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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 171

海女姫が優雅に一礼すると、またしても場内は拍手喝采の嵐に包まれた。
「「「賛成!!」」」
「「「異議なし!」」」
元弁護人の命に至っては、椅子の上でスタンディングオベーションまでする始末である。
「いいぞ波々矢ぁ!」
それらの声を聞きながら、洋介はがっくりと両膝をつき、自分の見通しの甘さを後悔していた。こんなことになるなら、なりふり構わず裁判を拒否していれば、まだよかったのである。なまじ自信があって裁判を受けてしまったために、この後下される判決を無視することができなくなってしまった。
(お、俺のオナニー道が、16年の努力が……)
悲痛な表情の洋介とは対照的に、裁判長の雪乃は満面の笑みであった。場内を湧かせるだけ湧かせてから両手で制し、トンカチを高らかに打ち鳴らす。
「判決を言い渡しますわ!」
だが、その続きが彼女の口から出ることはなかった。
不意にカチャン、という音が響き、室内が明るくなったかと思うと、部屋の後ろのドアが開いたのである。
「?」
最初にドアを見たのは、ドアが見える位置に座っていた雪乃である。他のメイドや洋介も彼女に倣う。
元々この部屋は、メイド長である雪乃が部下に命じ、内側から鍵をかけさせていた。
それを外側から開けられる、マスターキーを持つ人物と言えば……
「「「桜様!?」」」
メイド達の驚きの声が、部屋一杯に響き渡った。
「桜さん……?」
遅ればせながら洋介も、体を捻ってドアの方を確認する。
「お邪魔するわねえ〜みんな楽しそうなことしてるじゃないの〜」
にこやかに語りながら桜が入ってくる。その顔には微笑が浮かんでいるが、目は笑っていないことに洋介は気付いた。
桜の後からは菫が入ってくる。さらにその後ろには……
「デルフリンゲル……」
呻くような雪乃の声は、洋介の耳に辛うじて届いた。
そして、部屋の中央まで進み出た桜は、おもむろに室内を見渡す。最後にその視線は、裁判長席の雪乃を向いた。
「ここ、まるで法廷みたいね……裁判ごっこでもしてたのかしら? 雪乃……?」
「あの、桜様、これはですね……」
「まさか、洋ちゃんを被告にして虐めてたわけじゃないわよね?」
「め、滅相もございませんわ!」
慌てて雪乃は弁明をする。
「わたくしはただ、洋介様に御主人様としての心得を学んでいただこうと……」
「ふーん。まあいいわ。それよりも、ちょうどいい具合に舞台が整っているわね。私から雪乃に話があったのよ」
「わ、わたくしに、ですか……?」
桜は雪乃の目の前まで歩み寄ると、拳から親指と人差指だけを伸ばし、くるりと手首を回して見せた。『代われ』というサインだ。
「…………」
雪乃は一瞬険しい表情になったが、結局は一言の抗議もなく、左右にいたメイド共々裁判官席を明け渡した。続いて菫が検事席に近づいて海女姫に下がるように手振りで促す。海女姫もまた、憮然としながらも無抵抗で引き下がった。
「ではこれより、メイド裁判を始めます」
裁判長席に座った桜が、カツーンとトンカチを鳴らす。
「検察、よろしくね」
「ええ、行くわよ」
桜に水を向けられ、菫が話し始める。起訴状こそないものの、先程の海女姫の告発と同じような流れだ。
「本日のことです。本事件の被害者である木之花洋介さんの尿から、ある化学物質が検出されました」
「へ……? 尿から?」
菫の発言を聞いて、洋介は不審に思った。
「あの、俺、検尿のサンプルとか出した記憶ないんですけど、一体いつの間に調べ……」
「木之花財閥の化学班がその化学物質を詳細に分析した結果、元になった薬剤の製品名が判明しました」
洋介の問いを完全に無視し、菫は続ける。
「その製品名とは“ゴウカンマニナール”です」
「……ゴウカン……何?」
「服用すればどんな草食系の男性でも、周囲の女性に無差別レイプを行ってしまうほど、恐ろしく効き目のある性欲増進剤です。興奮作用や多幸作用もあり、誰でも簡単に自分を見失ってレイプに走ります」
「それが、俺の小便から……?」
「そうです。これがその製品と同一のものです」
そう言うと菫は、大きめの紙箱をどこからか取り出し、中にぎっしり詰まった薬包を桜、そして洋介に見せた。
「……なんでそんないっぱいあるんですか……? って言うか、分析結果出るの早すぎません?」
「何ですって? 私達がこの薬をあらかじめ別に用意していて、洋介さんに飲ませようと画策していたところを誰かに先を越されたのが悔しくて、腹いせに裁判にしているとでも?」
「誰もそんなこと言ってませんけど……」
洋介が消え入るような声で黙り込むと、さらに菫は先を続けた。


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