PiPi's World 投稿小説

牙の勾玉
官能リレー小説 - 時代物

の最初へ
 -1
 1
の最後へ

牙の勾玉 1

「うわっ!」
市太郎は何かにぶつかってしまい、派手に転んでしまった。
「いたたたた…」
「いたたたた、じゃあ無いだろ。坊っちゃん」
「アニキにぶつかっといて、詫びの一つも無いんか!あ!?」
市太郎がぶつかった相手は武士。それも浪人の類いの様だ。
「ご、ごめんなさい…急いでたから…」
そう言い、頭を下げて、また走り出そうとする
市太郎が走り出す前に、アニキと呼ばれた男が、市太郎の腕を掴んだ
「!、なにすんのさ、放してよ!」
下町言葉で啖呵を切り、力いっぱい振り回しても、アニキの腕は外れない。
「謝っただけで許されるとでも思ってんのか?あぁ!?ちょっと来やがれ!」
無理矢理アニキは、市太郎を裏路地へと引っ張って行ってしまった。

その一部始終を見ていた者がいた。
「まったく…めんどくせぇ」
南蛮の外套にも似た黒布を纏った者─声からすれば少年だろう─は大儀そうに溜め息を吐き、3人の消えた裏路地へと歩んで行った…。

「放せって言ってるだろ!放せよ、放せ!」
「ゴチャゴチャうるせぇ餓鬼だな─まぁ、この辺りで良いだろう…人も来ない様だしな」
アニキはニヤリと笑い、目配せする。
すると、もう一人が市太郎が動けない様にと、両手を後ろ手にし、縄で縛ってしまった。
「な!?…なにをする気?」
さすがの市太郎も狼狽する。
「さて、何をするでしょ〜か?」
ニタニタとアニキは笑う。
「教えてやんな、デン」
デンと呼ばれた男─力士と見間違う程の巨漢だ─もニヤニヤとしながら、口を開いた。
デンは市太郎の着物を無理矢理に脱がしていく。すると首にぶら下げていた物が飛び出した。
「む?なんだこれは」
デンは手を止めた。
アニキがそれを掴んでじっくりと観察する。
「勾玉の様だが…なんだか色も地味だし売っても大した金にはならなそうだな」
アニキはとりあえずはその勾玉を首にぶら下げた。
その間にデンはついに市太郎を裸にしてしまう。
その頃になると市太郎は恐怖で白目をむいて気絶してしまっていた。なので、大切な勾玉を奪われてしまった認識も無い。


 市太郎はとりあえず辺りを見渡して、一応、勾玉を探して見た。勾玉が奪われ、男の首に掛けられたのを見てはいたが、「大した値打ちもしないだろう」とも言っていたことを市太郎は覚えていたからだ。もしかしたら、その辺に捨てて行ったかも知れないという淡い希望があった。
 しかし、時は既に逢魔が時。夕明かりと影が入り交じった複雑な路地裏を、最早真剣に探す気にはなれなかった。
 市太郎はそうして、そろそろ家に帰らなくては、と考えたし、はたまた、勾玉をどうしようか、とも考えた。そうしてあちらこちらに思案をやりながら、懐手に腕組をしながらぼんやりと路地を歩いていた。

SNSでこの小説を紹介

時代物の他のリレー小説

こちらから小説を探す