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華が香るとき
官能リレー小説 - その他

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華が香るとき 141

「も、もちろんですっ! カーチスさん!」
「はいっ! すぐに!」
八潮に何事かを促されたグレイシアは、素晴らしい勢いで飛行機の操縦席へと戻って行った。
(第二段階も、うまくいったな。無事に見学を終えられそうだ……)
さらに安堵した洋介は、成り行きを見守ることにした。しばらくするとグレイシアが操縦席で何かの操作をしたらしく、飛行機の機体に例の足場と梯子が、ウイインと引き込まれていった。代わりに機体のやや後ろの方に、別の足場と梯子が出現する。
(あれを伝って、後ろの座席に乗り込むわけだな)
まだ説明はないが、おそらく間違いないだろう。そう判断した洋介は、毛布を巻き直すことにした。今のままだと、体に巻き付けたのを両手で抑えていなければいけないので、登るには少々不都合がある。
(どう巻くかな……ってこれしかないか)
洋介は風呂上りに巻くバスタオルのように、毛布を腰から下に巻いて端を中に入れた。本当は古代ローマ貴族のように優雅な巻き方をしたかったのだが、布地がいささか足りなかったのである。
「では洋介様、後ろの座席にお登りいただきたいと思いますが……そのご格好で大丈夫ですか?」
洋介の衣装直しを待っていた八潮が、不安を覗かせた。確かに今の洋介は下半身に毛布を巻いており、あまり足を上げることができない。登ることができないのではと、危ぶむのも当然だろう。
「ええ、大丈夫ですよ」
もっとも、当の洋介は問題を感じていなかった。彼はごく気楽に返事をし、機体に向かって歩き出す。
「本当ですか? 何なら今から着替えを……」
「まあ、見ていてください」
洋介は片手を上に伸ばし、まず梯子の横棒を握った。そして片手懸垂の要領で体を引き上げ、もう片方の手でさらに上の横棒を握ったのである。
「えいやっ」
これを繰り返し、上へ上へとよじ登っていく。おおーという歓声が、期せずして周囲から巻き起こった。
(いつからだったろうかね。こんなことができるようになったのは……)
多分、以前にボロい一軒家に住んでいたとき、鴨居に片手でぶら下がり、出なくなるまでオナニーするというバカなことをやっていた(もちろん、特に意味はない)せいだろう。まあそのおかげで今、こうやって梯子を登れるわけだが。
「よいしょっ」
梯子を登り切った洋介は、その上の足場をさらに登って行った。両手で一番上の足場を握ったところで、少し体を持ち上げ、裸足の両足を下の方の足場に揃えて置く。その体勢のまま、彼は身を乗り出して座席の様子を確認した。
(よし。邪魔になりそうなものはないな)
洋介は両膝を曲げ、次の瞬間勢いよく足場を蹴り離した。そしてアクロバットのように体を縦に一回転させ、座席へと飛び込んだのである。
「うおりゃ!」
着地成功。いや着座か。ともかく洋介は座席の上に降り立ち、それからおもむろに座席に腰掛けた。

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