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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 145

遠くに移動してから、八潮は飛行機の上の洋介に呼びかけた。そんな彼女を嘲笑うかのように、グレイシアは装置を動かし、洋介と自分の座席を覆うガラスのドームを閉める。
プシュー……
「あ、あの……いいんですか?」
「はい。全く問題ありません」
「そうですか……」
グレイシアに言い切られ、洋介はそれ以上何も言えなくなった。ドームの閉まった座席は、意外なほどの静寂さに包まれている。あれほどけたたましかったエンジンの音でさえ、かすかなうなりとして感じられるほどだ。
「では、離陸いたします」
グレイシアが宣言するのと同時に、機体が上昇を始めた。洋介は、自分の体が下に押し付けられるような感覚を覚える。エレベーターが上るときと同じだ。
(ついに飛んじまうのか……でも、これでやっと貝丞(かいすけ)達に話せそうな話題ができるな)
いつしか洋介は、日本にいる友人のことを思い出していた。拉致されたのでやむを得ないとは言え、結果的には何の連絡もせずに姿を消す形になってしまっている。きっと今頃は心配していることだろう。
(まあ、急にいなくなった理由ぐらいは桜さんが説明してくれてるだろうけどね……)←希望的観測
どちらにしろ、このツアーが終わったら早めに日本に連絡を入れようと洋介は思った。そのとき、珍しい飛行機に乗せてもらった話は格好のネタになるだろう。と言うより、他のイベントが過激すぎて話すに話せないのだが。今の話にしても、裸で搭乗した事実は伏せる必要がある。 
(高いな……)
気が付くと、機体はかなりの高さまで上昇していた。下を見ると、島の大半が視界に収まっている。ちなみに残りは機体の陰だ。
(なかなかいい景色だな……ん?)
洋介の耳に響くエンジンのうなりが、微かに変化した。それとほぼ同時に、体が後ろに押し付けられる。機体が前に進み始めたのだ。
(もうすぐデモンストレーションが始まるのかな。そう言えば……)
グレイシアは、自分で洋介にデモンストレーションの説明をすると言っていた。そのことを思い出した洋介は、彼女にそれを聞いてみることにする。
「あの、カーチスさん……」
「何故ですか?」
「え? 何が?」
「何故私のことだけ、ファミリーネームで呼ぶのですか?」
「あ……それは、雰囲気的にと言うか何と言うか」
「グレイシアとお呼びください。呼び捨てで結構です」
「はあ。それよりですね……」
グオオオッ!
刹那、機体が大きく左に傾いた。そのまま一回転したかと思うと、続いて急激な宙返りを打つ。ジェットコースターなどとは比較にならない猛烈な動きに、洋介はたちまち失神寸前になった。
「や、やめてくれ! グレイシア!」
「はい。分かりました」
グレイシアは何事もなかったかのように、機体を元の水平飛行に戻した。
「はあ、はあ、助かった……」

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