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大空の侍達
官能リレー小説 - 戦争

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大空の侍達 5


翌日…

 グオオォォォォ――――ン…

「…イィヤッホオォォ〜〜〜ウッ!!!!」
昇は柴田 綾中尉の操縦する練習機の後部座席に乗せてもらい、生まれて始めての“空”を体感していた。
『隊長殿、はしゃぎすぎです…』
綾が伝声管を通じて半ば呆れ声で言う。
「お…おう!済まない、中尉。いやぁ〜、つい気分が高揚してしまって…」
『フフフ…部隊の皆も初めて空を飛んだ時は似たような反応でした。かく言う私もですが…。しかし個人的には隊長殿には上官として相応しい落ち着きを身に付けていていただきたいものですがね…』
綾はクスクスと微笑みながら言った。
「そ…そうだな……ところで部隊と言えば、昨日から少し気になっている事があるのだが…」
『何でしょう?』
「昨日、部隊の詰め所に行った時の事だ。気のせいか、妙に女が多くなかったか…?」
『ああ、それなら気のせいではありませんよ。我が航空隊は約九割が女ですから』
「きゅ…九割!?一体どうして…?」
『それは…女の方が体重が軽いし、繊細で細かい点にも目が行くので、飛行器の操縦に適しているから…だそうです』
「なるほどな…女性の利点を活かすということか」
鎖国中の聖暦1790年ごろから行われた内政改革で、商業で力をつけた民衆をより活用しようと、身分制度が部分的に崩されていた。そうして築き上げていた基盤があってこそ、開国後わずかな期間で国力をこのように増強できた。
開国した時に、とある偶然から官庁や軍は男女問わず任用できることになり、恵や綾のような女性軍人も誕生した。
(ある意味で彼女達は厄介払いされたのかもしれんな)
昇はそう思ってもいた。飛行器はまだ海のものとも山のものともつかぬと見ている者が大勢おり、男尊女卑的な考え方もまだまだ残っていた。
不祥事の抑止と女性たちの保護の観点から、女性は女性で一部の部隊に集中して配されていることが多く、海軍は「軍艦は艦内容積の都合で男性用女性用両方の設備を載せる余裕は無い」として、女性の海上勤務をまだ認めていなかった。
頭数が必要な陸軍はそうも言っていられず比較的門戸を開いたので、女性で軍士官を志す者は陸軍を目指す事が多かった。
士官学校出の女性士官達は、まだほとんどが尉官である。
鎖国中には、国学者など人文系の学者や文化人などの一部には、師匠の下で学び、男性に伍して実績をあげられる女性学者や女性俳人も生まれていたが、軍人や理系学者ではまだ人材養成が本格化したばかりなのだ。
それらの事情もあり、昇が見かけた女性軍人達は、意欲に満ち、頭もよさそうな者が多い。
「それにしても、こうして空から見るのでは町や村の眺めもまるで違うな!田畑の数、道行く人の流れ、列車の動き、丸わかりだ!便利だな!」
ちょうど彼の目には、二両の蒸気機関車に牽かれた貨物列車が多くの貨車を引いて走っている姿が映っていた。
「そうでしょう。空から銃撃すれば、あのような貨物列車も一撃で動きを止められます」
「なるほどな!私も騎兵隊の訓練で軍用列車襲撃をしたことがあるが、振り切られたり、乗っている兵士の小銃多数で撃ちすくめられて、撃退判定されたりしたことが何度もあった!」
「飛行器の速さをもってすれば、船だろうと列車だろうと、容易く追いつけます!」
「そうだろうな!列車など飛行器から逃げる事は、隧道(トンネル)にでも逃げ込まねば叶うまい!
…しかし、いずれは軍用列車にも対空用の砲を据えてくるだろうな!飛行器に積めるのは銃か、小型の爆弾だ。一度落とせば終わりだが、だが相手は筒先を並べて何発も撃ち返してくる」
「まあ!!」
綾は驚いていた。
誰かを後ろに乗せて飛んだことは何度かあったが、昇のような返答を聞いたことが無かったからだ。
この当時、対空射撃の研究は開始されたばかりで、撃ってもろくに当たるものでは無かった。
飛行器乗りの間では、小銃ごときで撃ち返されても、空にいればそうそう当たらんと鼻息荒い者もいたが、試したわけでもないのだ。
「小銃なら数多く集められても、こちらが低空に降りなければかわせるが、大砲の射高は意外と高いからな。時限信管で炸裂の時期をうまく合わせられれば、飛行器の近くで炸裂する。そうなると…」
「あ……」

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