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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 166

「お、俺はまだみなさんの主人という訳では……」
洋介は抗弁しかけたが、雪乃は何も反応しなかった。それどころか、刑務官役と思しきメイドが何人も洋介に飛び掛かってきて、その口をふさぐ。
「ムググ……」
洋介は雪乃の方を窺う。彼女はいつの間に着たのか、御立派にも裁判官が着るようなローブを纏っていた。それに対して洋介は、外から帰ってきても服が与えられず、全裸のままであった。何だか裁判の行方を象徴しているようで、洋介は寒気を覚える。
(とは言っても、逃げられそうにはないし、裁判を受けるしかないのか。でも、それならそれで、何とかなるかも……)
数人のメイドにしがみ付かれて動きを封じられながら、洋介は思案した。
実は、洋介は已むを得ない事情から一時期少年院に入っていたことがあり、裁判にはいささか覚えがあった。もしかしたら、うまく切り抜けられるかも知れない。
(雪乃さんがいくら優秀なメイドでも、裁判の知識なんてテレビのサスペンスドラマに出てくる程度のもんだろ。多分だけど、俺の方が上手なはずだ)
そうすると、問題なのは、洋介が何の容疑で裁判を受けるかなのだが、これは洋介にはまだ分からなかった。普通に考えれば昨日雪乃を襲って犯したことだろうが、あの件は洋介が誓約書を書いて、全面降伏する形で決着したはずだ。今更蒸し返すメリットが雪乃にあるのだろうか……
(まあいい。あのことをまた持ち出すなら、むしろ俺の方が願ったりだ。雪乃さんには悪いことをしたし、たくさん謝らなくちゃいけないけど、あのミミズが引き付けを起こしたような字の、全然読めない誓約書だけは不安だった)
ここは一つ話し合って、あの誓約書を誰でも読める楷書体に書き直してもらおう。そこまで腹を括った洋介は、ひとまず抵抗するのを止めた。すると刑務官メイド達は、彼を空いている席に無理やり座らせる。座った後も、彼女達は洋介の腕や足にしがみ付き続けた。
「ちょっと、暴れないから放してくださいよ」
「駄目です。洋介様は厳重警戒対象です」
ニヤニヤ笑いながら、洋介の体に胸を押し付ける刑務官達。洋介がどうにもできずにいると、雪乃が口を開いた。
「被告人は大人しくなったようですわね。それでは検察側、準備はよろしくて?」
「検察、準備完了しております」
雪乃に答えたのは、すっくと立ち上がった海女姫だった。彼女は先程までかけていなかった眼鏡をかけ、さらには今必要なのか分からないが、小脇に六法全書を抱えている。着ているメイド服は一分の隙もなく整えられ、眼光はこの世の全てを射通さんばかりであった。今の彼女を一幅の絵に描き止めたならば、タイトルはさしずめ『凛然』『気品』『冷徹』と言ったところであろう。
(それに比べて……)

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