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牙の勾玉
官能リレー小説 - 時代物

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牙の勾玉 6

「仕方あるまい…」
市太郎に新たな疑問が生まれた。
「お兄さん達は隠密衆なんだろう?それを他人に喋ってしまって大丈夫なのか?」
その問いに対して男達は苦笑いをした。
「俺達を散々責めて吐かせたのはお前ではないか」
市太郎はようやく自分が深入りしすぎたと気づいた。隠密衆の存在を漏らしてしまった彼等は、この事が発覚すれば遅かれ早かれ死ぬ事になるだろう。
「うっ…そうだけど…」
「気にすることはない。俺達が失敗したせいでこうなったのだ。お前が責任を感じる必要はない」
「そうだぜ、悪いのは全部俺達なんだからよ!」
男達は市太郎を励ますかのように言った。
「ありがとう…」
それからしばらく沈黙が続いた後、市太郎は意を決して聞いた。
「それで、結局勾玉って何なんだ?」
「それは…」
再び言い淀む三人。だが市太郎は食い下がった。
「頼むよ!教えてくれ!」
懇願され、男達は渋々と言った様子で答え始めた。
「…勾玉とは…かつてこの地に君臨していたと言われる鬼神が使っていたとされる秘宝だ」
「鬼神…?」
市太郎は首を傾げた。
「ああ、強大な力を持った伝説の怪物だ。奴らはこの世に災いをもたらす為にこの世に現れ、地上を我が物にしようと目論んでいるらしい」
「じゃあ、それが悪い奴等に見つかってしまったら大変なことになるんじゃないか?」
「そういうことだ」
「とにかく勾玉を悪用されない為には、持ち主である鬼神の魂を封じなければならない」
別の男も言う。
「ちょっと待ってくれよ。それならその勾玉を持っていた俺が鬼神ということになるんじゃないのか?」
市太郎は素朴な疑問を口にした。
「そうだ。お前こそが勾玉の持ち主であり、鬼神なのだ」
「俺はただの人間だよ。確かに昨日は少し変になったけど…。それが鬼神だからだとは思えない。鬼神ってのはもっとこう…角とか生えてるもんじゃないのか?」
市太郎は自分の頭に手をやった。そこには当然のように何もない。
「いいや、お前は間違いなく鬼神だ」
「どうしてわかるんだ?証拠でもあるのか?」
「俺達の目には、お前の体から発せられる妖気が見えているんだ。普通の人間が出せるものではない」
「うーん、信じられないなぁ。お兄さん達の勘違いだと思うんだけど」
「俺達も信じられない。だからこそ色々と調べるためにさらったのだ」
「そっか…」
市太郎は俯いた。
「だが、俺達はお前に負けた。媚薬を吸わせて無力化しようとしたが、逆に俺達が空になるまで搾り取られ、縛られてしまった」
「気絶して負ける位なら俺を殺せば良かったのでは…」
「お前は鬼神だ、迂闊に刀で斬ったら何が起こるかわからない。魂を封印した事にもならない」
「なるほどね…斬っても死ぬとは限らないもんね」
「それに、仮にお前を殺してもまた別の誰かに取り憑くだけかもしれないしな…」
男達は苦々しい顔を浮かべた。

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