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参謀ディオン・ファントスの一生
官能リレー小説 - 戦争

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参謀ディオン・ファントスの一生 18

特に勝ち戦と言う事を考えれば、国民も失望するだろう。

「どう思う?、ファントス子爵殿」
「からかわないでください殿下・・・飲まざるを得ない条件ですが、そのまま飲むには辛いですね・・・」

茶化すようなアルベルトの口調に赤くなるディオンだったが、軍人の彼でもこの条件をそのまま飲むのはできないと分かる。
だが、同時にオルタンスに戦争を継続する力が無いのも分かっていた。

「ああ・・・何か考えろと言う事だろうさ・・・帝国も我々を品定めしてるのだろう・・・」

流石にアルベルトは事態を理解してるようだ。
この辺りの政治的センスはディオンも素直に尊敬する所だった。



そして、帝国の控えの間。

「どうするのかしら・・・彼らは・・・」

第二皇女シャルロットはお茶を優雅に味わいながら微笑む。

「姉様っ!、勝者に対して余りにもひどい処置ではありませんかっ!」

ちょっと怒り加減の第三皇女ソフィーリアが珍しくシャルロットに食ってかかってきた。

「確かに勝者には酷い条件よ・・・でも彼らは勝者ではないわ」

あの鮮やかな勝利はオットリオ伯から全て聞いている。
ただ、ソフィーリアが完全に軍人思考なのに対して、シャルロットの思考は政治家そのものだった。

つまり、あのシルニア河会戦は前哨戦で、これこそが本戦なのだ。

「さて、貴女は一つ仕事をしてもらうわ・・・交渉の後の晩餐会でね」
「ふえっ?!」

ソフィーリアはあまり社交界が得意では無い。
むしろ苦手だ。
できるできないではなく苦手・・・
故に軍人の道に身を投じた訳なのだ。

姉の言葉に目を白黒させるソフィーリアを、シャルロットは楽しそうに見つめるのだった。


「失礼しますシャルロット殿下」
「オットリオ卿ね、入って」

控えの間にオットリオ子爵が入ってくると、シャルロットに手紙を渡す。
それを一読してシャルロットは微笑んだ。

「いい条件ね、気に入ったわ・・・アルベルト・ヨヒアム・ファン・オルタンス・・・実に気に入ったわ!」

彼女の笑みにソフィーリアは怪訝な顔をするが、シャルロットは楽しそうに笑ったのだった。

そして数日後・・・

「全くもって、我が国も助かりました・・・」

心からホッとした表情でネルフィス卿が言う。
この日、オルタンス公国とブリアム王国の和平が正式に調印された。
条件は、帝国案の通り。
関税を倍に引き上げる事で両者は合意したのだ。

「いえ、我が国もそれに足りる利益を得ておりますから」

そう笑うはアルベルト。

確かにオルタンスにとっては最低な条件ではあった。
しかし、彼は帝国とある事を取り交わしていた。

アルベルトとシャルロットの婚姻である・・・

これによってオルタンスは帝国との結びつきが強くなる利点がある訳だから、メリットが大きい。
反面、帝国には利益が薄い婚姻だけに、これはある意味外交勝利だった。

恐らく、この後の晩餐会のメインは、アルベルトとシャルロットのダンスであろう・・・

そしてもう一人、ダンスを姉から命じられて不機嫌なソフィーリア・・・
姉が結婚するだけでもショックなのに、姉の前座的に命じられたダンスは憂鬱だった。
祝う気にもなれない上に、誰とも分からぬ子爵と踊れと言われて更に気分は沈んでいた。

かと言って、晩餐会をぶち壊して姉の顔に泥を塗る事は彼女の性格上できない。
こうやって不機嫌でいてる他ないのであった。

不機嫌ながらもソフィーリアは、あの会戦で見事な作戦を立案した士官を思い出していた。
彼女(ソフィーリアは誤解したまま)が欲しいとシャルロットに言ってみたソフィーリアだったが、シャルロットからは『少し待ちなさいな』と意味ありげに言われたのだった。

確かにシャルロットが嫁げばオルタンスと姻戚関係となり、帝国軍に派遣と言う形を取れるかもしれない。
だからと言って姉の結婚とかは納得できないソフィーリアであった。
勿論彼女は、この後に待ち構える事態を知らないでいた。




そしてアルティレニア帝国、帝都グリヴィア。
ヴァントー公爵邸・・・

「ふふふ・・・あの売女の娘には田舎者がお似合いですわ!」

楽しそうに笑う高貴な美少女。
彼女はヴァントー公爵夫人ミュケー。
帝国第四皇女であった。

『売女の娘』・・・

これがシャルロットの宮廷での呼び名であった。
母親が踊り子で皇帝に見初められ彼女を産んだが、その母親の職と身分の低さ故にそう呼ばれ続けられていた。
勿論、彼女は宮廷で味方は殆どおらず、唯一の味方がソフィーリアであるぐらいだった。

当然ミュケーも彼女を敵対視している。
彼女の母親は皇族。
大貴族ヴァントー公爵家に嫁いだ彼女は身分だけでは最も上位だ。
その上、社交界の華と呼ばれる美貌と立ち振舞い。
男子のいない皇帝だけに、自分の夫が時期皇帝になるのを疑わずにいている。

とは言え、ライバルを蹴落とす事に余念が無い。
カルネアレスからもたらされたオルタンス公国の条件に真っ先に食いついたのは彼女だった。
大公家とは言え田舎の小国だ。
ヴァントー公爵家より財力が小さいし、帝国から見れば辺境だ。

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