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魔堂戦記
官能リレー小説 - 戦争

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魔堂戦記 16

「ひぎれちゃう、ひぎちゃう!」
頬が限界まで引き伸ばされ口元の端から血が滲み始めるが九尾は睨んだまま。
「裏切るのはまだいい。ならせめてその直前まで幸せであったと思わせろ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その台詞にどんな意味が込められていたのかは、側にいただけのミリファは、わからない。ただタケルの瞳が悲しげに揺らぐ。
「ふん、これだから子悪党だというのだ」
「すまん」
タケルは溜息を漏らしつつ腰の鞘を撫でる。よく見れば朱色の鞘には複雑で見事な装飾が施されてるが、半分しかない。残り半分はまだ書き込まれてない。作りたてのようだ。もしくは―――――。
「ほら、往くぞ」
九尾が先導するように歩き出す。その歩みは不安など感じさせない立派だけど位置は知らないはずだ。
「あ、待ってください」
先を行く九尾を追いかけたミリファは、すれ違い様にタケルを見る。彼は唇を血が流れるほど噛み締め、呪うような泣く寸前のような顔をしていた。


「ここです。私達の神が住まう場所は」
「社でも建てておるかと思ったらただの洞窟ではないか」
三人がやってきたのは山脈の中腹にある巨大な洞窟だった。中に広がるのはかび臭い岩壁ではなく鍾乳洞の水晶の群れ。この中であの蛇体が傷つかないなと思っていたら向こう側からやってくる人影があった。
「・・・・・・・・・誰かと思ったらミリファ。お前か。・・・・それに奇妙な連れも一緒のようだな」
洞窟の中から現れたのは一人の美女だった。血のように赤い髪は足元まで伸び、纏っているのは蛇鱗模様の布を編み合わせた砂漠の民族衣装のような服装。突き上げる豊かな胸元とは対照的に、その顔立ちは涼やかで朱色の蛇眼はタケルと九尾を注意深く見つめている。その淡い唇の端から蛇のように割れた舌が覗く。
「この人達は・・・・・」
「私の敵だ」
神の断言にミリファは戸惑い、九尾は楽しげに唇を舐める。タケル――俺は瞳を凝らす。体内の魔力を瞳に集めこみ、そして閉じたまま会話する。
「何故、敵なんだ?」
「お前達―――いや、お前が不愉快だからだ」
「・・・・クッ」
俺は思わず笑い出すのを堪えきれない。オレの口元に浮かんだ笑みを怪訝げにする蛇神に九尾は忌々しそうに顔を背ける。

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