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参謀ディオン・ファントスの一生
官能リレー小説 - 戦争

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参謀ディオン・ファントスの一生 19

自分が嫌いな『売女の娘』を叩き出すのにこれほど好都合な事は無い。

「後はあの無粋な筋肉脳ですわね」

ソフィーリアの事だ。
社交界が生きる舞台の彼女からすればソフィーリアは異質な存在。
当然仲良くなれる筈は無いし、そして当然のように嫌いだ。
自分の野望の為に邪魔な存在だからこそ、ブリアムを使って更に蹴落とそうとした訳だ。

しかし、ブリアム大敗でその企みも頓挫。
更に外交ではシャルロットに借りを作らされたが、だが転んでもただでは起きない・・・

巧みな政局工作で逆転させようと企らみ、オルタンスから出てきた結婚話を後押しした訳だ。
これでライバル一人を蹴落とせたと彼女は思っていた。
そして次はソフィーリアだ。

彼女を軍事的に再び失敗させておきたい・・・

「あの田舎国と一緒にどこかで戦わせるのが宜しいわ・・・何か考えておかねばなりませんわね・・・」

策謀を巡らせながらミュケーは笑う。
それは後にディオンを大きな歴史の渦に巻き込む事となっていくのだった。




そんな事は露ほども知らぬディオンの方はと言うと・・・
講和を記念しての帝国主催のダンスパーティーの招待に困惑してる所であった。

メインとなるのは婚約正式発表を待つばかりのアルベルトとシャルロットのダンスだろう。
公子であるアルベルトは当然ダンスも巧みなのだが、問題はディオンだ。

正直、上手くないと言うか苦手だ。
未来の妻となるマリアンナとクレアが手ほどきしてくれたお陰で、スカートを踏まない程度には上達したが苦手な物は苦手だ。
遠慮したいのが本心だが、正式な招待状が彼に届けられた以上出ない訳にはいかない。

「ダンスが目的じゃないさ・・・お前の顔を売っておけばいいさ」

アルベルトはそうディオンに笑いかける。
この若い主君も、このダンスパーティーが自分を売り込む場所として心得ていた。
恐らく彼の器量を計ったり、田舎貴族と見下す帝国貴族やブリアム使節団に己を見せる機会と捉えてるようだ。
この辺りが彼を主君として素直に敬愛できる所だろう・・・

ならばディオンは参謀として何ができるか・・・
そう、華やかな場所も言ってしまえば戦場なのだ。

アルベルトを引き立てる事も重要だが、その場で参加者の人間模様をつぶさに見て回るのも自分に課せられた役目だろう。
ディオンをこの場に寄越したマクシアム伯やアルベルトは、多分それを求めているし、ディオン自身のステップアップの場所にもしなければいけないだろう。

「今後もこんな舞台は沢山あるんだぞ、子爵殿」
「からかわないでください殿下・・・でも、殿下の引き立て役ぐらいにはなれるよう精進します」

アルベルトとディオンは笑い合う。
こんな主従なら、どんな苦難も乗り越えれる気がしてきたのであった。



一方、不機嫌ながらそれを隠して笑顔を作ろうとしているソフィーリア。
彼女は立場上、こんなパーティーへの出席は多いし、半ば義務みたいな所もある。
苦手な方だし嫌いでもあるが、彼女にも立場がある。
しかも、今回は最愛の姉の主催であるから、粗相があってはならない舞台だ。

 加えてその最愛の姉の頼みで公国の名も知らぬ子爵とダンスを踊らねばならない……その事がまた彼女の不機嫌に拍車を掛けていた。
(だいたいファントス子爵など……聞いた事も無い……。)
おおかた公国の有力貴族の坊ちゃんか誰かだろう……ソフィーリアは思う。
つまり自分は姉の前座であると同時に接待役でもある訳だ。
(ハァ……つまらない……くだらない……こんな事をしているくらいなら戦場で指揮を執っている方が百倍良い……。)
彼女は社交界の華々しい雰囲気も苦手なら、お上品で洗練された会話も立ち振る舞いも苦手、もちろんダンスも嫌い……ただ下手ではない。
幼い頃から仕込まれてきたからだ。
ちなみに今日の彼女はいつもの軍服姿ではなくドレスを着ている。
オットリオの娘に変装した時もそうだったが、どうもスカートは苦手だ。
股がスースーして落ち着かない。
このような公式の場以外では勘弁願いたいものである……。

 その頃ディオンはというと、グラス片手に会場の人々の観察をしていた。
彼は人を見抜く目に関してはお世辞にも達者とは言えなかった。
だが帝国内にも派閥があり一枚岩ではない事だけは何となく解ってきた。
だがそれ以上の事はサッパリだ……。
(う〜〜ん……戦場のように隊ごとに違う服を着ててくれれば判りやすいんだけどなぁ……。)
……などと有り得ない都合の良い事を考えていると、一人の帝国軍人が彼に歩み寄って来て言った。
「失礼、ファントス中佐殿ではございませんか。」
「はい、あなたは……。」
ディオンは彼に見覚えがあった。
今回の戦争で帝国の観戦武官として陣営にいた……名前は確か……。
「オットリオ子爵と申します。」
思い出す前に先に名乗られてしまった。
「え、ええ……オットリオ子爵殿、もちろん覚えてましたよ。」
「ハハハ……これは有り難い。それより聞きましたよ。ファントス殿も子爵に叙任されたそうで……おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「実はファントス子爵殿にダンスのお相手をしていただきたいお方が……。」
「僕に……?」
「はい、あちらのお方でございます。」
そう言ってオットリオ子爵が指し示した先には一人の美しい貴婦人が浮かない顔でたたずんでいた……。

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