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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 167

洋介は、おそらく弁護人の役を務めるのであろう、命を見た。本来なら椅子に座っていると表現すべきところだが、あまりに脱力し過ぎていて、転げ落ちる寸前で引っかかっていると言う方がふさわしかった。メイド服の胸元はだらしなく広がっていて、あまりない胸が見えそうになっている。さらに、手には何かの瓶を持ち、時々中身をラッパ飲みしていた。酒臭くはないのでアルコール類ではないようだが、だらしないことこの上なかった。今の彼女を一幅の絵にしたら、タイトルは『退廃』『怠惰』『堕落』だろう。
「弁護側、準備はよろしくて?」
「ふえ〜い。まあいいんじゃないの……?」
雪乃の問いかけに、命はぐでーんとした様子で答えた。たまらず洋介が、小声でささやく。
「あの、弁護士さん、真面目にやってくださいよ」
「へーきへーき、大丈夫だって」
全くやる気の見えない様子で、命は答えた。洋介が激しく不安を覚えたとき、雪乃が机をガンと叩き、満場に向かって宣言した。
「判決を言い渡しますわ!」
「ちょっと待ってください!!」
全ての手続きをすっ飛ばす気満々の雪乃に、洋介は思わず抗議の声を上げた。
そんな洋介を、雪乃は厳しい視線で見下ろす。
「被告人静粛に。裁判の進行を妨げると容疑に法廷侮辱罪が追加されますわよ」
「うっ……いや、ですからその進行をしっかりやってほしいんで……全部本物の裁判と同じにやれとか言いませんから、せめて起訴状朗読から始めてくださいよ」
若干怯みつつ洋介が要求すると、横から命が尋ねてきた。
「起訴状朗読って何?」
どうやら彼女は、サスペンスドラマ程度の裁判の知識もないらしかった。その状態で弁護をしようとしていることに戦慄しつつ、洋介は彼女に耳打ちをする。
「検察の人に、俺がどういう疑いで裁判にかけられてるのかを説明してもらうんですよ。て言うか弁護人ならそれぐらい予習してくださいよ……」
「ふ〜ん」
命はあまり関心がなさそうに生返事をすると、瓶の中身をぐびりと飲んだ。ますます先が思いやられる。
雪乃はそんな洋介と命の様子を見ていたが、やがていかにもだるそうに言った。
「はあ……仕方ありませんわね。被告人のワガママにお付き合いしますわ。特別ですわよ」
「あの、ですからこれはワガママじゃなくて正当な権利……」
「検察は、さっさと起訴状朗読を始めてくださいまし……ああかったるい。もう判決は決まってますのに……」
「!? 雪乃さん、今、何て?」
「何も言っておりませんわ。空耳ですわよ」
「でも、判決が決まってるとか……」
「静粛に! 静粛に!」
雪乃はトンカチで机をガンガン叩く。これ以上突っ込んでも無駄と悟った洋介が引き下がると、海女姫が部屋の中央に進み出た。
「それでは、検察側から起訴状の朗読をさせていただきます」
一応準備はしてきたらしく、海女姫はそれっぽい紙を広げて読み始めた。

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