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参謀ディオン・ファントスの一生
官能リレー小説 - 戦争

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参謀ディオン・ファントスの一生 22

ディオンの言葉にシャルロットは感心した表情、オットリオ子爵とソフィーリアは目を丸くした。
そしてアルベルトはニヤニヤと笑って見ていた。

「故に時間稼ぎ、それを見越しての帝国政府の討伐令だと思いますが、相手もそれは理解しています・・・」

そのディオンの言葉に反応したのはシャルロットだった。

「成程・・・相手から時を奪うと言うのね・・・」

相手が態勢を整える前に攻撃するのは戦術の基本でもある。
しかし基本であってもリスクによっては正解であるとは限らない訳だ。
特に帝国では兵力が多い故に、むしろ万全策の方が好まれる傾向にあったし、ソフィーリアの持ち味もそこにあった。

「はい、オルタンスから騎馬兵一千を合流させ、一気にクレフェール領内に攻め入ります・・・むしろ早ければ早い程いいです」

ソフィーリアは身震いした。
自分が欲しいのはこんな参謀だ。

「では、我々はここで大々的に兵力を召集すればいいかな?・・・四万ぐらいと言っておけばいいだろうし」
「お願いします、太子殿下」

アルベルトの言葉にディオンが微笑む。


よく分かり合っている主従である。
これは撹乱の為の大兵力召集なのだ。
この主従のやり取りにシャルロットも微笑んだ。
そしてソフィーリアも興奮を隠さずに言う。

「ならば4日で準備しよう!・・・それでよかろう?、ファントス中佐っ!」
「勿論です、これで隙を見せずに事は終わるでしょう・・・」

ディオンがそう返すとソフィーリアは立ち上がり、スカートを掴みながら、興奮のままに言う。

「これでこのドレスとコルセットからおさらばだ!・・・では、姉様っ、太子殿下っ、お先に失礼するっ!!」

貴婦人にあるまじき早足でスカートを掴んだソフィーリアが部屋を出ていく。
ビックリするような行動力だった。

「もう・・・仕方無い子ね・・・」

呆れたような言葉使いだが、シャルロットの表情は緩んでいる。
後継指名の無い皇位継承者同士だが、二人の間にあるのは普通の姉妹の感覚なのだろう。
そんな様子を興味深げに見ていたアルベルトがシャルロットに向かって言う。

「我が軍はファントス中佐を指揮官とし、ソフィーリア皇女殿下の指揮下とする事で宜しいか?」

「ええ、こちらこそソフィーリアを宜しくお願いします、ファントス卿」

アルベルトの言葉にシャルロットは微笑んで了承する。
そしてディオンに対して一言言付けると、ディオンも頷いて了承したのだ。

こうして不意な形ながら、ソフィーリアとディオンの指揮官と参謀のコンビが誕生したのだった。



約束通り、ソフィーリアは4日以内に軍の編成を終えてしまった。
これにはディオンも舌を巻いてしまうぐらいの見事さだった。

ディオンはカルラに命じて騎馬兵一千を編成。
ソフィーリアと共に合流地点へと出発・・・
シャルロットとアルベルトは、大々的に出兵の触れを出し、兵の編成を始めた。
しかも市場の小麦を買い占め、相場をいじった上での事だ。
これにより、四万の兵力の信憑性を裏付ける事となった。

世間の反応は、シャルロットの婚約に華を持たす為や、ソフィーリアの失地回復など、そんな理由でこの過剰とも言える兵力に疑問を持つ者はいなかった。

おおよそ四万の兵力が編成されるのに一ヶ月半・・・
それはアルバ陣営も簡単に理解できる内容であった。

帝国国民の誰もがその頃に一方的な懲罰が行われるであろう予測したのだった。


だが、そんな予測より早く・・・
帝国軍五千はカルラ率いるオルタンス騎兵隊と合流していたのだ。
あの舞踏会の日から6日目の事であった。


「あと少しでクレフェール伯領内だ」

ソフィーリアは馬上でご機嫌に言う。
周囲の側近達は苦虫を噛み潰したような表情・・・
彼らにとって大事なのはソフィーリアの安全なので、このリスクある行軍は賛成できないのであろう。

クレフェール伯領内まであと1日・・・
斥候の報告によると、余りにも高速行軍にクレフェールは大混乱であるらしい。
今まで2回の戦いに比べれば単純な作戦だが、鮮やかさは変わらない。
この時点でもう負ける要素は無いし、ディオンの仕事はほぼ終わったと言って良かった。

「レムスが見つかってくれるといいのだが・・・」

ソフィーリアが師範学校同期の青年を思い呟く。

師範学校では、独特の発想力と臨機応変な戦術は教官達からは『帝国の軍略ではない』と批判される事も多かったが、ソフィーリアは好意的に見ていた。
それ故に己の幕僚として望んだが、彼が大病を患った伯爵の補佐に実家へと帰ったのでそれは果たせずにいた。

伯爵家の凶行を聞き心痛めたソフィーリアだったが、レムスが生死不明と聞き、むしろ希望を持ったのである。
あやつなら死ぬまいと・・・


そんな思いを馳せるソフィーリア。
丁度そんな時に隊列の先頭が騒がしくなった。

「いかがした?」
「はっ、近隣の商家の者が助けを求めてまいりました」

報告しにきた兵からそれを聞いたソフィーリアは即座に『連れてくるがいい』と即答する。
罠の可能性もなきにしもあらずだが、この決断の早さがソフィーリアの持ち味である。

そして、連れて来られた男は蒼白な表情の青年であった。

「何があった?、申せ」

幕僚の一人が青年に問う。

「はいっ、いきなり我が主人の商家にクレフェール伯爵家の兵が押し入ってきたのです!」

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