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参謀ディオン・ファントスの一生
官能リレー小説 - 戦争

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参謀ディオン・ファントスの一生 14

全てを吐き出しても抱き合い続ける二人・・・
ディオンが少し甘えるような口調で言う。

「出撃まで来ていいですか・・・」
「ええ・・・好きなだけしてもいいわ・・・」

恐らく、多くの男女が身体を交合わせるだろう、出撃まで・・・
今生の別れになるかもしれないのだ・・・
故に男女は燃え上がる・・・

リディアもディオンを送り出すまで、その身体を開こうと彼を抱きしめながら思うのだった。




そして一ヶ月後・・・
オルタンス、ブリアム両軍はソドス地方のシルニア河を挟んで対峙していた。
ブリアム軍は約8千。
1万は流石に動員できなかったようだ。

河の対岸でブリアム軍は布陣。
先陣は重装傭兵隊が3陣約4500名。
中陣は軽装傭兵隊が2陣約2000名。
後陣は国軍が1陣約1500名。
これは『ブリアム三角陣』と呼ばれる伝統的な布陣だ。

そして先陣に見える鉄砲防盾。
傭兵隊は鉄砲装備がないが、この盾で肉薄し乱戦に持ち込む戦術だ。

対するオルタンス軍は、3000の銃装歩兵を3隊横列に配置。
その後ろには砲兵隊80門。
大陸でも例を見ない重火力編成は先の戦いと同じだ。

「ふむ、相手はかなり熟練の傭兵団を集めたようですな」

本陣の幕舎でそう言ったのは帝国陸軍中佐オットリオ子爵である。
彼は妻と娘を連れての観戦であった。
その妻と娘も本陣幕舎におり、野外用とは言えドレス姿の2人の女性は場違いですらあった。

「先陣にはドヴァルス傭兵団、中陣はツヴォアール傭兵団・・・勇猛さは我が国でも鳴り響いてますな・・・」

全く鳴り響いていない口調でヴェルナー大佐が言う。
この動じない老将は今回も司令部に落ち着きを与えるような存在だった。

「騎兵隊がいませんわ・・・楽しみにしてたのに・・・」

この時、不機嫌な表情に見えた子爵令嬢がそう言う。

「我が国とこの国では編成が違うのだよ」
「ええ、我が国は帝国程に良い軍馬は産しませんからね、お嬢さん」

娘をなだめるような口調の子爵とフォローするアルベルト。
それを横目で見ながら、ディオンは野戦図に目を落とした。

子爵令嬢(実はソフィーリア皇女である)は、その場に居合わせた幕僚幹部達の顔をざっと見渡し、小声でオットリオ子爵に話し掛ける。
「……どうであろうか子爵? この中に居ると思うか?……。」
「……先のアカリネア会戦での…あの作戦を立案した人物…でございますか?……。」
「そうだ……。」
子爵は少し考えてから答えた。
「……可能性としては、ヴェルナー大佐……もしくはアルベルト太子でしょうか……。」
「……うむ、そなたもそう思うか……。」
二人が目星を付けた人物の中にディオンはいなかった。

 実はソフィーリアは考えていた……もしもヴェルナーならば帝国に招聘し、作戦参謀として自分の陣営に引き入れたい……。
だがアルベルトならばそれは無理な話だ。
いくら皇女と言えども一独立国の太子を部下として使う訳にはいかない。
オルタンスが帝国の属国になったというのであれば話は別だが……。
(これではミュケー達と利害が一致してしまうな……。)
ソフィーリアは思わず苦笑する。

 一方、アルベルトたち幕僚の一部は子爵令嬢の正体を薄々感づいていた……というかぶっちゃけ気付いていた。
アルベルトやヴェルナー大佐は過去に参加した国際的な会合の場で何度かその顔を見た事がある。
特に司令部構成メンバーのうち前回のアカリネア会戦時にいた者ならば全員が会戦後の講和会議および夜会において皇女の御尊顔を拝謁する機会に恵まれていた。
当のソフィーリアは黒髪のかつらをかぶり言葉づかいも変えて本人は上手く変装して別人に成りすましているつもりらしいが……誰の目から見てもバレバレである。
それで誤魔化せた気になっているのだから……浅はかというか……可愛いものというか……。
それを踏まえた上でアルベルトはヴェルナーとディオンに小声で言った。
「二人とも解っているとは想うが《お姫様》も御観戦の事だ。ここはサクッと勝とうじゃないか。」
「ふぉっふぉっふぉっ……ですな、殿下。」
笑って応えるヴェルナー。
ところが……
「……はあ? 殿下、失礼ですが《お姫様》なんてどちらにいらっしゃるんですか……?」
「……。」
「……。」
これにはアルベルトもヴェルナーも言葉が無かった。
どうやらソフィーリアは一人だけは上手く騙す事に成功したらしい。
「いるんだよなぁ……ちょっと髪型や服装が変わっただけでもう別人と認識してしまうヤツ……。」
「まあまあ……ファントス中佐らしいではないですか。とりあえずここは中佐には黙っておきましょう。」
「むぅ、なぜだ大佐……?」
「中佐が令嬢の正体が皇女殿下だと知って、それで作戦の判断に影響したら困りますからな。」
「ほう……此度の戦い、それほど絶妙な判断を求められるか?」
「……はい、少なくとも前回同様……いや、ひょっとすると前回以上に難しい戦いとなるやも知れません……。」
「なるほどな……。」
そういう事ならディオンには事が全て終わるまで黙っていた方が得策、とアルベルトは考えた。
それに……後で事実を知って慌てふためくディオンの顔を見るのも面白そうだ。
「あ〜の〜……お二人とも先程から何をブツブツと言っておられるのですか?」
「……いや、済まない。何でもないよ、ディオン。」
「さぁーて、そろそろ戦闘開始じゃな!」

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