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参謀ディオン・ファントスの一生
官能リレー小説 - 戦争

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参謀ディオン・ファントスの一生 11

「その口ぶりですと、受け入れるつもりですな叔父上」

アルベルトがそう言い笑うと、マクシアム中将も笑う。

「観戦武官はオットリオ子爵、軍位は中佐だな・・・妻と娘を連れての観戦だとか・・・」
「それは物味遊山ですかな」
「全く、帝国も呑気なものだ!」

会議場が笑いに包まれるが、アルベルトは思案顔であった。

「オットリオ子爵は『誰に』近い人物でしょうな?」
「第二皇女の側近との噂だが・・・受け入れには問題なかろう」

断片的ながら公国でも帝国の情報は持っている。
この第二皇女は母親の身分が低く、後継者レースからは外れているとの噂だが第三皇女と同じく元帥号を持っている事。
軍功は特に無いが、皇帝からは信頼されている事は公国でも掴んでいる。

もしかしたら皇帝からも密命を受けている可能性もあった。
当然、そんな観戦武官を受け入れれば戦術まで見られてしまうが、マクシアム中将は問題にもしてない様子だった。

「そもそも強大な帝国相手に戦術的勝利は多少できたとしても、戦略的には負ける・・・故に多少見られた所で大勢に影響はないのだ」

苦笑混じりにそう言うマクシアム中将。

「むしろ見て貰って我らが手強いと思ってもらえればよいのだ」
「成る程、ならばおもてなしせねばならんな」

マクシアム中将が続けてそう言うと、アルベルトが応える。
そして中将は最後にこう言った。

「今回の迎撃軍司令官、太子にお願いする」
「了解した、叔父上」

「副司令はヴェルナー大佐、参謀にファントス中佐」
「承知した」
「はっ!」

司令官アルベルトに老将ヴェルナーか副司令、参謀ディオンは帝国軍との戦いと同じだ。

それ以外の部隊長は、歩兵隊長シェルター少佐、騎兵隊長キャバリエ少佐(カルラ)、工兵隊長リドリ少佐、砲兵隊長モーファイム大尉(少将の娘)、補給隊長カーランド大尉・・・
そして、ディオンが今回提案して部隊化した参謀直属の諜報隊の隊長として、エミリア・フォートネス大尉が任じられる事となった。


それ以外の変化としては、砲兵隊が組織化され大隊としての編成となった事。
故にモーファイム少将の娘である、ユリア・モーファイム大尉が隊長として赴任していた。
砲兵小隊だった時の隊長、イリーナ・アーティラリー中尉はディオンの副官として参謀付きに配置転換。
これは砲撃戦を主体とする編成故の措置だった。

殆どアカリネア会戦と同じ編成であり、公国軍でも優秀な指揮官を集めた精鋭であり、これで負ければ後が無いとも言える編成だった。

「この一戦の勝利は、各自が責任を果たせば得られる!・・・各自、奮闘せよ!」
「「「はっ!!、公国に栄光あれ!!」」」

アルベルトの言葉で会議はしめられ、公国軍の編成は滞りなく完了したのだった。


会議が終わり、ディオンはモーファイム少将の執務室にいた。

「今回もしっかりと頼むわね、ディオン」
「はいっ!、リディア先生!」

ディオンが先生と呼ぶのは、彼が十歳で入学した士官学校幼年部の時の教官が、このリディア・モーファイム少将であったからだ。

当時の彼女が見たディオンは小柄で女の子のようで、全く軍人になれるようには見えなかったのだ。
無論、身体能力も同学年で最低。
身体も弱く病気がち。
だが、その利発さは群を抜いていた。

そんなディオンをリディアは公私に渡り世話を焼く事になり、ディオンは無事に士官学校高等部へ・・・
彼女は軍に戻り、士官学校を卒業したディオンが副官として赴任。
上司と部下の関係となったが、相変わらずディオンの中ではリディアは先生なのであった。

「それと、結婚を真剣に考えなさい・・・みんな心配してるのよ」

そう諭すように言うと、ディオンは拗ねたような表情になる。

「なら、先生がお嫁さんになってください!」
「何を馬鹿な事を・・・若いいい娘さんが沢山いるでしょ」

因みにディオンにとってリディアは初恋の人であった。
まだその淡い恋心を持ち続けてる程に純情なのだ。

そんなディオンにリディアは困った顔をする。

アルサス大陸では伝統的に年長の女性が少年の筆下ろしをする習慣がある。
それは身内であったりごく近い関係者が行うのが通例だった。

リディアは幼年部教官であった頃に、身体が弱く華奢なディオンと『高等部に進級できたら何でも言う事を聞いてあげる』と約束した事があった。
それは軍人向きでない少年ではあったが、戦略戦術に非凡な才能を見せる彼を何とかしようと発破をかけた訳だが・・・
見事高等部に進級した彼から出た言葉は『僕の初めての人になってくたさい』だった。

リディアは戸惑いながらも、伝統的な習慣もあってディオンに身体を許したのだった。


リディアもディオンとの最初は鮮明に覚えている。
小柄で華奢な美少年。
彼の幼年部でのあだ名は『姫』だった。
勿論、伝統的に女性士官の多いオルタンスでは士官学校でも女学生は多いのだが、彼女達の誰もがディオンより男らしいぐらいだった。


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