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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 96

「は、はい…」
雪乃は洋介の胸を拭くのにたっぷり三分以上かけてから、今度は腹を拭き始めた。ここも異様なほどにじっくりと拭いていく。
「ちょっと雪乃…」
あまりの遅さに痺れを切らした桜が何か言おうとした時、不意に部屋の扉がノックされた。
洋介が「どうぞ…」と返事をすると扉が開いて一人のメイドが姿を現す。
「申しわけございません。こちらに桜様と菫様はいらっしゃいませんか?」
メイドは桜と菫を探しているようだった。名指しされた二人が「どうしたの?」と問いかける。
「実は…本日のご予定のことでどうしても確認しておきたいことがありまして…少々お時間をいただけないでしょうか?」
「え〜?。後じゃ駄目なの?」
「これから私達は洋介さんをお風呂に入れて差し上げるんです。少し待ってもらえないかしら?」
桜と菫は文句を言ったが、入ってきたメイドはいやに強硬だった。
「申し訳ありません、できれば今すぐ…」
「しょうがないわねえ…」
二人は不承不承頷いた。
「残念だけど、洋ちゃんのお風呂は雪乃に任せることにするわ。雪乃、よろしく頼むわね」
それを聞いた途端雪乃は表情をばら色に輝かせ、威勢良く返事をした。
「お任せください、桜様!」
「本当にごめんなさいね、洋介さん。この埋め合わせはすぐにしますから…」
「いえ、気にしないでください、菫さん…」
桜と菫はベッドを降りると床に落ちていたバスローブを拾った。あわただしくそれを羽織ると、それぞれ洋介にキスをする。
チュッ、チュ…
「あ…桜さん、菫さん…」
「またね、洋ちゃん…」
「また後で、洋介さん…」
「はい…」
桜と菫は名残惜しそうに部屋を後にした。
扉が閉まった瞬間、雪乃が洋介に背中を向けて『よっしゃあ!』と小さくガッツポーズをする。
「あの…雪乃さん…」
「何でしょうか、洋介様?」
それまで洋介の体を丁寧に拭いていたバスタオルを放り投げながら、雪乃は聞き返した。
「シャワーの件ですけど…その、今日は一人で浴びてきてもいいですか?雪乃さんにはまた今度お世話になりますから…」
雪乃の様子から見て、単に体を洗うだけで解放してくれる保証はなかった。朝っぱらからこれ以上抜かれては体が持たないと思った洋介は単独での入浴を希望する。だが…
「そんな、洋介様…」
洋介の言葉を聞いた雪乃はその場にがっくりと膝をつき、うずくまった。
「ゆ、雪乃さん、どうしたんですか!?しっかりしてください!」
洋介は慌てて雪乃に駆け寄って彼女を助け起こした。
「うう…」
雪乃の目からは大粒の涙が流れていた。彼女の手には催涙スプレーに見えなくもない物が握られている。だが自分が余程まずいことを言ったのではないかと不安に駆られる洋介がそれに気付くことはなかった。
「洋介様…洋介様は桜様や菫様とはお風呂に入られるのに、この雪乃とは入ってくださらないのですわね…」

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