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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 160

「だもん、じゃないでしょ。まさかこのうちのどれかを洋介さんに?」
「洋ちゃんなら、どれでも似合いそうだから、なかなか決まらないのよねえ」
「桜……言っておくけど洋介さんは男の子よ?」
いささか呆れ気味に菫は言ったが、桜は全く意に介さなかった。
「せっかく夜なべして作ったんですもの。最後は洋ちゃんに全部着てもらうけど、どれからにしようかしら……」
世界に名だたる木之花財閥の総帥が、こんなことに時間を費やしているのが知れたら……菫はそっと、こめかみを指で押さえた。

「こちらが地熱発電所になります。洋介様」
「デモンストレーションはやらなくていいですよ」
地熱発電所に到着した洋介は、早々に郷子に釘を刺した。
先程はアクシデントのおかげで空中浮遊オナニーに開眼したとは言え、それはそれ、これはこれである。
八潮達にたっぷりと絞り取られた後、精根尽き果てた洋介は、郷子達に発見され、例の一輪車に無理やり乗せられてここまで来たのである。もちろん全裸のままで。
「お待ちしておりました。洋介様」
事務所らしい建物から、赤い作業服を着た女性が出てきた。
黒い髪をアップにまとめた東洋人である。
「所長の蔡(さい)と申します。こちらへどうぞ」
蔡に連れられ、洋介達はかすかに白い湯気の立つ煙突へと近づいて行った。
「……という訳で、この場所に地熱発電所が建設されたわけです。発電方式は、効率の高いダブルフラッシュサイクル方式を採用しています。ダブルフラッシュサイクル方式と言うのは……」
「…………」
蔡の説明を聞きながら、洋介は注意深く周囲を観察していた。どうやら、トラブルの元になるようなものは特になさそうだ。
(今度は、何事もなく終わりますように……)
心の中で神に祈りつつ、洋介は蔡の説明を聞いていた。全裸で一輪車に座り、発電所の説明を聞くなどシュール極まりない光景だが、もはやこの期に及び、その程度のことは気にならなかった。
「以上になります。洋介様、何かご質問はありますか?」
「あ、うん。ええと……」
無事に済みそうだ。心に湧き上がる歓喜をひた隠し、洋介はいくつか当たり障りのない質問をした。
「……じゃ、最後に、現場って暑くないですか?」
「暑いですね。でも、もう慣れました」
「なるほど……」
質問を終えた洋介は、蔡に別れを告げる。
「ありがとうございました。これからもよろしく」
「はい。こちらこそ……」
「では洋介様、参りましょうか。今度こそ保養所に……」
郷子がそう言うと、部下のメイド達はクルリと一輪車をターンさせた。
(ふはあ……これで一息付ける……)
やっと休息が取れると思った洋介は、大きく伸びをした。
あたかもその瞬間、天地を裂かんがばかりの怒号が鳴り響く。
「見つけましたわよ! デルフリンゲル!!」
(俺には祈ることも許されないのか!)
雪乃の姿を認め、洋介は気が遠くなった。

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