世紀末を生きる女傭兵部隊 3
ライカと呼ばれたその女性はまじまじと奴隷少女を見つめる。
「よう、囚われのお姫様。早速だがあんたには二つの選択肢がある。因みに逃げるというのはオススメしない。あたしらは別に追いかけたりしないが裸で一人外を彷徨けば放射能で変異した狂暴な化け物に無惨に喰われるか、こいつらみたいな連中にまた拐われるだけさ」
そばにあったレイダーの死体を踏みにじりながらポケットからタバコを取り出す。
「後あたしらは正義の味方じゃない。どちらかと言えば足元に転がってる連中と似たようなもんさ。違いがあると言えばあたしらは傭兵みたいなもん、依頼があるか喧嘩を売らなければ比較的大人しいのさ」
そう言うとタバコに火を付け、一服するライカ。
「で、一つ目は仲間を殺され辱しめを受け絶望して死にたいなら今すぐ楽にしてやる。安心しな、痛みは一瞬だ。」
腰のホルスターから拳銃を抜くとそれを少女の眉間に向ける。一瞬ビクリと震えるが直ぐ様銃口を上に逸らす。
「そして二つ目は……あたしらに付いてくるか。付いてくるなら最低限の衣食住はやる。その後は審査してあんたにぴったりの仕事を受けてもらう。もちろん拒否権はない。さぁ、どうする?」
「………んー、ふぅー!」
「ん?あぁ悪りぃ、これじゃ答えが聞けねぇな」
ライカは猿轡をナイフで切って外した。
「それで……どっちがいい?」
「お……お願いします、まだ死にたくありません。なんでもしますから助けて下さい」
「よーしわかった……皆聞けぇ!!こいつは今日からうちのメンバーの一員となる!!手荒な真似はするなよ!!」
「「「おーー!!!」」」
可愛くも威勢のいい声がシェルターに響く。ライカは少女の拘束を解くとその場を離れて外へと出ていった。すると少女の前にアーマーの手が差し伸べられた。
「そういえばあなたの名は?」
「あ……アニータです」
「そう……ようこそアニータ。傭兵ギルド『ハーメルン』へ!」
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『アメリア遊園地』
戦前、国の名前を持つこの巨大遊園地を知らない人間は誰もいなかった。全長6kmの瓢箪型の敷地で周りは堀と10mもある中世の城壁のような壁で仕切られており、中は最新のアトラクションで整えられていた。当時は年間数千万人が訪れて超合衆国側の国ならフリーパスも貰える正に国の顔とも言うべきテーマパークだった。
しかしそれも昔の話、戦争後は廃墟と化し数十年前に傭兵ギルド『ハーメルン』の拠点となった。
敷地内では廃材でできたバラックがあちこちに建てられそこでは約200人の女達が暮らしていた。その大半が兵士であり、残りは炊事や農業など彼女達のサポートに回っていた。
その中の一つ、駐車場に建設された大型車庫。そこでは今まさにトラックからレイダーから奪った荷物が下ろされていた。
「ねぇー、武器類って弾薬と一緒だったっけ?」
「違う違う!武器は三番、弾薬は四番倉庫だよ!」
「見て見て!缶詰めの飴があったよ!」
「いいね!後でシェアしよ!」
「バッテリー見つけたけど何処に置けばいい?」
「その辺に置いておけばエンジニアが勝手に持っていくんじゃない?」
そんな中車庫の隅で金髪ツインテールの少女がパワーアーマーを着た人間と話していた。
「お疲れシオン。どう?修理したてのパワーアーマーの着心地は?」
「そうね、少し右肩の間接部に違和感があるけど特に問題ないわ」
「OK!じゃあ脱がせるね!」
ツインテールの少女はバックパックの装甲の一部をめくると現れたスイッチを押す。すると背部がバシュウッ!と音をたてて開いた。
そして中から出てきたのは艶やかな黒髪を持つ少女だった。ちなみに胸は二人共豊満である。
「ふぅ……流石はリーシャね。発掘当初はあんなにボロボロだったパワーアーマーをここまで修復するなんて」
「そうでしょそうでしょ!もっと誉めてもいいよ!」
胸を反らし鼻高々になるリーシャ。
「ところでこの後は?」
「そうね……後は団長に報告したら特に予定はないかしら」