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まおーに任命されました。
官能リレー小説 - ハーレム

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まおーに任命されました。 109

「そうなのかもしれないな……」

 素直に認めていた。
 何をしていても埋まらない心の隙間に、いつからか蔓延っていた不思議なモヤモヤ……その正体は寂しさだと的確につかれたら、認めざるを得なかった。
 帰国への思いは確かにある。
 しかし反面、

「でも、ケイシーの言うことも理解できるんだ。あいつらを見て、いやという程……」

 魔王を騙る者に騙されるということは、体を弄ばれる以上に心を弄ばれるということ。
 その屈辱は並大抵のものではないのだろう。
 被害者達が幸せそうに尽くせば尽くす程、俺はそう思う。
 だからケイシーのいう被害者を増やさないためさ対策は、早急に実行した方が良い。

「どうせそのうち帰れるんだ。それまでは、傷を癒すことに時間を使ってやれば良いさ」

「魔王様……」

 実際俺はただ性奉仕に身を委ねているだけなのだが、ケイシーは俺の言葉にたいそう感動したようで、夜景の光をキラキラと返すまでに瞳を潤ませている。

「グスっ……で、では、電話をしてみてはどうでしょう?」

「あっ、その手があったな。電話代もホテルが持ってくれるのか?」

「はい。そのように聞いております」

 ケイシーは闇に浮かんだデジタル時計の光を読み

「日本は今、夕方の四時半くらいですね」

「マジかっ! 丁度良すぎるだろっ」

 興奮任せに立ち上がった俺は、早速電話に手を掛け、その手を止めた。

「他の部屋にも電話ってあるよな?」

「ええ。勿論」

 それを聞いて俺はそそくさとドアへ向かう。

「何してんだよ。早く来いって」

「え? 私もですか?」

「当たり前だろ? 俺、国際電話とか掛けたことないんだからやり方知らねーしっ」

 そう言い放つと、ケイシーは苦笑を洩らしながら腰を上げていた。
 電話があるならどこでも良いと目の前の部屋に滑り込む。
 灯りを点けて室内を物色し、スクールバッグや教科書や下着等がの散乱した中からコードレスホンを見付け、それを手にソファに掛けた。
 ケイシーも横に座ると、電話受け取り

「ご自宅で良いですか?」

 と、持ってきたバッグから手帳を取り出す。

「ああ」

 と返せばピポパポとボタンを押し、電話を差し出す。
 それを受け取り、耳にあて、長いコールを聞いていると……

「『もしもし。三笠木ですけど……』」

 電話が繋がった。

「もしもし? 俺っ。健斗だけどっ」

「『あら健ちゃん……丁度良かっ』」

 友美の声がそこで途切れ、代わりに怒声が響いてきた。

「『ちょっと! お兄ちゃんいつになったら帰ってくんの!? っていうか、早く帰ってこい!』」

「おー、友梨か。お兄ちゃんがいなくて寂しいのか?」

 冗談混じりに言う俺にケイシーは柔らかく笑い、横から抱き締めるようにして身を預けてくる。

「『べ、別にお兄ちゃんがいないからって代わりに枕なんか抱き締めてないしっ!』」

 俺、そんなこと一言も言ってないんですけど。

「『友梨はただ、お兄ちゃんが友梨にドピュドピュできなくて泣きながら虚しくシコシコしてるんじゃないかって心配で……あ、そう! 心配してあげてるんだからっ! 四六時中友梨の頭に出てくんな! 変態っ! お兄ちゃんのことを考てるこの無駄な時間、どうしてくれんの!?』」

「いやいや、俺に言われても……」

「『ちょっ、ちょっとまだっ……』」

 電話の向こうの友梨の声が遠ざかっていくのを聞きながら俺はケイシーの肩に手を回して抱き寄せて間もなく

「『けっ、健ちゃん? あのね? 丁度今、早苗ちゃんが来てるから、ちょっと待ってて』」

「早苗が?」

 疑問を返す中、電話の向こうで僅かな暗転。
 そして再び声が聞こえてくる。

「『もしもし健斗?』」

「さ、早苗っ……」

 何故だろう。
 早苗の声がとても懐かしく思える。
 モヤモヤが晴れっていった隙間に、ピタっと嵌まってくるような充足感が、その声にはあった。

「『健斗っ……』」

 その後に続く沈黙……。
 目に見えない。
 何も聞こえない。
 それなのに、その沈黙の中でしっかりと繋がり合っている。
 そんな気がする。
 長かったのか短かったのか、それさえも曖昧な不思議な沈黙は、早苗の衝撃の告白によって消えていく。

「『私……妊娠したよ……』」

「……は?」

 一瞬、時が止まった。
 二の腕にすりすりと頬擦りしていたケイシーも、急に変わった俺の声色に顔を覗き込んでくる。

「『だから、妊娠したの……。健斗と私の、子ども……』」

「俺の子……? 妊娠……? 本当なのか……?」

 それを聞いたケイシーまでも驚愕に駆られ、表情を強ばらせている。

「『間違いないって。まおー様の子どもを宿した“証”があるんだもん』」

「証? 何だ、それ……」

「『え? しっかりしてよ……まおー様の子どもを宿したら、その証がアソコの上に出るでしょ?』」

「あ、ああ……突然だったからちょっと混乱してるんだ……」

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