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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 148

落ちている洋介の服を郷子が指し示すと、部下のメイド達に困惑の色が広がった。服の汚れが多少どころではなかったからだ。土や泥ばかりでなく、彼女達の汗やら愛液やらがべったりと染み付いている。
だが、冷静に考えてみると、郷子の案しかなかった。
「急ぎましょう!」
郷子の号令で、メイド達は一斉に服を拾いにかかった。そして瞬く間に全てを回収し終え、ヘリポート目指して駈け出したのである。
「1! 1! 1、2!」
「「「そーれ!」」」
「1! 1! 1、2!」
「「「そーれ!」」」
汚れた服を手に持ち、軍隊風の掛け声を上げて疾走する奇怪なメイドの一団は、幸いにも人目に留まることはなかった。

 …………

「1! 1! 1、2!」
「「「そーれ!」」」
「1! 1! 1、2!」
「「「そーれ!」」」
剛健無比を誇る彼女達は、瞬く間に風力発電所の側を通り抜け、太陽熱発電所にたどり着いた。ここまで来れば、ヘリポートはそう遠くない。ここで一息入れようと考えた郷子は、全員に停止を命じた。
「全隊、止まれっ!」
ザザッ!
部下達は一斉に走るのを止め、その場で足踏みを始めた。走っている状態から急に体の動きを止めると、心臓に負担がかかるのである。
「ここまで来れば残りわずかです。少し休憩しましょう」
それを聞いたメイド達は、徐々に足踏みをやめていった。そしてある者は大きく伸びをし、ある者は地面に体育座りになる。さらにまたある者は、大の字になって寝転んだ。
「ちょっとみんな、はしたないわよ。あそこに座って休みましょう」
部下達の無統制ぶりを見かねた郷子は、発電所の鏡の隣に鎮座している巨大な皿のようなものを指差した。
「「「はあ〜い」」」
メイド達はゾロゾロと歩き出し、皿の縁の片側に固まって腰を下ろした。最後に郷子が、全員の中央に座り込む。
「ふう……やっと少し落ち着いたわ」
さて、彼女達が腰掛けるこの皿だが、中央付近から何本かの棒が突き出し、先端が一か所でまとまっていた。要するにパラボラアンテナなのだ。
グレイシアが洋介に説明したように、この太陽熱発電所は飛んでくるミサイルを撃墜できる設計になっていた。パラボラアンテナはミサイルを補足するためのレーダーなのである。
使うとき、アンテナは機械の腕でもっと高くせり上げられるのだが、普段は景観に配慮して地面付近まで位置を下げられていた。もちろん、本来なら腰掛けるどころか手を触れることすら許されない。しかしながら、発電所がミサイル防衛に使えないことが分かった今ではアンテナもただのオブジェと化しており、上に座ろうが乗って逆立ちしようが、誰も全く問題にしなかったのである。

…………

郷子達がしばらく腰を下ろしていると、空の彼方から爆音のようなものが響いてきた。洋介の乗った、例の飛行機が近づいてきたのである。

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