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いざ立て戦人よ
官能リレー小説 - 戦争

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いざ立て戦人よ 7

「そうですか。良かったぁ…」
少女の無事を聞いてホッと一安心するエルンに少佐は言った。
「すぐに会えるわ。というかこれから嫌というほど顔を合わせる事になると思うけど…」
「はあ…?」
「ところで君、ご両親は…?」
「あ…僕、独り身なんです。両親は僕が幼い頃に亡くなってて…」
「そうだったの、ごめんなさい……でもそれは好都合ね」
「は…?」
少佐の言葉の端々からエルンの頭に次第に嫌な予感が浮かんできた。
「あのぉ…まさか僕に『戦人のパイロットになってくれ』なんて言わないですよね…?」
「あら、先に言わないでちょうだいよ」
(ちくしょう!やっぱりか!)
もうあんな怖い目に遭うのはゴメンである。
「より正確を期して言えば『なってくれ』ではなく『なれ!』よ」
「め…命令ですか!?僕は民間人ですから軍の命令に従う義務は無いですよ!拒否します!」
「そうはいかないわ!なぜなら今は戦時、軍の命令は全てに優先されます。というかせっかく見つけたパイロット候補、逃がすものですか!」
「言う事を聞かなければ力ずくで従わせるんですか!?嘘の報道で国民を欺き、しかも敵の攻撃から市民を守れなかったくせに・・・!あんたら軍が不甲斐ないせいで僕の幼馴染みのエミリーは死んだんだ!」
勝手な少佐のやり方にエルンは軍への不満を爆発させた。
エミリーやおじさんたちは軍がしっかりしていれば助かったかも知れないのだ・・・。

パシィッ!!!!

次の瞬間、乾いた音が室内に響いた。
一瞬遅れてエルンは少佐に平手打ちを喰らったのだという事を理解する。
少佐は言った。
「悔しさをぶつける相手は私じゃないでしょう!!あの空襲で大切な人を失ったのはアナタだけじゃないのよ!?もう二度とあんな悲劇を繰り返してはいけない!そのためにも私達には戦人を操れる人間が…アナタが必要なのよ!」
「…っ!!」
エルンはハッと悟った。
「…解りました!クレイマーさん!僕、戦人のパイロットになります!」
「解ってくれて嬉しいわ!」
そして少佐は病室の外に居る誰かに言った。
「…話が付いたわ。あなた達もう帰って良いわよ。ご苦労様」
「「はっ!了解しました、少佐殿」」
病室の外に待機していた二名の憲兵は踵を返して去って行った。
(ええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!?)
エルンの決意が揺らぐ。
本当にこの人達に協力して良いのか…!?


少佐とエルンは軍用車で軍の研究施設へと向かっていた。
車中、少佐はエルンに尋ねる。
「…ところで君、幼い頃にご両親を亡くしたって事は、孤児院育ち?」
「いえ、歳の離れた兄がいまして…僕が義務教育を終えるまで親代わりになって育ててくれました。兄には本当に感謝してもし足りないです…」
「お兄さんが居たの!?じゃあすぐに安否を確認した方が良いわね!」
「いえ…兄は今エルフィーリアスには居ないので…」
「そう…それは良かったわね。で、どこに居るの?きっと君の事を心配してるわ。手紙の郵送は許可するわよ。無事だって教えてあげたら喜ぶんじゃない?」
「それが…兄は今ちょっと遠くの街の大学に行ってて…」
「どこ?国内でエルフィーリアス以外で大学のある街って言ったら…」
「…国外です…」
「まさか…!」
少佐はハッとした。
エルンは気まずそうにその名を口にする。
「はい…オルガニア帝国皇立学士院です…」
それはこの世界における最高学術機関であり、魔法、科学、そのほか様々な分野の学問の最先端が学べる学問の聖地であった。
エルンの兄はそこに居るという。
場所はオルガニア帝国の帝都…敵の首都だ。
少佐は複雑そうな表情を浮かべて言った。
「そう、お兄さんが帝国に…何か連絡は?」
「ありません…一体どうしているのか…」
エルンは力無げに答える。
「…解ったわ。今の話は聞かなかった事にします。それとこの事は他言無用よ。君のお兄さんが帝国でどういう状況にあれ、今は戦争中だからね…みんな敏感になってる。余計なトラブルを起こさないためにも…」
「もちろんそうしますよ…」
そんな話をしている間に車は研究所に到着した。

研究所は敷地全体が鉄柵によって囲まれており、所々に見張り塔まで備えられている。
ちょっとした砦のようだ。
さらに門には複数の兵士達が見張りに付いている。
その厳重な警戒は外からの侵入を拒むと共に、脱走も不可能である事を意味していた。

「ハァ〜(僕はこれからどうなるんだろう・・・)」
余りに物々しい研究所の警備にエルンは怯えて心細くなり不安に駆られる。
そもそも軍隊なんて自分とは無縁の世界だと考えていた。
今すぐ逃げ出したかったが、ここまで来てしまっては、もう逃げる事も出来ない。
そんなエルンの内心など露ほども知らないクリス少佐はエルンの手を握り話しかける。
「緊張しなくて良いわよ。軍の生活も慣れたら結構楽しいわよ」
「ど・・・どういう事ですか?」
「まあ研究所に入れば解るわ・・・」
クリス少佐は優しくエルンをなだめるが、エルンの心には不安が募るばかりだった。

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