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征服と支配
官能リレー小説 - 戦争

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征服と支配 6

アルトは言葉が見つからなかった。まさかエルミナ侵攻軍の総司令官がそんな情け無い死に方で呆気なく逝ってしまうとは…。
「ちなみに本国では“名誉の戦死”として公表されるそうです」
「だろうな…」
そんなのと一緒にされては本当に戦って“名誉の戦死”を遂げた将兵達は浮かばれまい…。まあ当人達にとってはどうでも良い事か…。人間は死んだら終わりなのだ。
「…で、今後のエルミナ侵攻軍の総指揮は誰が取る事になるんだ?やはり副司令官のシュルツ将軍か?」
シュルツ上級大将…“猛将”と呼ばれた亡きヒスター元帥(実は単なる突撃馬鹿)とは違い、イストニア帝国の将軍にしては珍しく地味で堅実なタイプの軍人だ。これからの戦いは力押しではいけないし、まあ無難な人選と言えよう。
「…はい、ただしあくまで本国から新たな総司令官が派遣されて来るまでの“代行”だそうです」
「新たな司令官…誰だろうな?」
「それはまだ未定だそうで…」
「…だろうな。どうせ人選会議から任命式を経て着任するまで最低でも1ヶ月はかかるぞ…」
アルトは辟易した表情でつぶやいた。まあ、総司令官なんてお飾りみたいなものだ。いなくても良い…いや、むしろ下手な将軍なら居ない方が良い。
だが、彼の(というかエルミナ侵攻軍の将兵皆の)予想は見事に裏切られる事となるのであった。
しかも、どちらかと言うと悪い方に…。


ヒスター将軍の死から僅か三日後…。
ここは王都郊外の草原地帯。この草原は王都に駐留しているエルミナ侵攻軍へ物質・弾薬を補給するための輸送機の離発着に使おうと考えられており、工兵部隊により整備(まだ草を刈って地面を平らに踏み固めただけ)が進められていた。
そこにシュルツ上級大将以下エルミナ進攻軍の高級将校達が勢揃いしていた。
今日、新しく来る総司令官を出迎えるためである。
その中にアルトもいた。
「まったく…何てこった」
「まさかこんなに早く新司令官が着任されるとは…極めて異例です」
「しかも“あのお方”が来られるとはな…いくら総司令官はお飾りとはいえ…帝都の連中は何を考えてるんだ…」
そんな風に将校達がブツブツ言っているとグォーン…という爆音が近付いて着て、双発の(左右の翼にエンジンを1つずつ搭載した)軍用機が姿を現した。
「来たぞ!」
将校達は直立不動の姿勢を取る。
…とその時、誰かが叫んだ。
「…ちょっと待て!何か様子がおかしい!」
軍用機は何を思ったか突如として方向を変え、整列した将校達に向かって真っ直ぐ突っ込んで来た。
その機関銃が火を噴く。

 ダダダダダダダダダ…ッ!!!!

「うわあぁぁ〜〜っ!!!」
「ぐぁ…っ!!?」
「やられたぁ…っ!!」
バタバタと倒れる将校達。
だが…
「…あれ?生きてる…」
「…どころか、どこにも弾痕が無いぞ…?」
「騙された!空砲だ!」
一同、面食らっている所に軍用機は悠々と旋回し、当初の着陸指定場所へと降り立った。
扉が開き、中からタラップが降りて来る。
続いて姿を現したのは金モールの付いた白い軍服に身を包んだ若い女軍人であった。
ほぼ銀髪に近いブロンドの長髪を背中に流し、顔立ちは絵画に出て来る女神か妖精のように美しい…だがその目付きは鋭く、氷のようなブルーの瞳も相まって冷たい印象を与える。
また、女性にしては背が高くスタイルも良いので軍服が良く似合った。
彼女は腰を抜かしたまま呆然としている将校達を見て言った。
「まったく何という体たらく…情け無い!お前達、それでも誇りあるイストニアの軍人かぁっ!?」
彼女の名はエーディット・フォン・イストニア。
その姓が示す通りイストニア帝国の第三皇女である。
「お…皇女殿下、少々お戯れが過ぎます…本当に撃たれたかと思ったじゃないですか…」
思いっきり尻餅を突いて痛む尻をさすりながらシュルツ上級大将は苦言を呈する。
おりしも昨日降った雨のせいで地面はベチャベチャ。
高級将校達の上等な軍服が泥まみれである。
「甘いぞシュルツ!もしこの飛行機に乗っておったのが妾(わらわ)ではなく、例えば我が軍の飛行機を奪った敵のスパイなどであったならば、お前達は今の掃射で全員死んでいたのだぞ!?」
「そんな無茶な…」
「無茶という事があるものか!これが戦争だぁ!」
あぁ…大変なやつが来た…とアルトは思う。
エーディット第三皇女は“イストニアの女神”とも謳われるその美貌とは裏腹に、人間としては少々破綻した所があった。
士官学校では入学から卒業まで首席…という事に表向きはなっているが、実際は全ての教科において壊滅的な成績を記録していた。
実は彼女に限らずイストニア帝国の皇族は全員どこかしら変だ。

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