PiPi's World 投稿小説

華が香るとき
官能リレー小説 - その他

の最初へ
 148
 150
の最後へ

華が香るとき 150

例えるなら、望遠鏡で何かを見るときに、最初に肉眼でおおまかな位置を見てから、望遠鏡の筒を向けるようなものだろうか。防衛島のレーダーが肉眼で、太陽熱発電所のレーダーが望遠鏡である。(なお、グレイシアが洋介に説明した通り、太陽熱発電所は現在ミサイルの迎撃に使われておらず、今は防衛島のミサイルがその役割を果たしている。)

さて、報告を受けた八潮は、部下の一人である女性オペレーターに指示を下した。
「照準レーダーを起動させなさい」
「はい。照準レーダー、起動します」
部下がスイッチをいじり、やがてレーダーが動き出したことが画面に表示された。
「そう言えば所長、今朝照準レーダーの調整が終わった後、誰も見張りに立てなくてよかったんですか? もしいつもみたいに誰かが座ってたりしたら、歪みが生じて狙いが狂うかも……」
「ああ、それなら大丈夫よ。学校の生徒やホテルのお客様はここに来ないし、メイドさん達には雪乃さんを通じて、手を触れないようにお願いしてあるから」
八潮は知らなかった。
雪乃の目を盗んで洋介を連れ出す準備をしていた郷子達に、通達が届いていなかったことを。
しかし、同じくそれを知らないオペレーターは「そうでしたか」とあっさり納得し、レーダーの操作を再開する。
「照準レーダー、カーチス機を補足しました」
「了解。そのまま照準を続けなさい」
報告を聞いた八潮は通信装置を操作し、マイクに向かって話し始めた。
「こちら八潮。こちら八潮。カーチスさん、応答願います」
少しの間を置いて、スピーカーからグレイシアの声が聞こえてきた。
『こちらカーチス。どうぞ』

『こちら八潮。こちら八潮。カーチスさん、応答願います』
機内のどこかにあるスピーカーから、八潮の呼びかけが響いてくる。洋介の前に座るグレイシアが、ヘルメットのマイクを口元まで下ろしてそれに答えた。
「こちらカーチス。どうぞ」
『光を照射する準備が整いました。吹き流しを出してコースに乗ってください』
「了解した」
通話を終えたグレイシアは、洋介に向って口を開いた。
「洋介様。吹き流しを出します。前のモニターをご覧ください」
「あっ、はい」
洋介がモニターを見つめると、スイッチが入って機体の後ろの様子が映し出された。
続いてバシュッという音が聞こえたかと思うと、モニターの中に風になびく黒い吹き流しが出現する。
「吹き流しを出しました。ご覧になれますか? 洋介様」
「ええ。よく見えます」
あれに鏡で光を当てるわけか。実際にできたら凄いかも知れないと洋介は思った。
「吹き流しを出した。いつでも始めて構わないぞ」
グレイシアが再び、マイクに向かって話しかける。スピーカーから八潮の声が返ってきた。
『こちらでも吹き流しを確認しました。吹き流しに照準を合わせます』
「了解した」

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す