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参謀ディオン・ファントスの一生
官能リレー小説 - 戦争

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参謀ディオン・ファントスの一生 17

そしてソフィーリアの方は・・・
涼やかな表情のディオンに注目していた。
なんと言う知謀・・・
このような戦術を組み立てる者を彼女は初めて見たのだった。

「欲しい・・・」

彼女は微かな声でそう呟いたのだった。



その頃、オルタンス公都リューベルク・・・
マクシアム伯邸の一室。

ベッドに横たわるマクシアム伯と隣に座る大公・・・
ここ近年、マクシアム伯は体調を崩す事が多く、それ故に前回も今回も前線指揮を取らずにいた。
勿論、彼の後継者が育ってきたのもあるが・・・

「恐らく、じきに帝国から講和の使者が来るじゃろうな・・・」
「左様、我が国に不利な条件での講和になりましょうな」

見舞いと称してやってきた大公だが、その目的はこれだろう。
実の兄弟であり、最も心許せる優秀な部下。
2人で25年、こうやって国を運営してきたのだ。

「今回も拒否できぬのじゃなぁ・・・」
「残念ながら、我が国の国力では・・・」

大公はため息混じりに天井を見上げる。

痛いほど分かっている。
オルタンスの国力でブリアムとの戦争すら負担なのだ。
長く続けば国家経済を損なう。
故に帝国から講和斡旋があるだけで喜ぶべきぐらいなのだ。
勝ち戦で不利な条件で講和しなくてはならない悔しさはある。

「それで、兄上・・・お認め頂けますかな?」
「お主も太子もあの者をいたく買っておるのぉ・・・」

大公は再びため息。

「マリアンナまで心奪われておる・・・儂はどこが良いのかさっぱり分からぬが・・・」

そう、もう一つの問題はマクシアム伯の体調・・・
既に公務に支障をきたす程弱っており、彼は自分の娘クレアとディオンを結婚させて伯爵位を譲って引退する意向なのだ。
それも大公にとって痛い話だが、アルベルトや周囲からマリアンナもディオンの妻にとの声が上がり父親として複雑な心境なのだ。

「我々が国家を担ったのは太子と同じ年頃でしたな・・・」
「ああ、そうじゃったな・・・」

マクシアム伯の言葉に頷いて考えこむ大公。
彼は決して馬鹿ではない。
マクシアム伯の言わんとする事は分かっていた。

「講和の批判を儂の首と引き換えにするか・・・」

大公を見ながらマクシアム伯は弱い笑みを浮かべる。
無念であろうが良い判断だ・・・
小国が生き抜く為には己の地位を捨てねばならない事もあるし、血筋だけにこだわっていられないのもある。

「太子にとって、あの者がそなたのようになってくれるのを祈るばかりじゃな・・・」
「私以上になりますよ・・・いや、私と兄上以上になりますな・・・」

笑い合う二人・・・
それは長年を共にしてきた兄弟、そして主従だけにできる共感であったのだ。


大公とマクシアム伯の予想通り、シルニア河会戦の数日後に帝国より特使が到着した。
やはりそれはブリアムとの講和の特使だった。

 これは実に絶妙なタイミングだった。
まずオルタンス公国は先に述べたように小国ゆえに戦争を継続させられるだけの軍事力が無い。
一方、経済的に豊かなブリアム王国は軍事力の方はまだまだ充実しているのだが、シルニア河畔の戦いでの大敗を受けて国民の間から休戦講和を求める声が高まり始めていた。
商業国家ブリアムはその国柄ゆえか国民の発言力が強い……すなわち王政といえど民意を無視できないのである。
つまり両国政府とも内心では戦争を止めたがっていた……そこへ帝国が仲介に名乗りを上げて来たという訳だ。

 それから約一ヶ月後……アルティレニア帝国領内の地方都市カルネアレスにて講和会議が開かれ、オルタンス、ブリアム両国の全権代表団が顔を揃えた。
このカルネアレスは自然が豊かで気候も良く帝国では避暑地として人気の地、皇帝の夏の離宮や貴族達の別荘が多くあった。
そのオルタンス側の全権代表団の中に我らがディオンの姿があった。
本来であれば一介の軍人に過ぎない彼が政治の場に顔を出すのもおかしな話だがマクシアム伯が「後学のために行ってこい」と話をつけてくれたのである。
勿論、会議に出るだけの地位が不足した彼には、マクシアム伯相続人として『子爵』の地位が与えられていた。
そして会議からの帰還後にはマリアンナとクレアとの結婚も決まっていたのである。
オルタンスの正使はアルベルト太子。
彼が正使なのも国際舞台にお披露目と言う側面があった。

ブリアム側は外務卿ネルフィス男爵。
平民から叩き上げの政治家であり、やり手として有名であった。
恐らく帝国とのパイプがあるものの、大敗のせいで難しい交渉になると踏んでいたのだろう。

そして、仲介としての帝国正使は第二皇女シャルロット。
皇族をこの交渉に持ってきたと言う事は、帝国も本気で講和をさせる意向とも言えた。

このような形で、外交と言うもう一つの戦いが始まったのであった。


「しかし・・・微妙な条件だな・・・」

アルベルトは控えの間で苦笑する。
その講和条件は、オルタンスの輸出関税をほぼ倍額で締結して和睦と言うものだった。
これはブリアムの初期条件よりはいいものの、オルタンスにとって楽な数字ではない。

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