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大空の侍達
官能リレー小説 - 戦争

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大空の侍達 6

野砲弾などの重火砲の弾が炸裂すれば、密集していれば一個分隊くらい抹殺してしまう。ちょっとした家屋でも全壊する。
直撃ではなくても、破片多数が至近距離からくればどうなるか、綾は思い至ると同時に冷や汗が流れた。
綾の様子が変わった事に気づいた昇は、安心させるように意識して明るめの声で言った。
「だがこれも問題がある。弾道計算があまりにもややこしくなる。俺は砲兵科じゃないから詳しく説明するまではできないが、歩兵や騎兵は地面を走り回るだけ。だが飛行器は上下にも動くし、騎兵より列車より速い。これにどうやって当てる?」
「そ、そうですね」
綾があからさまに安堵した声になったので、昇も少し安心した。
「安心してくれ。まだしばらくは飛行器が撃ち落とされる事はそうそうないという事だ。その間に、こちらも対策を考えようじゃないか。それより、俺も操縦を習うわけだが、よろしく頼むよ」
「大尉、習うのは操縦だけではありませんよ。整備も学んでいただきます」
「整備もか!」
「自分で操る兵器ですから。小銃と同じです。飛行器は専従の整備士もいますが、やはり自分で用いるからには、自分でも整備できませんと最前線では何があるかわかりませんから」
「うむ!そうだな!」
「『命を預ける兵器だからこそ、大切にせよ』南房連隊長が常々仰る言葉です。早めにこの考えを身に付けておいてください」
「ああ。了解した」
それから、柴田中尉の操縦する飛行器はしばらく飛んでいた。
「この辺りは風も穏やかですし、飛行器がどのような動きをできるのか知って頂く為、少し激しい機動を行います。安全縛帯(シートベルト)をしていると言っても下手に首や手を動かすと危ないので、じっとしていて下さい」
「うむ」
少し緊張しながらも、昇はできるだけ平然と答えた。
綾は一度水平飛行に戻して機体を安定させ、スロットルレバーを押し込んだ。
発動機に送り込まれる燃料と空気が増大し、発動機音が大きくなり、プロペラの回転が強くなった。
機体が加速を始め、綾と昇は座席に押し付けられる感覚があった。
吹き流れる風が強くなり、機速が上がっている。どういう動きを取るつもりかと思いながら、昇はその時を待っていた。
「では、いきます」
綾はその言葉を告げると、操縦桿を引き、機首を上げ始めた。
「うっ!」
「少し耐えてください」
上昇する時独特の、座席に押し付けられるような強い重力。
眼下の緑なす大地が消え、白い雲を所々に漂わせた青空にとってかわる。
「ひゃあ、凄いな!」
そのままさらに機首を上げ続ける飛行器から上を見ると、さっきまで眼下にあった大地が広がっていた。
「これが背面飛行です?天に大地があるのはどんな気分ですか?」
「生まれて初めてだ。飛行器ってのはすごいものだな!」

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