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いざ立て戦人よ
官能リレー小説 - 戦争

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いざ立て戦人よ 16



その頃、帝国領ヴァルヴァスヴァウにある空軍基地には、続々と爆撃機隊が集まって来ていた。
『ガガ…こちら第13爆撃航空隊!これより全機着陸態勢に入ります!』
「了解!管制の誘導に従って所定の位置に着陸せよ!」

「まさに壮大の一言に尽きるな…」
次々と滑走路へ舞い降りる機体を眺めてこう呟いたのは、オルガニア帝国空軍、統合戦略爆撃航空団司令官、メイル少将である。
自らも生粋の爆撃機乗りである彼は先のエルフィーリアス爆撃でも指揮を執り、多大な成果を挙げた。
そして次なる爆撃作戦で完全にエルフィール公国を屈服させるべく、着々と準備を進めていたのである。
この“統合戦略爆撃航空団”というのも、エルフィール公国への無差別絨毯爆撃を遂行するため、彼が空軍上層部に掛け合って特別に編成させた。
彼は“爆撃によって敵の都市を叩けば、敵国の生産力を削ぎ、敵国民の士気を挫ける…それは結果的に戦争集結を早める”と考えており、それは確かにその通りだし、他の空軍指揮官達の間でも共通した認識だった。
だが、それをここまで大規模かつ徹底して実践したのは彼が初めてだった。
他の将軍達は都市爆撃によって女子供を殺戮する事を躊躇ったからである。
その点、彼は割り切っていた。

メイルが部屋に戻ろうとすると、入り口に兵士達が集まっていた。
「…あ!メイル将軍が戻って来たぞ!」
「将軍!今からでも良いのでどうか転属の許可をお願いします!」
「自分は爆撃機乗りには向いてないと思うんです!爆撃隊に配属されたのは間違いだったんです!」
「お願いします将軍閣下ぁ!」
転属願の書類をメイルに突き付けて口々に言う兵士達。
メイルはキレた。
「お前ら…ふざけるな!!そんなに都市爆撃が嫌か!!」
「そりゃ嫌ですよ!いくら敵だって女子供を殺すのを好き好んでやるヤツはそうは居ません!」
「それに爆撃機は撃墜される危険性が高いし…!」
「不時着できても憎しみに駆られた敵に惨殺されます!ほんと爆撃機乗りはやってられませんよ!」
メイルは反論する。
「良く聞け馬鹿ども!!先日の爆撃で敵の防空能力はほぼ完全に奪った!!対空砲も迎撃の戦闘機も来ない!!女子供を殺すのが嫌だと言うなら、それに対する俺の答えは一つだ!!考えるな!!感情を殺し、冷酷な殺戮機械になって任務を遂行しろ!!
良いか!!俺達が敵の女子供の血でこの手を汚したとして、それで戦争が一日でも早く終わり、一人でも多くの味方の命が失われずに済むのであれば、結果として俺達の殺戮には意味があったという事になるんだ!!!」
「「「……」」」
彼の信条であった。
「解ったか!!この○○○○共め!!解ったらサッサと持ち場に戻れ!!これ以後の転属の願い出は任務放棄と見なして軍法会議にかけるからな!!」
「「「は…はいぃっ!!!!」」」
兵士達は慌てて散って行った。

部屋に戻ったメイルは部下であり戦友でもあるギア大佐を呼んで言った。
「今度の爆撃でエルフィール公国にトドメを刺すぞ」
「…という事は、前回は攻撃対象から外していた大公宮殿や議会議事堂、それに各省庁舎も爆撃するという事で…?」
「それだけではない!エルフィーリアスの街を完全に土に返す!エルフィーリアス市民は残らずローストチキンとなる運命を辿るのだ!」
「ハハハ…そいつは豪儀ですなぁ!」
だが次のメイルの言葉を聞いたギアは耳を疑った。
「…そのためにも全機、可能な限り最大量の爆弾を積み込んで行くのだ!!」
「えぇ!?そんな事をしたらエルフィーリアスまで往復する燃料が持ちませんよ!」
「だから可能な限り機体を軽くするのだ!!対戦闘機用の銃座や装甲板などは重いので全て外す!!さらに燃料を節約するため高度は1500mで行く!!」
「はあぁっ!!?しょ…将軍!!気は確かですか!?そんな低空で敵地の上空を飛ぶなんて危険すぎます!!」
「危険は承知だ!!だがやらねばならんのだ!!」
「メイル将軍!あなたとは長い付き合いですが、その命令だけはお受け出来ません!部下達をそんな危ない目には遭わせられない!」
「いや、やって貰わねば困る!!だが俺はお前達だけに危ない橋を渡らせはしない!!この作戦は俺が自ら先頭に立って指揮を取る!!」
「な…っ!!?将軍、そこまで…!!」
「この作戦で戦争を終わらせて見せる…私の固い意思だ」
「将軍……解りました!!やりましょう!!」
「おぉ!!やってくれるか!!」
二人は手を取り合い、固く握り合った…。


「第二次エルフィーリアス空襲!!?」
少佐から話を聞いたエルンは仰天した。
「…そうよ。君の幼馴染みや多くの人々の命を奪った敵爆撃部隊が再びエルフィーリアスを狙っているの。これを防げるのはもう戦人しか無いわ」
「…エミリーや親父さんを殺したヤツラが…また…!!」
エルンの握り締めた拳が震える。
ツヴァイシュタイン博士はポンとエルンの肩に手を置いた。
「良かったのう。初陣にして早々に仇討ちの機会に恵まれるとは、滅多に無い好機じゃぞ」
「仇討ち…!!」
エルンはハッとした。
「そ…そういうのじゃないです!僕は軍人として街を…人々を守る…それだけです!少佐、作戦の概要を聞かせてください!」
「ええ、あっちの部屋に将軍と作戦参謀がいるわ。そこで話しましょう」
二人の背を見ながら博士は思う。
(ほう、私情に流されぬか…感心感心。彼は良い軍人になるかも知れんのう。まぁ、それも実際の戦場で理性を保てれば…じゃがのう)

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