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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 20

「え〜ん…。すみれぇ…、ひっく…、洋ちゃん…、私の事…、ひっく…、覚えてないんだって…。え〜ん…、私…もう生きていけないよぉ…」
恐らく先程の洋介の言葉が効いた様だ。
桜は余程ショックなのか菫に抱きついて泣いている。
菫も先程の険悪な雰囲気はどこにいったのやら、桜の様子を見てまるで母親の様にあやしている。
そして洋介はというと、いきなり桜が泣いてしまってしどろみどろになっていた。
「うふふ…、洋介さん。別に気にしなくていいわよ…。流石に10年以上会っていないと忘れてしまうわよね…」
と、意味深な言葉を言い洋介を宥めてくれる。
「あ…、は、はい…」
としか洋介は答える事が出来なかった。

30分後…。
「さくらぁ…、いい加減泣くのやめたら…?あんたの大好きな洋介さんが困ってるわよ?」
と言い、菫が桜を宥めている。
「う…、うん…」
桜も漸く落ち着いてきた様だ。
「…洋介さん…。そう言えば貴方…、母親はどうなされたのかしら…?」
洋介はというと、突然の質問に驚いてしまう。
「え…、あ、あの…。母さんはですね…。確か…死んでしまったとか…、拉致されたとか…、蒸発したとか…、どこかの怪物に食べられてしまったとか…、借金のカタに売られてしまったとか…、別な男の人を作って出て行ったとか…、
(以下約10分程続く…)
とまあ、父さんに何度聞いてもこんな答えしか返ってこなくて…父さんもよくこれだけの多くの事を考えついたなと思いましたけど…兎に角、母さんの事はよく分かりません。そして俺には母さんはいない事にしています…。
それにもう物心ついた時からいないので、母さんがどんな人だったかも覚えていません…」
洋介は言い終わると悲しい顔をする。
菫は洋介の母親の説明を聞いてコケそうになったが、何とか堪えてもう一度洋介の言葉を思い出す。
そして「…そうなの…」というと、俯いて黙ってしまった。
その言葉は「やっぱりね…」というのと「え…、そうなの…?」というような表情をしていた。
しかし洋介はこの事はどうしても気になっていた事であり、突然ではあるが母親の事を聞かれてどうしても自分の母親への気持ちを菫に話さずにはいられなかった。
「あの…、だからといって母さんがいなくて寂しくはないんです…。確かに幼稚園の時とかは寂しかったです…。どうして帰りのお迎えの時に、皆はママが来ているのに、自分だけは父さんなんだとか、父兄参観の時も父さんが仕事が忙しくてこれなくて、どうして自分には誰も来てくれないんだとか…。でもそれも小学校に入ってからは慣れてしまいました。いつもいい加減な父さんですけど、父さんが一生懸命自分を育ててくれているのが分かったから…。

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