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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 156

「ん〜っ……そう言えば、洋介様はまだお目覚めにならないのかしら?」
洋介が眠る部屋の前を見張らせているメイドからは、未だに何の報告もなかった。時計を見ると、大分時間が経っている。仕事を片付けた雪乃は、早々にしびれを切らした。
「これ以上座しては待てませんわね。そうですわ。わたくし自ら、洋介様のご様子を見に行くことにしましょう」
そう決めると、雪乃は即座に席を立ち、疾風の如くメイド長室を後にした。洋介の部屋の前にはあの2人のメイド(郷子の部下だと雪乃は知っていた。)がいるため、正面からは入れない。
廊下を早歩きしながら(メイドとして、さすがに緊急事態でもないのに走るわけにはいかなかった。)考えた末、窓から回り込むことにした。梯子を持ち出すために、物置へと向かう。途中で部下のメイド2人に出会ったので、同行を命じた。
「お前達、これから洋介様のご様子を伺いに参ります。付いてきなさい」
「「はいっ!」」
物置に着くと、雪乃は部下2人に梯子を引っ張り出させ、洋介の部屋の下まで運ばせた。
実はその梯子はつい先刻、郷子一党の手によって洋介の部屋の下に設置され、また郷子の部下の手によって密かにこの物置へと回収されていたのだが、雪乃がそれを知る由もなかった。
何も知らない雪乃は、部下に梯子を設置させ、押さえておくように指示すると、洋介の部屋の窓めがけてどんどん上がっていった。
「フフフフ……洋介様。今雪乃が参りますわ。まだお目覚めになっていないようでしたら、添い寝でも……」
やがて、洋介の部屋の窓にたどり着いた雪乃は、音を立てずに窓ガラスを割るため、持ってきたガムテープを貼ろうとした。
「あら……?」
だが、その必要はないことに気付く。窓は閉まっていたものの、鍵が掛っていなかったのだ。
「洋介様ったら、わたくしのためにわざわざ……」
いささか妄想に浸りながら、雪乃は窓を開いて中に侵入した。そして洋介のベッドめがけて、抜き足差し足忍び寄って行く。
「ウフフフ……洋介様……」
ベッドを覗き込むと、洋介は頭から布団をすっぽりかぶっていた。雪乃は靴を脱ぐと布団をそっと持ち上げ、その中に入り込もうとする。
「でへへ……なっ!?」
ところが、布団の中にいたのは洋介ではなかった。あろうことか、ただ毛布が丸めてあるだけだったのである。もちろん郷子の仕業であった。郷子は布団の中に毛布を詰め込み、あたかも洋介が寝ているように偽装していたのである。もっとも、こうやって直接踏み込まれ、調べられてはどうしようもなかったが。
「…………」
現状を把握した雪乃は、自分を部屋に入れなかったのが郷子の部下であることと合わせて考え、すぐに一連の出来事の黒幕が郷子だと推定した。この歳でメイド長に登り詰めているだけあって、頭の回転は高速だ。

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