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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 169

「何がって、何も立証されてないのに判決出そうになってるじゃないですか!」
「んー。別にいいんじゃない? 大体洋介様、もうオナニーしなくたって、あたしらにチンコ入れ放題じゃん」
「ぐはっ」
もはや明白であった。命は自分の役割について、全く何も理解していない。洋介は雪乃の方を振り返り、再度挙手をして宣言した。
「裁判長! 被告人は弁護人のチェンジを要求します!」
「あんだってえ!?」
それまで無気力そうに座っていた命が、急に眼を剥いて洋介を凄んだ。
「あたしの熱意溢れる弁護の、どこが気に入らないっての!?」
掴みかからんばかりの剣幕である。気圧されそうになった洋介であるが、ここで屈したら負けだ。
「さ、裁判長。現在の弁護人は職業意識に欠けております。新しい弁護人を……」
「ほー。それで被告人は、誰を新しい弁護人に指名するんですの?」
雪乃に尋ねられ、洋介は答えた。
「被告人の弁護は、被告人中村洋介、本人がさせていただきます」

…………

しばらくの後、洋介はどうにか弁護人席に座ることができた。命はゴネたものの、雪乃に言われて渋々引き下がる。
「では、弁護人は検察に対し、犯罪事実の立証を要求します」
法廷の中央に進んだ洋介は、ダビデ像のごとく勇壮に立ちながら海女姫に迫った。要するに、洋介の行動の何がどう悪かったのかきちんと説明しろというわけだ。
「いいでしょう。裁判長、証人の喚問を御許可ください」
「認めますわ」
そして、海女姫に呼ばれた証人が部屋の中央に立った。呼ばれたと言っても元から部屋の中にいたメイドが前に出てきただけだが。
「証人、お願いします」
「はい……私は朝方、風呂棟から本館の方へと向かいました。その途中で洋介様がその、今のような御姿で……」
「うっ……」
証人のメイドが顔を赤らめ、洋介も赤らめた。恐らく彼女は、今朝洋介が雪乃に裸のまま浴場へ連れて行かれたとき、すれ違ったメイドだろう。あのときは羞恥心で周りをよく見る余裕がなかったため、覚えてはいないが……
メイドが証言を続ける。
「私は立ち止まり、その場で待っていたのですが、洋介様はそのまま視線もくださることなく、行ってしまわれました……うっうっ」
泣き崩れるメイドを見て、洋介は困惑したが、ともかく続きを聞こうとした。
「そ、それで……?」
「以上です」
「……………へ?」
思わず洋介は間抜けな声を出した。何が問題なのか理解できない。強いて言うなら、すれ違うときに挨拶をしなかったのは失礼だったかもしれないが、裁判沙汰にまですることだろうか。それに、あのときの洋介にそんな余裕がないのは、見ていれば分かったはずだ。
だが、海女姫は満足げに頷き、厳かに宣言した。
「只今の証言で分かります通り、被告人の有罪は明らかです」
「い、異議あり! 被告人は証人とすれ違っただけです!」
洋介が抗議すると、海女姫はたしなめるように言った。
「分からないのですか?」
「な、何が……?」
「御主人様がメイドとすれ違うときは、胸や尻などの恥部に手を触れ、劣情の対象であることを伝えて安心させる。これが常識です。手が使えなくても、卑猥な視線や言葉は送れます。知らなかったから黙ってすれ違ったなんて通りません」
「……………へ?」
そんな馬鹿な。
「そ、そんなの聞いたこと……て言うか、それってセクハラじゃ……」
「セクハラ?」
海女姫は目を細めて洋介を見据えると、満座を見渡して言った。
「皆様、お聞きになりましたか? 被告人の性的モラルに関する意識は、極めて低いと言わざるを得ません」
「? 何を言って……」
「セクハラ、すなわちセクシャルハラスメントは、性的嫌がらせと訳されます。社会的地位等を利用し、性に関することで被害者に不快な思いをさせる迷惑行為を指します」
「?? そうですけど……」
海女姫が何を言いたいのか分からなかったが、説明していること自体は正しいので、洋介は一応頷いた。海女姫は朗々たる口調で、あたかも演説をするように発言を続ける。
「メイドにとって、最も性的に不快なこととはなんでしょうか? それは即ち、御主人様から性的な目で見ていただけないことです。至近距離でメイドとすれ違っておきながら、バストやヒップに手も触れず、視線も送らず、猥褻な言葉もかけずに無視をする。これこそは性的嫌がらせの最たるものであり、被害者の心の痛みは察するに余りあります」
「い、い、異議あり! 検察の主張は公序良俗に反して……」
「異議を却下しますわ」
光の速さで退けられる洋介の異議。それにも場内からは拍手が巻き起こった。
(このままじゃ駄目だ)
洋介は追い詰められた。最初から分かってはいたことだが、やはりこの法廷ではまともな議論が通用しない。
(何か、雪乃さん達を説得できる材料があれば……)
必死に頭を捻る。オナニー以外のことを考えた経験はあまりない洋介だが、ここでしくじったらそのオナニーができなくなるのである。諦めるわけには行かなかった。
(……よし。あれで行くか)
ようやく1つの考えが頭に浮かんだ洋介は、雪乃の方を見てさっと右の手を挙げた。
「裁判長! 弁護側は証人への反対尋問を行いたいと思います!」
「認めますわ」
「ありがとうございます!」
洋介は、部屋の中央で未だに涙ぐんでいるメイドに言った。
「では証人に、弁護側から反対尋問をさせてもらいます」
「うっ、うっ、御主人様。分かりました……」
証人のメイドはティッシュを出してブーと鼻をかみ、おもむろに姿勢を正した。
御主人様という単語はあえてスルーし、洋介は尋問を始める。
「ではまず、あなたの職業を教えてください」

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