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参謀ディオン・ファントスの一生
官能リレー小説 - 戦争

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参謀ディオン・ファントスの一生 7

思わず宰相とマクシアム伯は顔を見合す。
突拍子も無い事をまた言い出した大公であるが、これはまた妙手であった。
自分に非難を向けさせて、講和の不満を抑えようと言う訳だ。

少なくとも非難された所で大公を辞めさせられる事等無いし、相対的にアルベルトの声望が上がるので大公家に対する支持は揺るがない。
何というか馬鹿なのか天才なのか掴めない人であった。

こうして公国は使者を送り、講和が成った訳だが・・・
この件でアルベルトと軍の支持や名声はは否応なくも上がった。
しかし、それを演出させた首脳部の駆け引きは表に出る事は無かったし、そして何よりディオン・ファントスと言う名前が表に出る事も無かったのである。

彼の名が世に出るのはまだ少し先の話であった・・・



そして再びアルティレニア帝国、帝都グリヴィア・・・
帝城ノーラ・グランデは広大で皇族達の居住エリアもこの中にあるが、皇族ともなると一人ひとりが宮殿を住まいとしていた。

そんな広大な帝城であるが、レオニア二世はその即位の時・・・
身内争いの末の即位であった為に多くの皇族を処刑または追放や身分剥奪をしたので皇族がほぼいない状態になっている。
そして皇帝には現在5人の娘がおり、これが現在全ての皇族なのだ。

勿論、皇帝はまだ45歳であるので、これから子を成す事もありうるだろうが・・・
盤石な帝国にあって、この後継者問題が唯一にして究極の問題であったのだ。


そんな皇族の宮殿の一つ。
第二皇女宮殿の一室にソフィーリアがいた。
ふくれっ面でテーブルに突っ伏す彼女に、彼女そっくりで美しさと女性らしさを増したような美女が微笑みながらクッキーをテーブルに置く。

「機嫌を直しなさいなソフィーリア・・・わたくしの焼いたクッキーでもお食べなさい」
「うー・・・食べ物で釣るなんて姉様はずるいです・・・」

戦場とは打って変わって甘えるような口調。

そのソフィーリアに優しい笑みを見せるのは、第二皇女シャルロット・ド・アルティレニアである。

シャルロットは20歳。
ソフィーリアの異母姉である。

皇帝の5人の皇女の母は全て違い、姉妹の仲は良いとは言えない。
そんな中で、ソフィーリアとシャルロットだけが非常に仲が良い。
そして、他の姉妹が既に嫁いでいるのに対して、この二人だけが独身だった。
理由は、二人共軍籍を所持してるからだ。

ただシャルロットに関しては、帝国陸軍元帥号を持ってはいるものの、戦場に出た事は一度も無い。
しかしながら後方任務に関しては非常に優秀で、ソフィーリアとは違う意味の名将だった。

「あなたの再戦の機会を奪ったのは悪いと思ってるわ・・・でも、無益な戦いはするべきでないわ」
「姉様、分かってる・・・お父様にも姉様にも全く敵わなくて自分が情けないだけだから・・・」

この講和は、シャルロットの進言があったと聞いた。

戦場では天才的な指揮を見せるソフィーリアだったが、政治や謀略と言った類はどうも苦手である。
皇帝に叩かれた尻より自分の力の無さ故の心が痛いのである。

「所詮、私なんて・・・姉様がこしらえた段取りに乗っかっていただけの馬鹿娘です・・・」
「はいはい、拗ねないの」

またもや膨れたソフィーリアの口にクッキーを押し込んで微笑むシャルロット。
一瞬シャルロットを睨むソフィーリアだが、大好きなクッキーの味に頬はすぐほころんでしまう。
いくら戦場では戦女神のようであれ、年頃の娘なのだ。

「ヴァントー公爵が、ブリアム王国にあれこれ働きかけてるわ・・・」

シャルロットのその言葉に、にんまりしかけたソフィーリアも真顔になる。

ヴァントー公爵は第四皇女ミュケーの嫁ぎ先であった。
そして、高慢なミュケーの事はソフィーリアは大嫌いであったし、向こうも『筋肉女』と呼び嫌っている関係だった。

「姉様、どう言う事?」
「ヴァントー公爵家とブリアム王国は血縁関係があるわ・・・そして、オルタンス公国の隣国でもあるわね」

それを聞いてソフィーリアの顔は真っ赤になる。
自分のミスを良い事に、漁夫の利を狙おうとしていると言う事なのだ。
よりにもよって、一番嫌いな相手がである。

「皇帝陛下は好きにするがよいと仰せよ、分かるわね?」

ぐっと歯を食いしばるソフィーリア。
彼女のメンツどうこう抜きにして、帝国としては全く損が無い。

「それより興味無いかしら?・・・彼らがどう戦うか・・・どんな戦術を使うか・・・」
「ブリアム如きに負ける奴らではないわ!」

戦ったからこそ分かる。
非凡なる指揮官と非凡なる参謀があの軍にはいたと・・・
クッキを掴んで貪り、鼻息荒くそう言ってのけたソフィーリアに、にんまりとそして魅力的な笑みでシャルロットが言う。

「あなた、恋してる顔よ」
「なっ?!なななななななななななっっっっ??!!」

今度は違う意味で真っ赤になるソフィーリアであった。

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