クリスコアと魔王諸共時空の狭間へ身を投げた。
 幸い、この戦いで生き残っていたのは魔王だけ。
 本来場所の特定ができないようにしてある神殿の場所も、生き残った魔王しか知らない。
 そこからクリスコアと女神も消えてしまった事実は、誰にも判らないと踏んだのだろう。
 女神は形を崩していくクリスコアを見ながら祈っていた。
 再び形を成すことを……。



「というわけなのじゃ」

「……は?」

 俺は、空から降ってきた変な姿のちっちゃいゴブリンみたいな奴に、時空を飛ばされた経緯を長々と聞かされうんざりしていた。
 かったるい授業をサボって屋上でゴロゴロしていたのに、魔王とかいうコイツは死ぬ死ぬ言いながら結構粘り、五月蝿く話しかけてくる。

「た、頼む……ワシの代わりに、魔界の平和を取り戻してくれ……」

「何でだよメンドクセー」

 あれだな。
 幻と会話できる俺って結構ヤバいのかもな。
 確かに男女五人くらいでカラオケオールして寝てないし、幻覚を見てもおかしくはないけど……おかしいか。

「そう言わずに……ウウッ……」

 いよいよ逝くか?
 魔王とやらが呻きながら俺の腹に腕を伸ばして、手を乗せている。
 感触が何ともリアルで気持ち悪い。

「き……貴様に、統率力と……子種を、授けた……」

「は?」

 統率力? 子種?
 わけわかんねー。

「あとは……頼んだ……ガク」

「お、おいっ……おいって!」

 哀れな死に様を見て、反射的に体を起こしていた。
 魔王とかいうやつの肩を揺すっても反応はなく、それどこか……灰と化していった。

「マジかよ……何なんだよ一体……」

 サラサラした感触を手に感じる。
 これが幻? 嘘だろ?
 あまりにもリアルな手触りの灰は、風に吹かれて散り散りに飛んでいく。
 もし魔王が幻じゃなかったとしたら、聞かされた話も嘘じゃないってことなのか?
 思わず下腹部を撫でていた。
 女神とクリスコア……、統率力と子種……?

「何だったんだ……?」

 つい声に出してしまった。
 半ば混乱気味の俺の耳に授業が終わったチャイムが響いてくる。
 取り敢えず教室に戻るか。
 なんか後味悪いし、ここに長居していたくない。
 校内に続くドアを開け、半信半疑を拭い去ることができないまま階段を下りていく。
 あんなことがあった後だからか知らないが、授業だりーの怠惰感は大きくなっていた。

「……?」

 何だろう……二年生の階まで下りて教室へ向かっていく俺を、廊下に出ている生徒達がチラチラ見てくる。
 男からは憧れのような視線を寄越され、顔を赤くした女からは誘うような目で見られた。
 話し込んでいる女同士は、俺を見た途端声を潜めてキャッキャと黄色い声を漏らしている。
 ……あんまりいい気分じゃない。
 兎に角自分の教室に入ろうとしたら、中から早苗(さなえ)が出てきて危うくぶつかりそうになった。

「おっ、まおー様のお出ましだ」

「は?」

 早苗は俺を見るや否やそんなふざけたこと言い、感心した様子で腕を組んだ。

「精が出るねぇ〜。私にも出してよ」

「は?」

 何も頑張ってないし、早苗に何を出していいのかも判らない。
 つか、今マオウサマって言われた……?

「後宮造るんでしょ? 絶対私も入れてよねっ。幼なじみのヨシミで、ね?」

 開いた口が塞がらない状態の俺に、早苗は益々意味不明なことを言いながらウィンクした。
 幼なじみってのは本当だけど。

「後宮? 何それ?」

「後宮は後宮よ。えらーい人のお嫁さんが生活するところ。ほら、大奥みたいな感じ?」

 大奥がよく判らないんですが。
 その言葉からは殿様のハーレムで女達の戦場って印象しか出てこない。

「まおー様なんだからさぁ、優秀な種を一杯付けないといけないよねっ。私、別に一番じゃなくてもいいからさ、取り敢えずまおー様の子供を産みたいなっ」

「……お前こんなところで何言ってんの? しかも彼氏持ちの分際で。つーか、誰が魔王だって?」

「健斗、頭でも打ったの?」

 早苗は真顔でそう言った。

「三笠木健斗(ミカサギ ケント)は魔王様ってこと、この辺じゃ皆しってる事でしょ? 皆早く後宮造らないかなーって期待してるんだから。そ、れ、に、魔王様は希望の星……カノジョが魔王様に見初められて子供を産ませてもらえなんて、かーくんも鼻が高いって」

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