PiPi's World 投稿小説

魔堂戦記
官能リレー小説 - 戦争

の最初へ
 16
 18
の最後へ

魔堂戦記 18



「ここです」
ミリファの案内でやってきたのは最初に蛇神と遭遇した山の反対側だった。
「ここは?」
「我の住処の一つだ。ミリファここにこいつらを連れてくる必要があったのか?」
「我が主様、そういう面倒くさがりなせいでこういう状況になってることに気づいて反省してください。この方々は私達を助けに来てくださったのですよ」
「……妾は、もっとう助ける気なんぞないがのぅ」

売り言葉に買い言葉。
 九尾の呟きに、蛇神は苛立ちを浮かべ、巫女は必死に取り繕う。三人の関係を横目に、タケルは目の前に広がる絶景ー―否、地獄絵図に呻いた。

「なんだ……これは……!」
「これが人間の強欲が為せる地獄よ」

屍山血河。目の前に広がる崖から地平線の彼方にある河川まで赤い色に染めていた。
それは全て人間の血と肉と骨の残骸。
 風に運ばれた腐臭にミリファはえづき、九尾は、ふん、と鼻を鳴らす。
 きちっと音を鳴らして柄を握り締め、タケルは蛇神に尋ねた。

「これはあなたが?」
「まさか、人間の欲望の業だと言ったであろう。ほれ、あれの仕業よ」

 蛇神が指差す先には真紅の大地の中に、違和感を覚えるほどの奇妙な一点がある。ゆらゆら、と揺れるそれは霊魂の蒼炎を迸らせる白銀の鎧だったであろう――真紅の鎧だった。一寸も動かず、ただ座り込んでいる鎧は、しかし、見てるだけで心臓を圧迫させるほどの存在感を匂わしている。

 見覚えが無い――しかし、その波動はどことなくタケルの鞘に似ている。あらゆる要素を混ぜまくって作り出した濁った結晶。
 蟲毒の法。友食い、奪い合い――それらによって鍛えられ、生み出された【異形の存在】

「―――鵺か」
「わし達は……キマイラと呼んでおる……人も獣もそれ以外もすべてをくらう大食いよ……実際、わしも喰われかけた」
「誰が作ったのだ、あのような馬鹿を」
「知らん……、だが、あいつはここにいるのが問題……」
「そうだな。確かにあんなもんがいたら、食べ物どころかあいつの垂れ流す瘴気で生き物全部が狂っちまうな」
  どうしようかな、とタケルは頭をぼりぼりかく。

「一度挑んで見た時はどうだった?」
「しゃれならんかった……毒も雷も全然きかんし早く固く強い。人型のままでわしの腹をぶち破られた……」
 
その頃を思い出したのか、ブルリと体を震わせる翼蛇。


,
の最初へ
 16
 18
の最後へ

SNSでこの小説を紹介

戦争の他のリレー小説

こちらから小説を探す