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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 97

「あの、決してそういう訳じゃなくて…ただちょっと体力の限界、気力もなくなりって言うか…」
「昨夜わたくしは洋介様のご入浴に際してご奉仕することができませんでした。わたくしがそのことでどれほど悔しい思いをしたことか…」
「そ、それは…」
どうやら雪乃は夕べ、洋介の風呂を世話できなかったのを根に持っているらしい。彼女は泣き言を言いながら再びうずくまってしまう。
「洋介様にとってわたくしは要らないメイドなのですわね。確かにわたくしは至らないメイド。でもこれほどまでに洋介様から邪険にされるなんて…」
「そ、そんな、雪乃さん!」
「うう…おかわいそうな雪乃様…」
「え…?」
気が付くと他のメイド達が洋介の周囲に寄り集まって彼を取り囲み、しくしくともらい泣きをしていた。中には洋介を責めるような眼差しでじっと睨みつけて来るメイドまでいる。
「ううっ…」
(圧倒的ではないか、敵軍は…)
メイド部隊の包囲下に置かれ、泣き落としの絨毯爆撃を食らった洋介は進退谷(きわ)まる。脳内協議の果てに白旗を揚げることにしたのはそれから間もなくだった。
「ええと…それじゃ…お世話になろう…かな?」
洋介の口からその言葉が出た瞬間、しゃがみ込んでメソメソしていた雪乃がいきなりバッと立ち上がった。
「ヒッ!」
あまりに急すぎたので思わず洋介は後ろにひっくり返る。
「雪乃さん、危な…」
「嬉しいですわ、洋介様…」
雪乃は満面の笑みで洋介を見下ろした。ついさっきまで涙を流していたはずだが、今の彼女の顔にはその痕跡すらなかった。他のメイドも同様である。
「それでは今すぐ、この瞬間に参りましょう、洋介様」
「あ、あの…」
洋介は立ち上がりながらおずおずと口を開いた。
「何でしょうか、洋介様?」
「あの、俺、ちょっと疲れてるんで…普通にシャワー浴びて体を洗うだけだけにしてほしいんですけど…」
「かしこまりましたわ、洋介様」
「どうしてあからさまに顔を背けるんですか!?」
「さあ皆さん、洋介様を浴室までお連れしますわよ!」
「「「はぁ〜い!!」」」
雪乃の合図で洋介の左右からそれぞれメイドが近づき、彼の両腕をがっちりとホールドする。このまま連れて行かれそうだと感じた洋介は慌てて叫んだ。
「あの、ちょっと!ちょっと待って!」
「洋介様、何か?」
「浴室まで、何か羽織って行きたいんだけど…」
洋介は何かしら着るものを所望した。洋介の自宅の風呂場へ行くのとは訳が違うのだ。浴室までは屋敷から100メートルも歩かなければならないし、その屋敷の中もだいぶ移動しないといけない。きっと何人かの人間とすれ違うだろう。さすがに全行程を裸で歩くのは気恥ずかしかった。
だが現実は非情である。
「さあ、参りますわよ!」
洋介の要請を完全に無視し、雪乃は言い放った。そのままメイド達の先頭に立って部屋の扉を開け放ち、外に出る。

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