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石像の秘めた謎
官能リレー小説 - 時代物

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石像の秘めた謎 1

長屋のどん突きでは滴る汗を拭おうともせず褌一丁で左の鑿と右の槌とで、何やら仏像のようなものを一心不乱に彫っている二十八、九の男の姿があった。――これがあの、江藤の云っていた仏師か?
多分そうだろうと思ったが、その男の姿はどう見ても尋常ではなかった。
薄暗い明りの中ではあったが、男の彫っている石像の大きさからして、相当なものであることは容易に想像がついた。
異様なのは大きさだけではない、石像の形状もただならぬものがあった。
獅子のように猛々しい顔をした、六尺近い身の丈のある裸体の巨漢なのだが、それがどうしたことか、股間の一物まで精巧な造りになっているのだ。
そしてこの彫像は、今にも動き出しそうな躍動感に溢れていた。
「これは凄い…」
思わず声が出た。――男はこちらの声を聞き逃さなかったらしく、不意に手を止めて顔を上げた。
浅黒い肌をした大柄な体躯である。彫りの深い端正な顔立ちをしていた。
男が近づいてきた。
「何か用かい?」
太い声で訊いた。
身につけているのが粗末な褌だけなので、屈強な肉体美が剥き出しだった。
「ああ…あまりにも見事なのでちょっと拝見させて貰ってたんだ」
俺は正直に答えた。
「ほう…お客さんとは珍しいね。こんな辺地じゃあ滅多にないことだぜ」
「しばらく見物しててもいいか?」
「ああ。構わない。騒がなければな」
俺は仏師の男に聞いた。
「この石像には名前があるのか?」
「無いよ。まだ未完成だからな」
俺は改めてその石像を眺め渡した。これのどこが未完成だというのだろうか?

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