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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 157

「ぬうう……あのアマぁ。ぶち殺しちゃる!」
靴を履き直した雪乃は、出口めがけて突進し、内側から扉を蹴破った。ドカーンという轟音とともに扉が吹っ飛んだのを見て、部屋の外にいた郷子の部下2人が血相を変える。
「め、メイド長! 何と乱暴な……」
「洋介様はどこですの!?」
「そ、それは……」
「キシャアアア!!」
即答しないと見るや、問答無用で雪乃の拳が飛んだ。2人のメイドは立て続けに薙ぎ倒される。ある種の清々しささえ感じさせる、雪乃の気の短さであった。
怒り心頭に発しながらメイド長室に帰り付いた雪乃は、ただちに電話を取ってダイヤルし始めた。自分の推測が正しいかどうかを確認し、さらに洋介が今どこにいるかを突き止めるためである。怒りに任せて外に飛び出さず、まず情報収集に努めるあたりは、さすがと言えた。
「もしもし。わたくし、メイド長の白菊ですけれども。伊予野所長を出してくださるかしら?」
電話をかけた先は、風力発電所であった。郷子が自分を出し抜いて、洋介を発電所見学ツアーに連れ出したのではないかと疑ったからである。
『お、お電話変わりました。伊予野です……』
電話口に出た伊予野所長、すなわち華恋は、何故かひどくおどおどしていた。一瞬不審に思った雪乃だったが、今はそれどころではなく、質問をしようとした。
「ああ。伊予野所長。白菊ですわ。聞きたいことがあるのですけれど、よろしいですかしら?」
その途端、ガシャーンという、何かがひっくり返ったような音が受話器から響いた。
『どうしてメイド長が!?』
『報告しないんじゃなかったの!?』
という声も、小さくではあるが聞こえてくる。
ますます怪しんだ雪乃は、「伊予野所長?」と再度呼び掛る。すると、華恋が電話口に戻ってくる気配がした。
『え、ええと。あの、その……』
「何を動揺しているのか分かりませんが……まあ今はいいですわ。それよりお伺いしたいんですけれど、洋介様、そちらにいらしゃいませんでした?」
『え……? は、はい。いらっしゃいましたけど』
「やっぱり……洋介様をお連れしたのは、誰でしたかしら?」
『そ、それはデルフ……』
「!」
推測が確信へと変わった瞬間、雪乃は受話器を叩き付けるように電話を切った。
ガチャーン!!
叩き壊すまでしなかったのは、電話機に次の使い道があるからである。再び受話器を取り上げた雪乃は、今度は自分の部下が詰めている部屋へと電話をした。部下の1人が出ると、早速指示を伝える。
「衆殿(しゅでん)と波々矢(ははや)を探しなさい。見つかったらすぐに、わたくしの部屋に来るよう伝えなさい。緊急事態です!」
雪乃が召喚したのは、彼女の配下の中で、最も戦闘的かつ凶暴なメイドであった。電話を切り、部屋の中を歩き回りながら、彼女達が来るのを待つ。

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