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石像の秘めた謎
官能リレー小説 - 時代物

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石像の秘めた謎 3

どうやら本気で言っているらしい。
「悪いが断るよ。これだけの大仕事を槌を持ったこともない俺に預けるのは危険すぎる。失敗すれば取り返しのつかないことになるからな」
俺はきっぱりと断った。当然の判断である。だが、男は諦めなかった。
「いや……あんたに頼むのが適任だと思う。何故なら、俺の勘がそう告げているからだ」
自信たっぷりな口調である。芸術家特有の感覚的なものなのだろうか?
しかし、俺にはどう考えても荷が重すぎた。
「気持ちは嬉しいが、やはり無理な相談だよ」
俺は再度断りを入れた。
ところが、男が次に発した言葉を聞いて、俺は思わず耳を疑ってしまった。
「じゃあこうしよう。もし引き受けてくれるんだったら報酬として五百両出そう。失敗したって構わない。いや、あんたは絶対に失敗することはない」
「なに…!?」
驚きのあまり絶句してしまった。五百両といえば大金だ。一生遊んで暮らせる額ではないか。
そんな大金がこんな場所で手に入るとは夢にも思わなかった。
この長屋に五百両があるとは思えないが、この男なら本当に持っているかもしれないと思った。それだけの凄味がこの男にはあった。
それにやる事は目の前の石像を完成させるだけである。
しかも失敗しても構わないというのだ。これほど好条件の仕事はない。
「よし、その話乗った!」
俺は即答した。
男の顔が綻んだ。
「ありがとう。恩にきるぜ」
「ところで、俺はここからどんな風に彫ればいいんだ? 獅子か? それとも不動明王か? それとも仁王か?」
俺は矢継ぎ早に質問した。完成の見当がつくだけでも随分違うからである。
男は首を横に振った。
「どれも違うな」
「じゃあ何を彫るんだ? まさか観音様とか言わないだろうな?」
俺は怪しんで訊いた。
男は少し笑って答えた。
「仏師でもないあんたにそんなものを彫らせたりしないさ。あんたに彫って貰うものは――」
そこまで言うと、男は不意に声を潜めて囁くように言った。

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